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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「キス・オブ・ザ・ドラゴン」 2001

キス・オブ・ザ・ドラゴン(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 国際的な麻薬取引の捜査のためにフランスにやって来た中国人刑事は、共同捜査するはずだった地元警察官にハメられ、殺人事件の犯人に仕立てられてしまう。

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感想

 訪れたフランスで殺人の濡れ衣を着せられてしまった中国人刑事が、たまたま知り合った組織のフランス人娼婦と協力して窮地を脱しようとする物語だ。二人は共に主人公が騙された現場にいて、後に別の場所で再会する。

 

 だが全くお互いに気付く様子がなく、それを不審に思っていたのだが、よく考えると主人公が現場に乗り込んで来たところを彼女は見ておらず、直接顔を合わせていなかったから当然だった。だが、二人が同じ現場にいたことに気付くまではなんだかもどかしかった。

 

 

 中国から来た主人公を受け入れたフランス警察は、最初からかなり怪しかった。ボスに会うのに無駄に複雑で慎重な手続きが必要で、ようやく会えたと思えば主人公のパスポートや拳銃を取り上げてしまう。清廉潔白な中国人を腐敗しきったフランス人が騙すという面白い構図だ。

 

 別に中国は腐敗しきっているわけではなく、間違った方向に真面目にやっているだけだが、それでもフランスがこんな風に自国を描けるのは自由な国家ならではだろう。痛烈な風刺にも感じた。とはいえ、我が国はそんな国じゃない、貶めるようなことをするなんて非国民だ、などと現実と虚構をごっちゃにして頓珍漢なことを言ってしまう人はどこの国にもいるのだろう。

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 ジェット・リーを中心としたアクションは、特に目を見張るようなシーンがあるわけではないが、いつもの安定感のある見ごたえのあるものとなっている。あまり本筋とは関係なく、主人公が警察署内の空手道場に迷い込んでしまい、稽古中の大勢の警察官を相手に戦う羽目になってしまうシーンは笑えた。強引な展開だったが、嫌いじゃない。

 

 ブリジット・フォンダ演じる娼婦がなぜ主人公に関心を示して何度も話しかけたのか、そして仕事に忠実で冷静な主人公がなぜ彼女に関わるようになったのかがよく分からなかったりと、ストーリーとしては雑で大したことがなかったが、気楽に楽しむには悪くないアクション映画となっている。

 

 東洋の神秘なのかなんなのか、なぜか主人公が鍼の達人という設定になっていて、なにかと鍼を使い、最後は北斗の拳みたいになっていたのは面白かった。そんなことができるならわざわざがっつり戦わず、こっそり鍼を使いながら倒していけばよかったのに、と野暮なことを考えてしまった。

 

 

スタッフ/キャスト

監督 クリス・ナオン

 

脚本/製作 リュック・ベッソン

 

原案/製作/出演 ジェット・リー

 

出演 ブリジット・フォンダ/チェッキー・カリョ/リック・ヤン/バート・クウォーク/シリル・ラファエリ

 

音楽 クレイグ・アームストロング

 

キス・オブ・ザ・ドラゴン - Wikipedia

 

 

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「アンダー・ユア・ベッド」 2019

アンダー・ユア・ベッド R-18版

★★★★☆

 

あらすじ

 親から忘れられるほど存在感がなく日陰の人生を歩んできた男は、学生時代に一度だけ自分の名前を呼んでくれた女の家を探し出し、不法侵入をくり返し生活をのぞき見するようになる。

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感想

 存在感のない男が、唯一自分の存在を認めてくれた女性の家に忍び込み、ベッドの下から彼女の生活を覗き見る物語だ。位の高いストーカーといったところだろうか。主人公は存在感のない設定だが、男前の高良健吾が特徴のある髪型で演じているのであまり説得力はない。

 

 だが、主人公を存在感のないキャラとして描くのは、なかなか難しいことなのかもしれない。主人公にする時点で既に目立ってしまう。それに存在感を消そうとすればするほど、悪目立ちしがちだ。この映画の主人公も、無口で自己主張しないことで目立たない男であることを表現しようとしているが、どんな状況でも頑なに無口で自己主張しないことを押し通そうとするので異様な凄みが出てしまい、逆に目立っているような気がする。

 

 

 そんな主人公が付きまとうのは、これまでの人生で唯一自分の名前を呼んでくれた女性だ。彼女は、誰にでも笑顔で感じよく接する。こんな女性は確かに多くの男を誤解させやすい。主人公もその一人だ。彼女はめちゃくちゃ美人というわけでもないが、それが、自分みたいな男でもイケるかも、と男に希望を持たせてしまうポイントなのかもしれない。もちろん彼女は何も悪くなく、そんなことで勘違いしてしまう男たちがすべて悪いのだが。

 

 やがて主人公は、合い鍵を入手してたびたび彼女の家に忍び込み、ベッドの下から彼女の生活を覗き見るようになる。完全にヤバい奴ではあるのだが、そこでの彼の行動がすべて想定の範囲内で面白みがなく、物足りなさがあった。もっと常人には想像もつかない江戸川乱歩の世界のような異常性や変態ぶりを見せて欲しかった。この主人公は凡人の変態でしかない。

 

 これだけだとただの残念な映画だったが、現在の彼女が大きな問題をひとりで抱え、誰にも助けを求められない状況だということが物語を面白くしている。ひとりのはずの家で常に誰かの視線を感じ、居心地の悪さを感じている彼女だが、次第に心のどこかで誰かが見守ってくれている、だから自分はひとりじゃない、と不思議な安心感を抱くようになる。

 

 ところで彼女は最初のころ、誰かに見られているような気がすると相談しても、産後で精神が不安定になっているだけだからと医者がまともに取り合ってくれなかったと不満を漏らしていたが、そりゃそうだろうと笑ってしまった。医者だってまさか物理的に本当に誰かが見ているとは思わないだろう。そんな相談があるたびに「警察を呼んで調べてもらってください」なんて言っていたら、それこそ医者の精神状態が疑われてしまう。

