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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「哭声/コクソン」 2016

哭声/コクソン(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 不可解な事件が次々と起こる田舎町。最近住み着いた日本人のしわざとの噂が広まり、調査を始める警察官。

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感想

 田舎町で次々と惨殺や放火といった不可解な事件が起きる。単純に事件のあらましを聞いただけでも妙なのだが、その描写が見事だ。呆然としたり、半狂乱になったりする当事者たちが、ボロボロの服に顔は真っ黒で、その姿を見ただけで異常さがよく伝わってくる。下手すればコメディになりそうな見た目なのに、ちゃんと不気味だから不思議だ。

 

 それら事件の原因として浮上してくるのが、最近やって来た日本人の存在だ。真偽不明の噂が飛び交う。最初は真に受けていなかった警察官である主人公も、不審に思い始めて関心を持つようになる。どこか「八つ墓村」的な祟りなどの古い因習を基にしたおどろおどろしい展開や、ゾンビ的な展開が今にも起きそうな雰囲気で充満している。

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 ただし、おかしな出来事は次々と起こるものの、事件の原因や真相はほとんど見えてこない。そのうち主人公の娘にも異変が起きて、主人公自身が謎の大きな渦に巻き込まれていく。國村隼演じる日本人と対峙したり、祈祷師に頼ったり。

 

 ところで、途中から登場する祈祷師はカッコ良かった。お祓いや願掛けみたいなもので、別に信用していないけど一応やっておくか程度の扱いかと思ったら、あれが怪しいから調べてみて、とか言ってバンバンと当てていく。ちょっと憧れてしまった。しばらくこの祈祷師の時間帯があった。

 

 

 そして結局モヤモヤとした形で物語は終わっていく。単純明快なホラー映画ではなかった。韓国の田舎に一人の日本人が現れるという事からも、一つの共同体によそ者がやって来た時の反応を描いていると解釈するべきか。

 

 尾ひれがついた噂話が広がっていることからも分かるように、人々は自分が見たいようにしか見ることができず、それを改めることは難しい。そこにキリスト教的見方や祈祷師的な古いものの見方も影響を与えている。それぞれが勝手に物事を結び付けて、物語を作り上げてしまう。この映画自体も色々な解釈が出来るようになっていて、見る人によって捉え方は違うものになるはずだ。

 

 國村隼や子役の子供をはじめ、皆の演技が見事だった。主人公の顔芸も楽しめ、見ごたえのある映画といえる。ただ、2時間半以上もある作品で、長いな…という感想が次第に頭の大部分を占めだして、段々と集中力がなくなってくるのが正直なところだ。様々な考察を楽しむためにも、心と時間に余裕があるときに見るべき作品といえそうだ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 ナ・ホンジン

 

出演 クァク・ドウォン/ファン・ジョンミン/チョン・ウヒ/キム・ファニ

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哭声/コクソン(字幕版)

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「モンスターズ/地球外生命体」 2010

モンスターズ/地球外生命体(字幕版) 

★★★☆☆

 

あらすじ

 メキシコの地球外生命体が増殖する危険地帯で、現地でけがをした社長令嬢をアメリカに無事に連れて帰るよう依頼されたカメラマン。

 

感想

 地球外生命体が登場するからと、パニック映画かと思って観ると拍子抜けする。もはや地球外生命体を見てパニックを起こす時期は過ぎ、そこで暮らす人々にとっては、それが日常となってしまっているという設定の映画だ。

 

 勿論、だからと言ってエイリアンと仲が良くなったとわけではなく、時々人が襲われて死ぬこともあるし、彼らに対する攻撃の巻き添えになって死ぬ人もいる。人々はそんな現実を受け入れて、そこで淡々と生きている。映画は、そんな場所にやって来た二人のストレンジャーの紀行記のような様相を呈している。紛争地帯のルポみたいなものと言ってもいいのかもしれない。

 

 

 エイリアン自体もそんなに登場せず、結婚を控えた社長令嬢と彼女を送り届けるよう命令されたカメラマンが国境に向かう様子が静かな調子で描かれていく。最初はそのことに気付かず、エイリアンに襲われる事もなく、だらだらと二人で夜の街を飲み歩く姿が描かれる事に少しイライラしたりもしたが、次第に映画の意図が呑み込めてきた。

 