 

 彼女の抱える問題を唯一知ってしまっている主人公は、ラストでその解決のために活躍する。ただのストーカーでしかないのにヒーローみたいになってしまうのが奇妙で香ばしい。そして、それまでの主人公の行動が報われ、救われる一言で幕を閉じるラストは見事に決まっていた。

 

 実際のところは、いくら彼女が心のどこかで守られているような安心感を抱いていたとしても、誰かがずっと家のなかで隠れて自分のことをのぞき見していたと知ったら、感謝なんかするわけなく、シンプルに気持ち悪いと絶句し卒倒するだけだろう。そうは思いつつも、なんだかんだで楽しめる物語だった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 安里麻里

 

原作 アンダー・ユア・ベッド (角川ホラー文庫)


出演 高良健吾/西川可奈子/安部賢一

 

アンダー・ユア・ベッド - Wikipedia

 

 

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「トレインスポッティング」 1996

トレインスポッティング(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 舞台はスコットランド・エディンバラ。仲間と共にドラッグにまみれた生活を送る若者の姿を描く。イギリス映画。94分。

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感想

 2回目の鑑賞。ドラッグと切っても切れない生活を送る若者が主人公だ。

 

人生を選べ、キャリアを選べ、家族を、テレビを、洗濯機を、車を、CDプレイヤーを選べ、電動缶切り機を選べ、自己中心のガキになることほどみっともないことはない、未来を選べ・・・。だけど、それがいったい何なんだ。

 

 世間は色々言うが、ろくでもない世の中で頑張ったところでいったいに何になるのだと、クスリ漬けの日々を送っている。だが心のどこかではこんなことではいけないと自覚している。そして時おりクスリを断ってはみるものの、しばらくすると再びクスリに手を出してしまう繰り返しだ。クスリでなくても、タバコやギャンブルの中毒者ならその気持ちがよく分かりそうだ。

 

 主人公と友人たちのクスリ漬けで最低な日々が、コミカルさを交えつつ描かれていく。トイレや脱糞など尾籠で汚い話が多くてそれはちょっとしんどかったが、シニカルで笑えた。クスリがキマって床に沈み込んだようになるシーンや、禁断症状に苦しみ悪夢にうなされるシーンなど、映像表現も面白い。主演のユアン・マクレガーのへそ出しのぴっちりTシャツ姿は今見るときついが、それをのぞけば登場人物らのファッションもスタイリッシュだ。

 

 

 そしてなんと言っても音楽が良い。映像ともよく合っているし、中毒者の気分を追体験している感覚にもなる。映像に一定のリズムを生み出して、物語の推進力ともなっている。当時、サウンドトラックが話題になったのもうなずける。このサントラをよく聞いていたので、2回目の鑑賞となる今回は、楽曲がどこでどう使われているのか意識的に見ることが出来て、めちゃくちゃ効いていることがとても良く実感できた。

 

 主人公はどん底まで落ちるが、一念発起して完全に薬を断つ。そしてロンドンに出て真面目に働き始める。あんなに酷かったのにそこまで立ち直れるものかと驚き、それなら最初からそうすればよかったのにと思わなくもなかった。

 

 まともな生活を送り始めた主人公だが、スコットランド時代の友人たちに足を引っ張られてしまう。友人とはありがたいものだが、新しいことを始めようとする時には足かせになることもあるから厄介だ。決別しなければならない時もある。

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 主人公がその決断をしたのは、ドラッグ中毒ではなく喧嘩中毒の友人がきっかけだったのには皮肉を感じた。悪いのはドラッグではないとでも言っているようだった。

 

 人生には「最高」と「最低」の2種類しかないわけではない。その間にいくつもの段階がグラデーション状にある。「最高」でないから「最低」だと諦めるのではなく、目の前の選択肢の中から最良のものを一つずつ選びながら、少しずつ地道に「最高」の人生へと近づいていくべきだろう。

 

 ばっちりとラストが決まり、いい余韻に浸れる映画だった。2回目の方がより楽しめたような気がする。

 

スタッフ/キャスト

監督 ダニー・ボイル

 

原作 トレインスポッティング〔新版〕 (ハヤカワ文庫NV)

 

出演

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ケリー・マクドナルド/ユエン・ブレムナー/ロバート・カーライル/ジョニー・リー・ミラー/ケヴィン・マクキッド/ピーター・マラン/アーヴィン・ウェルシュ/シャーリー・ヘンダーソン/ジェームズ・コスモ

 

トレインスポッティング - Wikipedia

 

 

関連する作品

続編

T2 トレインスポッティング

 

 

この作品が登場する作品 

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 *直接作品名は出てこない

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「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド」 2015

進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド

★★☆☆☆

 

あらすじ

 前作で巨人化した主人公は、指揮官に拘束され処刑されそうになるが、突如現れた巨人に救われる。2部作の後篇。87分。

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感想

 前作のラストで主人公が突如巨人化し、後篇ではどんな驚きの展開が待ち受けているのかと心を躍らせながら見始めた。だが、いきなり身内のつるし上げがあり、その後はどちらにつくのかの内輪もめと、巨人とは全く関係のない、ちまちまとした組織のいざこざが延々と続く。

 

 特に中盤の内輪もめは、なぜいつまでもグダグダとやっているのかがよく分からなかった。一緒にやるならやる、やらないなら袂を分かって去る、もうどっちでもいいからさっさと決めて終わらせてくれよと辟易としてしまった。こんなことで死んでいった人間たちが不憫だ。

 

 

 この内輪もめの決着をつける際にようやく巨人が出てくるが、相変わらず映像に迫力がない。巨人にも巨人感が乏しい。この巨人たちよりも、終盤に壁の上で主人公らを煽る國村準演じる指揮官の方が巨人感があったのは笑った。このシーンが映画の中で一番ダイナミックだった。

 