 家から遠く離れた旅の途上にいる時に限って、なぜか家族や友人の事について考えてしまうものだが、旅先の人々の暮らしを眺めていたら自然と彼らの姿が思い浮かんでくるからだろう。そして、どこに行っても変わらない普遍的なものがそこにあることにやがて気付く。エイリアンがいる様な非日常的な場所に住む人々にも、宇宙のどこかからやって来て地球に住み着くことになってしまった生命体にすらもそれはある。

 

 あまり婚約者とうまくいっていないような社長令嬢と、別れた妻との関係でなかなか子供に会えず寂しい思いをしているカメラマン。ラストは必然だったようにも思えたが、それは旅の魔力だと言わんばかりにさっと救助隊に連れていかれる呆気なさが逆にいい余韻を与えてくれた。旅なんてそんなものだ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/撮影 ギャレス・エドワーズ

 

出演 スクート・マクネイリー/ホイットニー・エイブル

 

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関連する作品

続編

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「張込み」 1958

松本清張 張込み

★★★★☆

 

あらすじ

  逃亡犯が昔の女と接触を図るのではとの予測から、東京の二人組の刑事が佐賀にある女性宅を張り込むためにやって来る。

 

感想

 刑事が鹿児島行きの夜行列車に乗り込むシーンから物語は始まる。最初はその目的が明かされていないので、どこに行くのか、何のために乗っているかすら分からない。延々と蒸気機関車内の様子が描かれる。鹿児島行きだから鹿児島まで行くのかと思っていたが、目的地は佐賀。宿屋を決めて落ち着いたあたりで、ようやく彼らの目的が分かってくる。

 

 目的は東京で強盗事件を起こし逃亡している男の昔の女を見張ること。宿屋の2階で張り込みを開始するのだが、あまりにも彼女の家の真正面すぎて、少しヒッチコックの「裏窓」を思い出した。

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 ただこちらは全然何も起きない。今は20以上も年上の男の後妻として3人の継子と共に暮らす女の生気のない生活が淡々と描かれる。事件としては面白みはないが、部屋に籠り汗だくで忍耐強く任務をこなす刑事たちの仕事ぶりや、単調で変わり映えのしない毎日を送る主婦の日常が、リアリティを持って迫ってくる。

 

 このまま、ある女の人生を垣間見ただけで映画は終わっていくのかと思っていたら、ようやく終盤に事件は動き出す。ただここでも事件というよりも、女の挙動にフォーカスが当てられている。暗い顔をしていた女が見せる生き生きとした表情に、ほぼストーカーと化した刑事が戸惑っている。人には色々な顔があり、自分が見ているのはその人のほんの一面でしかないという事だろう。人間の複雑さがよく表れている。

 

 

 さらにこの事件の行く末と共に、若い刑事の身の上話も差し挟まれ、それぞれの人生に思いを巡らすような展開の映画。この話自体も面白かったが、映し出される佐賀の街中の様子などの当時の日本の風景がとても興味深い。女が買い物に行くのが商店街でもなくて、露天のお店が並ぶ場所で、まるで東南アジアのどこかのような光景。ほぼロケ撮影だという事なので、当時の映像がこんなに見られるなんて貴重な体験だ。それから、田園地帯の中の一本道を走る車の映像も圧巻だった。

 

 さらには音楽も良くて、見ていると贅沢な気分に浸れる。血沸き肉躍るというよりも唸ってしまうような映画。

 

スタッフ/キャスト

監督 野村芳太郎

 

脚本 橋本忍

 

出演 大木実/宮口精二/高峰秀子/田村高広/菅井きん藤原釜足/浦辺粂子/北林谷栄/芦田伸介


音楽 黛敏郎

 

松本清張 張込み

松本清張 張込み

  • 発売日: 2017/07/28
  • メディア: Prime Video
 

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「キングスマン: ゴールデン・サークル」 2017

キングスマン: ゴールデン・サークル (字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 自らが所属する組織が壊滅的被害を受けてしまった主人公たちは、巨大な麻薬組織と戦うため、アメリカの諜報機関と連携する。

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 「キングスマン」シリーズの第2作目。

 