 ただこれは、彼が超大型巨人化することを示唆する伏線だったのかもしれない。そしてそこから逆算して、他の巨人たちは敢えてそこまで巨人感を出さなかったのかもと思い至ったが、もしその通りだったとしたら完全に失敗だ。最後に登場する超大型巨人のためにそれまでの巨人の表現を抑えたことで、ずっとショボい印象を与え続けることになってしまった。

 

 それから前篇では全く気にならなかったのに、この後篇では主人公演じる三浦春馬の劇画調の大げさな演技が鬱陶しく感じて仕方なかった。言動が常に全身全霊で、もっと普通に出来ない?と段々イライラしてきた。だが、なんで普通に喋ればいいのに叫んでいるの?とか、必死に戦っているわりにはよく喋るねとか、独り言の声がデカすぎない?とか、ツッコミを入れながら見ていたら最終的にはなんだか楽しくなってきた。

 

 そして石原さとみは前作同様で変わらず、白々としたキャラクターを楽しそうに演じている。しかし彼女もそうだが、この映画の登場人物たちは途中でよく消えた。主人公らが今後のことで揉めている間、そこに彼女もいたはずで、立場的に何らかの意見を表明しないとおかしいのに、いた?と思ってしまうほど空気のような存在になっていた。他のキャラも、いるはずなのに突如存在感が一切なくなる時があった。そしてある時、突如現れる。

 

 ラストは、壮大な物語のほんの導入部分だと思っていた壁の修復作業の話が、実は物語のすべてだったと判明して腰を抜かしそうになってしまった。人類対巨人の壮絶な戦いの物語かと思っていたのに、上司を説得し、仲間をまとめて工事を完成させるお仕事のお話だった。あまりのスケールの小ささに脱力し、しばらく動けなかった。

 

 ただ、これが3時間の映画だったら激怒してはらわたが煮えくり返っているところだが、90分弱しかなかったのでそんなにダメージはない。なんなら酷すぎて逆に面白く感じてしまうほどだ。色々ツッコミを入れながらみんなで見たら楽しいかもしれない。上映時間の短さはやはり正義だ。愛されるB級映画はどれも上映時間が短い。

コマンドー (字幕版)

コマンドー (字幕版)

  • アーノルド・シュワルツェネッガー
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スタッフ/キャスト

監督 樋口真嗣

 

脚本 渡辺雄介/町山智浩

 

原作 進撃の巨人(1) (週刊少年マガジンコミックス)

 

出演 三浦春馬/長谷川博己/水原希子/本郷奏多/三浦貴大/桜庭ななみ/松尾諭/石原さとみ/ピエール瀧/KREVA/草彅剛/緒川たまき/犬童一心

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音楽 鷺巣詩郎

 

編集 石田雄介

 

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関連する作品

前篇

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「橋」 1959

橋 HDマスター DVD

★★★★☆

 

あらすじ

 第二次大戦末期のドイツ。人員不足で徴兵されるも、前線に連れて行くにはまだ未熟で足手まといになると判断され、地元の戦略的に意味のない橋を守るという名目で置いて行かれた7人の少年たち。西ドイツ映画。

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感想

 序盤は戦時下での少年たちの暮らしが描かれていく。母親を手伝う大人びた者、まだ子供みたいに無邪気な者、恋をする者、失恋する者、親との確執を抱える者と皆それぞれだ。戦時下でもそれぞれの青春時代を過ごしている。

 

 だがそれも召集令状が皆に届いたことで終わる。顔色が曇る親や教師とは対照的に、無邪気に喜ぶ少年たちの姿がなんともいえず切ない。戦争の現実を知らず、勇ましい幼稚なロマンに胸躍らせている。明日の宿題をして損をしたとか言ってしまうような、まだまだ未熟な子供たちだ。

 

 

 ここまでは戦争映画でよく見るプロットだが、ここからの展開が面白かった。前線に連れて行くのは足手まといだと判断された少年兵たちは残され、その名目として戦略的に何の価値もない橋を守る役割を与えられる。この設定自体が寓話的で何かのメタファーのようでもある。それに「ホーム・アローン」的な喜劇にも、白虎隊的な悲劇にも展開できそうな物語の可能性が感じられる。良く練られているなと感心したが、実話だったことに驚かされた。

 

 物語は悲劇的な結末へと向かっていく。その序盤の、橋を渡って撤退してくる兵士らの負傷し体を欠損した瀕死の姿や、部下を居丈高に怒鳴りつける上官の様子は、少年たちに全くカッコ良くも勇ましくもない戦争の現実を突きつける。彼らの興奮で上気した顔が少しずつ真顔に変わっていく。

 

 事情を察して彼らに家へ帰るよう説得しに来た大人に対し、それでも軍国少年マインドで「非国民!」と罵倒し嘲笑する姿には、洗脳されてしまった者の哀しみがあった。この少年たちへの指令は、ある意味では負け戦に子供たちを連れて行くのは忍びないという大人の温情だったと思うが、それに気付けないほど彼らはまだ全然子供だったということだろう。大人たちの建前を真面目に受け取り、純粋まっすぐな気持ちで応えようとしてしまった。

 

 最初は勇敢に戦うも、とめどなく続く攻撃にやがて少年たちが「もう帰りたい」と泣きべそをかき始めるシーンはとても印象的だった。いかにも幼稚な反応だが、過去に戦争が勃発して喝采したほとんどの庶民は、その後同じようなリアクションをして「こんなはずじゃなかった…」と泣きべそをかいたはずだ。日本もそうだった。人間の想像力なんて大したことがなく、実際に起きて見なければ何も理解できないし、分かろうとすらしない。

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 今、勇ましい気分で戦争をけしかけようとしたり、心のどこかで戦争を望んでいる人たちの未来もきっとこうなる。そして少年たちのように、無意味な戦いで多くの人が死んでいくのだろう。

 

 見る前の想像を大きく上回る面白い映画だった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 ベルンハルト・ヴィッキ


原作 橋 (1960年)


出演 フォルカー・ボーネット/フリッツ・ヴェッパー/ミヒャエル・ヒンツ/フランク・グラウブレヒト/カール・ミハエル・バールツァー/フォルカー・リヒテンブリンク/ギュンター・ホフマン/コルドラ・トラントフ

 

橋 HDマスター DVD

橋 HDマスター DVD

  • フォルカー・ボーネット
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橋 (1959年の西ドイツ映画) - Wikipedia

 

 

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「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」 2015

進撃の巨人 ATTACK ON TITAN

★★★☆☆

 

あらすじ

 巨人の侵入を防ぐために巨大な壁で囲まれた街。長きにわたる平穏な日々の後、再び現れ人々を襲い始めた巨人たちを倒すために、幼なじみと共に兵団に入隊した男。98分。

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感想

 映画の出来が酷いと噂だったのでビクビクしながら見たが、全然普通で安心した。ちゃんと原作を読んだり、アニメを見たりしておらず、内容をなんとなく知っている程度の知識しかない状態で見たからだろう。間違い探しをする必要がなく、純粋に一つの物語として楽しめた。原作やアニメに思い入れのある人だと、たくさん気になる点が出てきてしまうのかもしれない。

 

 個人的にはむしろ映画がとてもアニメ的なのが気になってしまった。冒頭の雑踏の音やアフレコ感あふれるキャラクターの声などがとてもアニメぽい。それに食いしん坊や力持ち、キザな隊長など、キャラクターの造形もいかにもアニメだ。せっかくの実写化なのだから、漫画やアニメのらしい表現を実写のリアルな世界観にどう落とし込むのかが見たかった。

 

 

 なかでも滑り気味の石原さとみは見ているのがつらかった。一生懸命にコスプレして似せようとしている人みたいで、やってる本人は楽しそうで何よりだが、そのキャラになんの思い入れもないこちらとしては、なんでそんなものを見せられなければいけないのだと軽い憤りを覚えてしまった。

 

 ただネットでは、キャラの再現度が高いと彼女の評価は高かったようなので、案外漫画やアニメの各シーンをコスプレして完全再現し、それをつなげた映画にするだけで、皆を満足させることができたのかもしれない。原作は映画化するほど面白いのだから間違いないだろう。だがそれだと「面白い」ではなく「似てる」と喜ばれるわけだから、作り手としてはやりがいがなさそうだが。

 

 あるいは最初からはっきりと漫画やアニメとは別物だと分かるスタイルで作るか。個人的には、もっと特撮感を全面に押し出したら面白くなったような気がする。この映画では中途半端に漫画やアニメに寄せてしまっている。

 

 ストーリー的には問題なかったが、いかにもスケールの大きな映画になりそうなのに、全くと言っていいほど映像的にスペクタル感がなかったのが残念だ。もうちょっと寄るか離れるかして欲しいと思ってしまうような、ちょうど駄目なカメラの位置で、巨人たち対人間というダイナミックな対比が感じづらかった。それに主人公らが装置を使って空中を自由に動き回るシーンも、まるで通常運転とでもいうかのように当たり前に描かれてしまって迫力も爽快感もない。CGを作るのに精いっぱいで、構図やカットをちゃんと考える余裕がなかったのだろうか。

 

 それから、壁や建物が崩され、瓦礫が次々と落ちてくる中を主人公らが動き回るシーンが多いので、ヘルメットをかぶった方が良くないか?とヤキモキしてしまった。これは「*映画上の演出です」というやつなので気にしてはダメなのだろうが。

 

 前編後篇の二部構成の映画だが、ちゃんと単独の映画として完結しており、なおかつ後篇も気になる構成となっている。熱望するほどではないが、続きも見ようかなとは思わせてくれる映画だった。上映時間がコンパクトなのも好感が持てる。

 

スタッフ/キャスト

監督 樋口真嗣

 

脚本 渡辺雄介/町山智浩

 

原作 進撃の巨人(1) (週刊少年マガジンコミックス)

 

出演 三浦春馬/長谷川博己/水原希子/本郷奏多/三浦貴大/桜庭ななみ/松尾諭/石原さとみ/ピエール瀧/KREVA/水崎綾女/武田梨奈/高橋みなみ/諏訪太朗/橋本じゅん/仁科貴/デモ田中/ジャスティス岩倉/三島ゆたか

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音楽 鷺巣詩郎

 

編集    石田雄介

 

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関連する作品

後篇

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同じ原作のアニメ劇場版

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「ダーティー・コップ」 2016

ダーティー・コップ(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 仕事に嫌気がさしていた二人の警察官は、たまたま見つけた犯罪組織の秘密金庫の中身を強奪することを企む。原題は「The Trust」。

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感想

 まともに仕事をさせてもらえないことに不満を抱えていた警官が、たまたま麻薬組織の隠し金庫の存在を知り、友人の警官を誘ってその中身を強奪しようとする物語だ。主演のニコラス・ケイジがノリノリで演技をしており、彼のファンならそれだけでも楽しめるはずだ。特に怪しい男をマークするために潜入捜査し、ラスベガスのカジノで働くシーンは面白かった。

 

 特に前半はオフビートなジョークが散りばめられており、随所で渇いた笑いが生まれる。警官たちの腐敗した、というよりも情熱の欠けた気の抜けた仕事ぶりには脱力感があったが、これを笑っていていいのかと段々不安になってくる。正義感に燃えた熱い警官というのも危険なものを感じるが、これはこれでヤバさがある。

 

 

 調査が進んで準備も整い、いよいよ計画が実行される。能天気でどこか頼りない主人公と不信感を持ちながらも従う相棒。先に現場に向かった主人公が途中で何かを落とす軽率なシーンは、こいつを信頼して本当に大丈夫なのか?と思うに十分で、相棒の不安を端的に示していた。心にひっかかりを抱えながら、そしてトラブルが起きながらも、それでも何とか少しずつ目的に近づいていく。

 

 だが、ほぼ成功を手中にしていたのに、予期せぬ結果を招くことになってしまった。原題にある「信頼(Trust)」が足りなかったということだろうか。もしくは、信じる相手を間違えたということなのか。イライジャ・ウッドの綺麗な目が、悪いことをしていても根は純粋でいい奴、という相棒のキャラクターの説得力を増していた。それゆえに騙されやすくもある。