感想

 イギリスが紳士ならアメリカはカウボーイ、という単純な発想で作られた映画だ。でもその馬鹿馬鹿しさがいい。ジュリアン・ムーア演じる麻薬組織のボスが東南アジアの山中に作った「アメリカン・グラフティ」風の古き良きアメリカの街も雰囲気がある。続編として正しい展開の仕方だ。

アメリカン・グラフィティ (字幕版)

アメリカン・グラフィティ (字幕版)

  • 発売日: 2014/03/15
  • メディア: Prime Video
 

 

 この感じだと何やっても許される感があって、人間をミンチにしたり、ターゲットの恋人の体内に発信機を挿入したりという、割とどぎつくなりそうなシーンもポップな仕上がりになっている。何でもありで楽しませてくれる。

 

 その分、細かい部分で気になる点はたくさんある。キングスマンの一員のくせに主人公のうっかりミスが多すぎだったり、意外とあっさり身近な人たちを殺してしまったり、チャニング・テイタムは出てきた割にはほとんど活躍してなかったりと、粗さの目立つストーリーだ。特にラストの女ボスとの対決はビックリするくらい呆気なかった。

 

 

 観ている最中は普通に楽しんでいたのだが、見終わった後に冷静に振り返ると、次々と色んなことが気になりだしてしまった。ただ、これはきっとゲラゲラ笑いながら見る類の映画なので、そんな事は気にしちゃいけないし、なんならそれすらも笑いのひとネタのつもりだったのかもしれない。

 

 テンポの良い作品で、コミカルなシーンも多いし、流れるようなアクションシーンも見ごたえがある。エルトン・ジョンの謎の大活躍も可笑しかった。しかしエルトン・ジョンは1曲ぐらいはちゃんと歌うのかと思っていたのに、替え歌をちょろっと歌っただけだった。でも本人が嬉しそうに色々やってて、その様子が面白かった。 

グレイテスト・ヒッツ 1970-2002

グレイテスト・ヒッツ 1970-2002

 

 

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/製作 マシュー・ヴォーン

 

脚本 ジェーン・ゴールドマン

 

製作総指揮 マーク・ミラー/デイヴ・ギボンズ/スティーヴン・マークス/クラウディア・ヴォーン/ピエール・ラグランジェ


出演 コリン・ファース/ジュリアン・ムーア/タロン・エガートン/マーク・ストロング/ハル・ベリー/エルトン・ジョン/チャニング・テイタム/ジェフ・ブリッジス/ペドロ・パスカル/エドワード・ホルクロフト/ブルース・グリーンウッド/エミリー・ワトソン/ソフィ・クックソン/マイケル・ガンボン

 

キングスマン: ゴールデン・サークル - Wikipedia

 

 

関連する作品

前作  シリーズ第1作

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次作 シリーズ第3作

 

 

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「香港国際警察/NEW POLICE STORY」 2004

 

香港国際警察/NEW POLICE STORY (字幕版) 

★★★☆☆

 

あらすじ

  かつての事件で部下を失い、自暴自棄の生活を送っていた刑事は、犯人たちが再び動き出したことを知る。

 

感想

  最初の1時間は、主人公が犯人グループに翻弄され、精神的に痛めつけられる過去シーンと、それがきっかけで酒におぼれ自堕落な生活を送る現在の様子が延々と描かれ、かなり見ているのがしんどい。

 

 このしんどさを紛らわせてくれるのが、主人公を復活させようとサポートするニコラス・ツェー演じる若い警官のはずなのだが、それがうまく機能していない。お調子者で空気を読まないキャラクターで、後ろ向きな主人公を強引に引っ張り、そして観客を和ませないといけないのだが、彼の演技力のせいなのか、脚本のせいなのか、そんな風にはなっていない。ただカッコつけてるだけのイライラさせる奴になってしまっている。おそらく演技力と脚本、両方の問題だ。その結果、重苦しい展開の最初の1時間にイライラの要素までが加わることになってしまった。

 

 

 この映画にはそのニコラス・ツェーの他、若手の役者がたくさん出ており、興行的な部分を意識しているのだろうが、中身的にはジャッキー・チェンの老け具合を強調しただけで特に効果的には感じなかった。ただ出演しているだけといった感じで、結局束になってもジャッキー・チェンには敵わないということを示してしまっている。

 

 若手役者らが演じる犯人グループは、金ではなく、犯罪自体のスリルが目的の金持ちのボンボンのグループだ。一昔前はこんな感じの知能は高いが目的が不明の犯人を描く映画やドラマが多かったなと、なんだか懐かしくなってしまった。プロファイリングする心理分析官が出てくるような。

 

 ただ結局は親のすねをかじる甘ったれた子供たちといった感じで、最後の対決シーンもあまり気分的には盛り上がらなかった。そもそもグループの時点で、一人一人が小粒という事なので、ジャッキー・チェンと互角に戦えるわけがない。クライマックスの見せ場になるような強そうな敵を一人用意しておいてほしかった。

 

 その他にも、主人公の婚約者の挙動がいまいち理解できないとか、色々と盛り上がれない要素が散りばめられている。アクションシーンはいつものジャッキー映画同様に見応えはあるのだが、他の若手出演者とのバランスを気にしてあまり目立ち過ぎてはいけないと遠慮したのか、抑え気味のような印象も受けた。

 

スタッフ/キャスト

監督/製作 ベニー・チャン

 

製作総指揮/出演

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出演 ニコラス・ツェー/ダニエル・ウー/チャーリー・ヤン/シャーリーン・チョイ/アンディ・オン/ヒロ・ハヤマ/ユー・ロングァン/Boy'z/ディープ・ン/ウー・バイ

 

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関連する作品

タイトルに同じ「香港国際警察」が入っているが別設定・別世界観の作品 

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「ザ・サークル」 2017

ザ・サークル

★★☆☆☆

 

あらすじ

 巨大IT企業に入社した主人公はCEOに促され、生活のすべてを公開する新サービスを利用する最初の一人になる。

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感想

 ITの技術は便利だが恐ろしくもあるという、もはや陳腐とさえいえるテーマに真正面から取り組んだ映画だ。

 

 序盤はITの良い側面が語られる。困っていることがあれば詳しい人間に相談できるし、IT機器によって健康管理もできる。あらゆるところに設置されたネット接続のカメラによって、危険な目にあっても誰かが見守ってくれていて、助けてくれる。

 

 

 ただ、そんな良い面を紹介している最中でもすでにこちらはかなり引いている。何より、その素晴らしさを紹介する人たちのキラキラ具合に困惑してしまう。入社したばかりの主人公に、社員向けのITサービスを紹介する二人組の気味悪さといったらなかった。欧米で良しとされるポジティブさとの相性が良いのだろう。

 

 悪い人などこの世にはいない、善人ばかりという前提で突き進むIT企業の無邪気さには際どさを感じる。考えてみれば、彼らは科学至上主義のマッドサイエンティストと同じかもしれない。ITは全能だと思ってしまっている。実際、この映画の中で、何でも情報を公開してシェアしていこうとするトム・ハンクス演じるCEOだって、悪役のはずだが悪役には見えない。

 

 IT技術の恐ろしさを思い知った主人公は、社の方針に修正が必要だと感じ、動き出す。相手を倒すのではなく、改善を迫る動きなので、IT自体は否定していないことがわかり、それには同意できる。

 

 ただIT企業相手にどんな戦いを挑むのか思えば、それ?みたいな拍子抜けする内容だった。観ているときに一番最初に思った疑問だったし、絶対に多くの人がネットで指摘するはずの事だった。それをドヤ顔でエンディングでやるなんて、世界を見くびりすぎだろう。SNSでキラキラしたことばっかり言ってる人が、スゴい事思いついた!みたいな感じでありきたりの事を言ってるのを見たような、残念な気持ちがしてしまった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/製作 ジェームズ・ポンソルト

 

原作 ザ・サークル (上) (ハヤカワ文庫 NV エ 6-1)

 

製作/出演 トム・ハンクス

 

出演 エマ・ワトソン/ジョン・ボイエガ/カレン・ギラン/エラー・コルトレーン/パットン・オズワルト/グレン・ヘドリー/ビル・パクストン/ジュディ・レイエス/ママドゥ・アティエ/ベック

 

音楽 ダニー・エルフマン

 

ザ・サークル

ザ・サークル

  • エマ・ワトソン
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「クリーピー 偽りの隣人」 2016

クリーピー 偽りの隣人

★★★★☆

 