 

 ストーリーも雰囲気も悪くなく、エンディングもキマっていたが、どこか物足りなさが残る。二人のキャラや関係、現場で監禁した女とのやりとりや相手側の情報など、どれも描き方が浅かったのが原因だろう。その中のどれか一つでもじっくりと描いていれば、もっと深みのあるグッとくる映画になっていたような気がする。惜しい、と思ってしまう映画だ。

 

スタッフ/キャスト

監督 アレックス・ブリューワー

 

監督/脚本 ベンジャミン・ブリューワー

 

出演 ニコラス・ケイジ/イライジャ・ウッド/スカイ・フェレイラ/ジェリー・ルイス/イーサン・サプリー

 

ダーティー・コップ - Wikipedia

 

 

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「ドン・ジョン」 2013

ドン・ジョン(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 ドン・ファン的生活を送りながらもポルノ中毒でもある男は、ある女性に惚れて真面目に付き合い始めるが、ポルノを見るのだけはやめられずにいた。

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 俳優のジョセフ・ゴードン=レヴィットの初監督作品。90分。

 

感想

 クラブに行けば必ず女性を連れて帰るほどモテるのに、ポルノ中毒でもある男が主人公だ。珍しくひとりの女性と真面目に付き合い始め、彼女が初めて部屋にやって来た夜ですら、事の後にこっそりとポルノを見てしまうくらい重症だ。

 

 これは想像がついてしまうことだが、原因は彼がひとりよがりの男だからだ。それは彼の生活スタイルを見ても分かる。車に金をかけ、部屋を掃除し、スポーツジム、教会、家族との食事といったいくつかのルーティンをこなし、時おり友人と女を漁りにクラブに出掛ける。割り切って決まったことしかやらない生活は、自分のスタイルを持っているとも言えるが、頑固で柔軟性が欠如しているとも言える。

 

 

 それが女性との付き合いにも表れているのだろう。誰が相手でも自分を貫くだけだから、作業としては毎回同じだ。意中の恋人にすら同じように振る舞ってしまう。同じことの繰り返しに空しさを感じてしまうのは当然だ。その空しさを埋めるため、彼はポルノに走る。

 

 しかし、ポルノを見ていたことを知って怒る彼女に、君だって恋愛映画を見ているじゃないか、と主人公が反論するのは可笑しかった。確かにどちらもよそのカップルを鑑賞する行為という意味では同じだ。それなのに恋愛映画はお咎めなしなのは解せないと言えば解せない。

 

 終盤、主人公はようやく自身の身勝手さに気付く。だが最初から予想出来たことだったので物語としては弱かった。最後に主人公が結ばれる相手には意外性があったが。

 

 映画は、テンポよく小気味よく進行する。だがテンポが良すぎて、あんなに色々あったのにまだ30分しか経っていないのかと、逆に時間の経過が遅く感じてしまった。もう少し緩急やタメがあれば良かったのかもしれない。

 

 不貞腐れた顔で無言でずっとスマホをいじっているだけだった主人公の妹が、終盤にズバリとキレのあるひとことを口にするシーンは面白かったが、全体的には笑いも薄かった。初監督で思い入れもあっただろうに90分のコンパクトサイズに映画を収めたのは偉いが、物足りなさが残る映画だった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/出演 ジョセフ・ゴードン=レヴィット

 

出演 スカーレット・ヨハンソン/ジュリアン・ムーア/トニー・ダンザ/グレン・ヘドリー/ブリー・ラーソンアン・ハサウェイ/チャニング・テイタム/ミーガン・グッド/キューバ・グッディング・Jr

 

ドン・ジョン(字幕版)

ドン・ジョン(字幕版)

  • ジョセフ・ゴードン・レヴィット
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「あの頃。」 2021

あの頃。

★★★☆☆

 

あらすじ

 バンド活動も上手くいかず落ち込んでいた男は、ある日、松浦亜弥のミュージックビデオを見てファンになり、ハロプロおたくの仲間たちとつるむようになる。

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感想

 アイドルにハマった男が仲間と過ごす日々をつづった物語だ。ただ想像するようないわゆるオタクとは違い、主人公らはファンのイベントを主催したり、バンドをやったりとオープンな活動も行っている。だからオタクというよりも、サブカルの人たちといったイメージの方が強いかもしれない。

 

 彼らがステージ上で馬鹿なことをやったり、誰かの家に集まって一緒にコンサートのビデオを見たりする様子は微笑ましかった。確かに中学生の延長みたいだ。でも本当は、大人だってこんな風に無邪気でいてもいいはずだ。主人公はアイドルオタクを続ける未来の自分に出会って愕然としていたが、別にそれでいいじゃないか、と思う自分がいた。

 

 だが人は変わるものだ。熱中もやがては冷めていく。その変化の度合いは人それぞれで、それによって親密だった関係も少しずつ変わっていってしまう。寂しいことではあるが、必然でもある。だがそれでも昔の絆だけは消えず、残り続けていることに胸が熱くなる。

 

 

 終盤は仲間の病気がメインになる。そんな状況ですらもとにかく面白がろうとする彼らの姿が印象的だ。この姿勢を描くことがメインで、アイドルオタクの話はおまけというか、たまたまそうだっただけのようにも感じた。昔は良かったと言い続けるのではなく、常に今を楽しもうとする彼らの姿勢には好感が持てる。

 

 映画としては、ただエピソードを羅列しただけで、まとまりに欠けた物語になってしまっているように見える。終盤は話が違う方向に収斂していってしまったが、それが描きたかったのなら最初からそれメインの形で描いても良かったような気がする。「こんな男がいた」形式で。

 

 松浦亜弥のMVや石川梨華の卒業コンサートの映像などが実際に使われていたので、あの頃ハロプロファンだった人は当時を思い出してより楽しめるだろうし、そうでなかった人たちもそんな青春があったのかと興味深く見ることができるはずだ。