あらすじ

 元刑事で犯罪心理学の大学教授とその妻は新居に引っ越すが、不審な隣人に戸惑う。

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感想

  人の心を操り、他人の家を乗っ取っていく犯人が描かれる。香川照之の迫真の演技の犯人役も怖いが、心をゾワゾワさせる演出もかなり効果的だ。主人公と被害者の女性が話している後ろでたくさんの人間が不穏な動きをしていたり、急に暗くなったりと、随所でどこか不安になる雰囲気を醸し出すような演出が行われている。少しわざとらしく感じるくらいの音楽も効いている。

 

 そして、犯人の家の敷地内の理由の分からない工事の囲いとか、近所の公園の草がぼうぼうで全然手入れされていない様子とか、事件現場には特有の雰囲気があるというが、まさにそんな雰囲気のイヤな感じで満ちている。どこか荒んだ光景だ。

 

 

 犯人の人を操る手口は、ほとんど香川照之の演技で納得させられるのだが、それでもクスリで言うことを聞かせるのはちょっと簡単すぎる気がした。クスリ漬けなら分かるが、一本打ったぐらいでもう思い通りになるというのはさすがに難しいのではないだろうか。

 

 映画の構図としては、犯罪心理学者で元刑事の主人公と隣人の異常者の対決のようになっているのだが、実際はみんながどこかおかしい、というのが面白いところだろう。主人公も犯罪者や被害者の話を聞きながら面と向かって「面白い」とか言っちゃうような人間だし、後輩の刑事は主人公が避けているのを知っていてズカズカと会いにやってくる。

 

 個人的にこの映画の中で一番恐怖を感じたのは、竹内結子演じる主人公の奥さんが、作り過ぎたと隣人にスープを持っていくシーンだ。初対面で嫌な感じだった相手に、なんという無謀な再チャレンジ。よくそんな事が出来るな、と震えた。彼女なりに引越しをしたばかりで張り切っていたり、主婦の孤独みたいなものもあったからだと解釈できるが、はたから見ればかなりヤバい。こんな風に、よく見れば誰もが皆、心に闇を抱えていると言えるのかもしれない。

 

 2時間を超える映画だが、予測できない緊張感のある展開でダレることなく楽しめた。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 黒沢清

 

脚本 池田千尋

 

原作 クリーピー (光文社文庫)

 

出演 西島秀俊/竹内結子/川口春奈/東出昌大/笹野高史

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クリーピー (小説) - Wikipedia

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「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」 2015

ラブ&マーシー 終わらないメロディー(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 精神に変調をきたし、医師の管理下で生活するビーチボーイズのブライアン・ウィルソンは、 カーディーラーで一人の女性と出会う。

 

感想

 こういうスターの実話物は、頑張った末にスターダムにのし上がるも、最終的には仲間割れで空中分解して消えてしまったり、金やドラッグで没落したりと寂しい終わり方をしがち。しかし、この映画はすでに主人公の人気が翳って精神的にも病んでしまっている状態から始まり、全盛期を振り返りながら再生していく姿を描いていく、という構成で、そういうワンパターンの展開から脱することに成功している。

 

 そして、ビーチボーイズの成功物語というよりも、主要メンバーであるブライアン・ウィルソンの創作活動がメインで、ビーチボーイズの人気絶頂ぶりすらほとんど描かれない。説明する必要のないほどの超有名バンドだから、というのもあるだろうが。

 

 

 しかし、創作活動に専念したいからという理由で、ブライアンがツアーには参加しないというのはすごい。日本公演に参加しなかったようだが、コンサートを見た人たちは不満じゃなかったのだろうか。一応、代役が立てられていたようだが。

 

 一人アメリカに残り、名盤となった「ペット・サウンズ」のレコーディングを開始するブライアン。スタジオミュージシャンらが戸惑いをみせる中で、独特の感性で様々な音を組み合わせていく様子はまさに天才。観ているだけでワクワクする。その後に帰国したメンバーらのボーカル入れもするのだが、もうほぼ一人で作っているアルバムといっていいだろう。

PET SOUNDS

PET SOUNDS

  • アーティスト:The Beach Boys
  • 発売日: 2001/04/05
  • メディア: CD
 

 

 ただ制作中は他のメンバーとの対立や、父親との確執、ドラッグの乱用の問題があり、さらには今では傑作とされるアルバムも発売直後はセールスが伸び悩み、評判もいまいちで、次第にブライアンを精神的に追い込んでいく。このあたりは創造性に溢れた純粋無垢な天才青年が周りに潰されていく、みたいな描き方だが、ちょっときれいに描き過ぎなような気もする。