 

 

スタッフ/キャスト

監督 今泉力哉

 

脚本 冨永昌敬

 

原作 あの頃。 男子かしまし物語

 

出演 松坂桃李/仲野太賀/山中崇/若葉竜也/芹澤興人/コカドケンタロウ/大下ヒロト/木口健太/中田青渚/片山友希/山﨑夢羽(BEYOOOOONDS)/西田尚美/ぱいぱいでか美/どんぐり/増子直純(怒髪天)/ニーネ/MONO NO AWARE

 

音楽 長谷川白紙

 

撮影 岩永洋

 

あの頃。

あの頃。

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あの頃。男子かしまし物語 - Wikipedia

 

 

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「普通の人々」 1980

普通の人々 (字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 郊外の大きな住宅で暮らす一家。ありふれた幸せな家族に見えるが、内実ではそれぞれが問題を抱えていた。アカデミー賞作品賞。

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感想

 冒頭から夫婦の噛み合わない会話や妻を警戒しつつ息子に話しかける夫の様子などが続き、どこか不穏なものを感じさせるスタートだ。一見どこにでもいそうな普通の家族だが、内実では何か問題を抱えていることを予見させる。巧みな演出だ。

 

 その後もいびつな家族の姿を炙り出しながら、その原因となった出来事を少しずつ明らかにしていく。ただ、それが分かってくると全然「普通」の家族ではないだろうと思ってしまったが。普通の家族に起きたある悲劇が、一家を普通ではなくしてしまったということか。

 

 

 彼らは彼らなりに、それぞれのやり方でおかしくなってしまった家族を立て直そうともがいている。だが、それぞれが目指す家族の姿が違い、その違いがまた衝突を生んでしまうもどかしさがあった。それに苦悩するそれぞれの様子が描かれるのだが、あまり明確ではなく、煮え切らないような形で表現されている。見ているともやっとしてしまうのだが、これがリアルなのかもしれない。

 

 これは本人たちが自分の気持ちをうまく言葉や態度で表現できないから困っているわけで、それをはっきりと相手に示すことができるなら、あっさりと問題は解消してしまうはずだ。他のメンバーのぐずぐずとした態度に「だから何が問題なの?」と自分まで不満を募らせてしまった。まるで不和な家族の一員になってしまったような気分になる。こうやって互いの溝は深まっていく。しかし母親の態度は、育児を放棄した野生の動物みたいだった。

 

 釈然としない気持ちを持ったまま見ていたのだが、ハッピーエンドとバッドエンドが半々のような結末は腑に落ちるものだった。ハッピーエンドだと楽天的すぎるし、かといってバッドエンドではこれまでの努力の甲斐がない。だからこんな風に落ち着くのが自然のような気がした。

 

 集団生活をうまく維持するためには、なによりも互いに歩み寄ろうとする気持ちが大事なのだろう。他者を責め続けてもいけないし、自分を責め続けてもいけない。それが出来ないものは脱落するしかない。

 

スタッフ/キャスト

監督

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脚本 アルヴィン・サージェント

 

原作 Ordinary People (English Edition)


出演 ドナルド・サザーランド/メアリー・タイラー・ムーア/ティモシー・ハットン/ジャド・ハーシュ

 

撮影    ジョン・ベイリー

 

普通の人々 (字幕版)

普通の人々 (字幕版)

  • エリザベス・マクガヴァン
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普通の人々 - Wikipedia

 

 

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「漁港の肉子ちゃん」 2021

漁港の肉子ちゃん

★★★★☆

 

あらすじ

 何度も男で失敗するも明るく笑い飛ばしながら生きる大柄な母親「肉子ちゃん」と、小さな漁港のある町で暮らす小学生の娘。

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感想

 何度も男で失敗し、各地を転々とするうちに北国のある漁港のある町にたどり着いた「肉子ちゃん」の姿を、小学生の娘の目を通して描いている。肉子ちゃんは太っていて頭が悪く、だけど明るくたくましく、人にやさしく生きている。ちょっとキャラクターをデフォルメしすぎかなと思わなくもないが、これぐらいやらないと陰の部分が出てしまうのかもしれない。ただずっと彼女と娘の声がしっくり来ず、これでいいのか?とずっと気になってしまった。

 

 一方の主人公である娘は、同級生たちとのいざこざなど小学生らしい悩みを抱えながらも、そんな母親を見てきたからか、とても大人びている。無邪気な母親を冷静に見守っている。この映画では子供に子供らしさを求めていないのが良い。「子供らしくあれ」なんて、「扱いやすい人間でいろ」と言っているのと変わらない。子どもだってちゃんと考えている。

 

 

 母娘を見て誰しもが浮かべるであろう疑問を放置したまま、物語は進む。そして終盤で突然トーンが変わり、それを明らかにする演出は劇的だった。不意に知らされた真実に思わず目頭が熱くなってしまった。このシーンは、何からどう伝えるべきか混乱する母親をリードするように、主人公が主導権を握っているのが印象的だ。子どもが大人を助けている。

 

 映画では頭の悪い母と賢い子供という分かり易い構図になっているが、現実世界でもきっと同じことが起きている。いつの時代も若い世代が、古い世代の見たことがない世界まで皆を導くものだ。ベビーカーの中で泣き叫ぶ赤ちゃんも、五年後には古い世代を助ける存在になっていると想像できれば、世の中はもっと優しく、そしてより良いものになっていくはずだ。大人は肉子ちゃんのように、人間らしく生きるための基本姿勢さえ伝えられたらそれでいい。あとは勝手に賢く育つ。

 

 子供を信じる姿勢が感じられて好感が持てる映画だが、子役に吉田拓郎の「イメージの詩」を歌わせるのはさすがにやり過ぎだ。それをチョイスし、子供に歌わせようとする大人のあざとさが透けて見える。

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スタッフ/キャスト

監督 渡辺歩

 

原作

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製作 明石家さんま

 

出演(声)

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Cocomi/花江夏樹/中村育二/石井いづみ/山西惇/八十田勇一/下野紘/マツコ・デラックス/吉岡里帆/ゆりやんレトリィバァ/岩井ジョニ男/オラキオ/チャンス大城/稲垣来泉/滝沢カレン/宮迫博之

 

漁港の肉子ちゃん - Wikipedia

 

 

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「キング・アーサー」 2017

キング・アーサー(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 弟の反乱により国王が殺される。その幼い息子は難を逃れ、出自を知らぬままスラム街の娼館で育てられていた。アーサー王伝説がモチーフの作品。126分。

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感想

 勝手に古代ヨーロッパのリアルな戦記物のつもりで見始めたので、いきなり魔術を使ったシーンに面食らってしまった。だがモチーフとなったアーサー王伝説自体がそんな物語なので、本来なら想定の範囲内のようだ。スケールの大きさを感じるさせる迫力のある映像が序盤から続き、少し「ロード・オブ・ザ・リング」ぽさがあった。

 

 反乱により王位を奪われた国王の子供が主人公だ。スラム街で出自を知らずに育ち、やがて父を殺して王位についた伯父と対決するようになる。そんな主人公が、娼館の女に拾われてから筋骨隆々の青年に成長するまでを、短い時間でテンポよく描く場面は小気味よかった。彼がどんな人物で、どんな仲間がいるかまでもがちゃんと分かる見事な演出だった。主人公が修行に出掛けたシークエンスでも同様の演出が見られる。

 

 最初は何の自覚もなかった主人公だが、人々が彼のもとに集まり、自身も父親が殺された経緯を知るにつれ、真の王としての使命を受け入れていく。すんなりと運命に従うのではなく、途中で怖気づいたりするのがリアルだった。そして大軍を率いて戦うのではなく、少数精鋭で戦うのも良かった。個々の顔がよく見えて面白みがある。これは元となったアーサー王伝説自体がそうなのかもしれないが。

 

 

 ユーモアを交えつつ軽快に描かれ、ガイ・リッチー監督らしさが溢れていた。最後の現国王との対決も見ごたえ十分で高揚感がある。とても面白く仕上がっていて、興行成績的に大コケしたというのが信じられないくらいだ。だが、見始めれば面白いのだが、なかなか食指が伸びないタイプの映画とは言えるかもしれない。題材自体に新鮮味がないし、キャストも充分魅力的かと言われたそうでもない。映画興行は難しい。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/製作 ガイ・リッチー

 

原案/製作総指揮 デヴィッド・ドブキン

 

出演 チャーリー・ハナム/アストリッド・ベルジュ=フリスベ/ジャイモン・フンスー/エイダン・ギレン/エリック・バナ/デビッド・ベッカム/フレディ・フォックス/アナベル・ウォーリス/ミカエル・パーシュブラント/ケイティ・マクグラス/ミリー・ブレイディ/マイケル・マケルハットン

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音楽    ダニエル・ペンバートン

 

キング・アーサー(字幕版)

キング・アーサー(字幕版)

  • チャーリー・ハナム
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キング・アーサー (2017年の映画) - Wikipedia

 

 

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「マスカレード・ホテル」 2019

マスカレード・ホテル

★★★☆☆

 

あらすじ

 連続殺人事件の次の現場と予想されるホテルで潜入捜査することになった刑事と彼のサポートをすることになった女性従業員。133分。

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感想

 いろんな人が大勢行き来するホテルが舞台だ。メインは連続殺人事件の潜入捜査だが、そこで日々起きるちょっとした出来事やドラマも描かれ、知られざるホテルの裏側を覗き見るような面白さがあった。客を信じてサービスするホテルマンと何事も疑ってかかる刑事が、衝突しながらも互いに信頼関係を深めていく姿が見どころのひとつとなっている。

 

 だがこれらのそもそものきっかけとなった連続殺人事件については、ほとんど映像はなく、セリフで説明されるのみだ。捜査自体もセリフだけで進展していく。観客は被害者の顔もおぼろな状態で事件の背景や全体像を自らイメージしていくしかない。正直なところ相関関係が分からなくなってしまったので途中で考えるのを放棄してしまい、特に最初の殺人事件については真相がぼんやりとしか理解できなかった。

 

 結果的にそこは細かい部分でしかなく、そこまで気にしなくても良いところだったのだが、不明な部分を残したまま、続きを見続けるのは精神衛生上気持のよいものではなかった。

 

 

 それからホテルマンのひと言が簡単に事件のヒントに直結してしまっているのが、とても安直に感じてしまった。捜査が行き詰った時などにふと彼女の言葉を思い出して解決の糸口となるのならまだしも、そのひと言を聞いた途端、次の瞬間には閃いてしまっている。トリガーが分かり易すぎるがそんなのでいいのか?とこちらが戸惑ってしまった。

 

 前半から、面白いながらも妙にいい話が多くてちょくちょくイラっとしていたのだが、中盤くらいから反発していた刑事とホテルマンの間に絆に生まれてしまい、共に情熱を燃やす本格的に暑苦しい展開になってしまった。そこはもっと飄々としたトボけたトーンのままでやって欲しかった。ただ、序盤のいい話の一つが実は本筋の伏線だった、という展開は驚きがあり良かった。

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 事件解決後、映画に恋愛要素も放り込んできそうな雰囲気を出していたので警戒してしまったが、さすがにそこは匂わす程度だったので安心した。だが後日譚が長過ぎた。最初は面白かったのだが、段々と尻すぼんでいく映画だ。上映時間が長いだけにその落差が広がってしまい、鑑賞後の印象はあまり良くない。 

 

スタッフ/キャスト

監督 鈴木雅之

 

原作 マスカレード・ホテル (集英社文庫)

 

出演 木村拓哉/長澤まさみ/小日向文世/梶原善/泉澤祐希/東根作寿英/石川恋/濱田岳/前田敦子/笹野高史/髙嶋政宏/菜々緒/宇梶剛士/橋本マナミ/田口浩正/勝地涼/鶴見辰吾/篠井英介/石橋凌/渡部篤郎/明石家さんま