 

 そしてその約20年後のブライアンは、精神を病んでるのをいいことに、担当医師にいいように操られている。しかし、担当医師は資産を奪うだけでも酷いのに、どやしつけて無理やり楽曲製作までさせたりしてえげつない。ブライアンレベルだととんでもない大金が動くので、そこまでできてしまうのかもしれないが、そんな悪人をくせ者役者のポール・ジアマッティが嫌な感じでうまく演じている。

 

 そんな操られ人形のような生活をしているブライアンが一人の女性と出会うことで、窮地から脱するという物語。現在と過去が交互に描かれつつ展開する。本人が撮影に協力しているせいか、都合よく要所要所がぼやかされてしまっているような気もするが、それでも時代の雰囲気がよく表れていて、悪くない映画に仕上がっている。

 

 取り敢えず、ここから復活してくるブライアン・ウィルソンが凄い。改めてビーチボーイズの曲を聴きたくなった。

 

スタッフ/キャスト

監督/製作 ビル・ポーラッド

 

脚本/製作総指揮 オーレン・ムーヴァーマン

 

製作 クレア・ラドニック・ポルスタイン/ジョン・ウェルズ

 

出演 ジョン・キューザック/ポール・ダノ/エリザベス・バンクス/ポール・ジアマッティ

 

音楽 アッティカス・ロス

 

撮影 ロバート・イェーマン

 

ラブ&マーシー 終わらないメロディー(字幕版)

ラブ&マーシー 終わらないメロディー(字幕版)

  • 発売日: 2016/01/29
  • メディア: Prime Video
 

ラブ&マーシー 終わらないメロディー - Wikipedia

 

 

登場する作品

PET SOUNDS

ラバー・ソウル

 

 

登場する人物

ブライアン・ウィルソン

 

 

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「どですかでん」 1971

どですかでん

★★★☆☆

 

あらすじ

 貧しい地域で暮らす人々。 

 

感想

  貧しい地域で暮らす人々の群像劇。市電運転手になったつもりで街中を走る少年、感じのいい夫と悪い妻の夫婦、我が家を空想するホームレスの親子、といった感じで皆どこか寓話的なキャラクターたちだ。

 

 登場人物たちは皆が模範的な人物たちというわけではなく、善い人がいれば悪い人もいて、さらにはよく分からない人もおり、まさにごった煮の人間模様といった感じになっている。妻の過ちを一生許せない夫もいれば、あっけらかんと妻を交換してしまう男もいるしで、世の中にはいろんな人たちがいるのだなと改めて実感させられる。そして皆、たくましく生きている。

 

 

 中でも渡辺篤演じる彫金師のおじいさんが良かった。泥棒がやってくれば現金のありかを教えて「困ったらまた来なさい」と帰し、酔って暴れる近所の男をあっさりとおとなしくさせ、死にたいという者が来れば死にたくなくさせてしまう。そのすべてがどれも飄々とした様子で行われるので、かっこよく見える。近所にこんな人がいれば、全てがうまく回りそうだ。

 

 幼い子供に食料を調達させ、自分は空想ばかりしているホームレスの男や、自分は酒浸りで、妻と養女になった姪ばかりに働かせて、姪には手まで出す男と、なんとなく情けない男が多く描かれているように思えた。もっともらしいことを言って偉そうにしている男に限って大したことはない、と言いたいのかもしれない。

 

 こんな風に、どこか変な人たちが集まって社会が形成され、世の中は動いている。その一員である自分も、自分では普通だと思っているが、きっと他人から見れば変な人に見えるのだろう。きっと「普通」なんて世の中には存在しないのだろうな、とそんな気分になってくる。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/製作

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脚本 小国英雄/橋本忍

 

原作 季節のない街


製作 松江陽一

 

出演 頭師佳孝/菅井きん/三波伸介/伴淳三郎/根岸明美/吉村実子/三谷昇/下川辰平/田中邦衛/井川比佐志/松村達雄/芥川比呂志/奈良岡朋子/塩沢とき/ジェリー藤尾/藤原釜足

 

音楽 武満徹

 