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音楽 佐藤直紀

 

マスカレード・ホテル - Wikipedia

 

 

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「ハッピーエンドが書けるまで」 2012

ハッピーエンドが書けるまで (字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 別の男と再婚した妻に未練たらたらの著名な作家、傷つくことを恐れて一夜限りの恋をくり返す娘、初めての恋になかなか踏み出せない息子。問題を抱えた親子のそれぞれのラブストーリー。原題は「Stuck in Love」。

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感想

 作家の男とその子供たちそれぞれの恋愛物語が描かれる。作家の男は再婚した元妻の家を覗きに行ってしまうほど未練たらたらで、なかなかのヤバさだ。その娘は両親の離婚のトラウマか、恋愛を否定して一夜限りの関係ばかりを続けている。息子は初恋の相手に何もできないでいる。

 

 それに加えて、作家の家らしい独特な家族の日常も描かれている。子どもたちは日記を書くとお小遣いが貰えるシステムで、父親は十代の経験がもっと必要だと息子に恋愛するようけしかける。すべては作家になることを念頭に置いたような生活ぶりで興味深かった。

 

 

 これは親の押しつけがひどいとも言えるが、信心深い家庭が天国に行くために徳を積むことを子供に教えるのとそんなに変わらないので、一つの形としてアリなのかもしれない。本を書くためのネタになるかどうかを、人生の選択の基準とする生き方があってもいい。幸い子供たちもそれを受け入れて、作家を志している。

 

 それから娘と母親の確執も描かれているのだが、この両者を演じる女優の眉毛がそっくりで笑ってしまうレベルだった。二人が母娘だという説得力が半端ないキャスティングだ。奇しくも両者ともフィル・コリンズとショーン・コネリーという有名人の娘だが、父親同士も似ていると言えば似ているかもしれない。ちなみにこの映画にはアーノルド・シュワルツェネッガーの息子が出ていたりもする。

 

 メインであるそれぞれの恋愛については、要所要所で都合の良い展開が起き過ぎだとは感じたが、ユーモアを交えた軽妙なタッチで描かれていて悪くなかった。使われている音楽もセンスが良く、気楽な感じで見るには最適な映画だった。

 

 小説の話題もよく登場するので、読書好きだったらさらに楽しめるはずだ。しかし、スティーブン・キング本人が(声で)登場したのは驚いた。この映画のテイストには異質な作家に感じたが、監督の個人的な趣味なのだろうか?彼はその後にスティーヴン・キング原作のドラマを制作しているようだ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 ジョシュ・ブーン

 

出演 リリー・コリンズ/ローガン・ラーマン/グレッグ・キニア/ジェニファー・コネリー/ナット・ウルフ/リアナ・リベラト/パトリック・シュワルツェネッガー/スティーヴン・キング(声)/クリステン・ベル

 

ハッピーエンドが書けるまで - Wikipedia

 

 

登場する作品

IT(1) (文春文庫)

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)

ヘンショーさんへの手紙 (講談社ワールドブックス)

ザ・スタンド(1) (文春文庫)

World of Apples

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「喜劇 愛妻物語」 2020

喜劇 愛妻物語

★★★★☆

 

あらすじ

 セックスレスで悩む売れない脚本家の男は、妻と娘を連れて取材旅行に出かける。

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感想

 恐妻家の主人公が旅先で何とか妻に取り入ろうとする物語だ。だがこの妻がとにかく恐い。夫を邪険に扱い、ひたすら罵り続ける。主人公に収入がほぼ無く、妻が働き、家事・育児もやっているから立場が強いのは分かるのだが、いくらなんでも冷たすぎる。この妻役の水川あさみの演技がとてもリアルだった。

 

 だがそんな妻に対して、主人公が卑屈になっていないのがいい。何を言われてもめげないし、隙あらば反撃する。この二人のやり取りが笑えた。演じる濱田岳がいいキャラクターで、いいリアクションを見せている。

 

 

 つまりは、なんだかんだ言って二人の間に確固とした絆があるということだろう。それがよく分かる描写があったら、もっと安心して見れたかもしれない。まったく憧れはしないが、見る分には面白い関係だ。

 

 紆余曲折がありながらも、旅の途中でなんとか主人公の試みは成功し、当面の悩みは解消される。この時の二人のやり取りが可笑しい。特に妻の「楽すんな!」と言うツッコミには爆笑してしまった。

 

 そして映画はここで終わらない。その後にとんでもない愁嘆場が待っていた。今どき、いろんな思いが入り混じって感情が爆発し、本人たちが訳が分からない状態になってしまうシーンなんて珍しい。こんなシーンは戦争映画くらいでしかみることがないが、極限状態になればいつだってそうなってしまうのだろう。彼らの切実な思いが伝わって来て、心が揺さぶられた。

 

 なんとか危機を乗り越え、二人はハッピーエンドを迎える。だが、このあと二人はいつまでも幸せに末永く暮らしました、とは思えないようになっているのがまた良かった。彼らは大きな波を一つ乗り越えることができただけで、次の波を乗り越えられるかどうかは分からない。数年後にあっさりと破綻が訪れる可能性だってある。人生はそんなに簡単なものではなく、安心している暇なんてない。

 

 それから、こんな夫婦を間近で見て育つ娘には、かなりの悪影響だろうと思わなくもないが、それはまた別の話だ。

 

 人間の奇妙でおかしな生きものぶりが遺憾なく表現されていて、まさに人間喜劇といった趣の映画になっている。妻の態度がかなりキツいので、それが無理な人には無理かもしれないが、そうでない人は十分に楽しめるはずだ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 足立紳

 

原作 喜劇 愛妻物語 (幻冬舎文庫)


出演 濱田岳/水川あさみ/新津ちせ/夏帆/光石研/ふせえり/大久保佳代子

 

喜劇 愛妻物語 - Wikipedia

 

 

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