どですかでん

どですかでん

  • 発売日: 2015/04/22
  • メディア: Prime Video
 

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「ニューヨークの巴里夫(パリジャン)」 2013

ニューヨークの巴里夫(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 別れた妻が連れていってしまった二人の子供にいつでも会えるよう、パリからニューヨークに引っ越すことにした小説家。 

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 「スパニッシュ・アパートメント」から始まるセドリック・クラピッシュ監督の青春三部作の三作目。

 

感想

 「スパニッシュ・アパートメント」は随分と昔に見た事があって、内容はサッパリ忘れてしまったが、面白かったということだけは覚えている。この映画はその三作目なので、前の二作を観ておいた方がより楽しめるに決まっているが、そうでなくても充分楽しめそうな内容になっている。

 

 40歳になってパリからニューヨークに移り住んだ男の、子どもたちや元妻、友人たちとの関係や、ニューヨークという異国の地で暮らす奮闘ぶりをコミカルさを交えつつ描いている。そしてそこから見えてくるのは「人生」だ。人生をどう生きるか、そんな大きな視点も感じられる。

 

 

 しかし、主人公は妻と別れて子供と離れ離れになり、新たな土地に移り住みと、色々と大変な状況にいるのに、いつも女性に囲まれているのは羨ましい。なんだかんだでモテている。その結果が三人の子どもの親ということなのだろう。うっかりすると自分の子供が何人いるか、間違えてしまうというのは面白かった。

 

 そしてニューヨークという都市の魅力も伝わってくる。最初は世界中から人が集まり、どこでもゴミゴミして騒々しい、ということを強調して描いていたが、次第にいろんな人がいることの面白さが分かってくる。色んな人がいるから色んな事が起こり、思いもつかない展開になることもある。とても可能性を感じる刺激的な街だ。

 

 そんな街に影響されたのか、いつの間にか主人公も大所帯となって結末を迎える。どんどんと人が集まり賑やかで楽しそうだ。人が集うというのは本能的な事なのだろうなと実感した。ただ、彼がこんな結末を迎えられたのは、40歳であっても新たな生き方に踏み出せたからだろう。人生にどん欲であることは大切なことだ。

 

 映画は、変に冗長になることのない小気味の良いテンポで進み、音楽も良くて、心地よく観ることができた。最後のオチもきれいに決まって、余韻に浸れる。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 セドリック・クラピッシュ

 

出演 ロマン・デュリス/ジュディット・ゴドレーシュ/オドレイ・トトゥ/セシル・ドゥ・フランス/ケリー・ライリー/サンドリーヌ・ホルト/ブノワ・ジャコ


音楽 ロイク・デュリー/クリストフ・ミンク

 

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関連する作品

前作 青春三部作の第二作目

 

 

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「PARKS パークス」 2017

PARKS パークス 

★★★★☆

 

あらすじ

 井の頭公園のそばに住む女子大生のもとに、父親の昔の恋人がかつてその部屋に住んでいたという女子高生がやってくる。

 

感想

 都会の中にある緑あふれる公園、井の頭公園。 この都会の中にあるというのがいいのだろう。人々が集い、そこに音楽があり、文化の香りがする。観ているだけで単純にいい場所だと思うし、その目の前に住む主人公の事を羨ましいと思ってしまう。

 

 橋本愛演じる単位が足らずに卒業が危ぶまれる女子大生の下に、父親の元恋人が当時その部屋に住んでいたという永野芽郁演じる女子高生が現れて物語が始まる。そこに染谷将太演じる女子高生の父親の元恋人の孫も絡んで、ということなのだが、まず、この三人の役者がフレッシュに生き生きと演じていて良かった。

 

 

 女子高生の父親たちが残した曲の一部が見つかり、彼らがそれを完成させていくのだが、悩みや迷いを見せながらも明るく前に進んでいく。若者らしさが溢れていてちょっと眩しかった。彼らが自然に音楽と向き合えるのも、吉祥寺という場所柄から説得力がある。これも文化のある街だからこそだ。映画の演出にも枠にとらわれない自由さを感じた。

 

 単純に最後はライブシーンで盛り上がって終了、でも満足度は高かったと思うが、その先にさらなる展開が待ち受けていて、映画に深みを与えている。若いということはそれだけで素晴らしいが、でもそこには苦みもある。そこまで描き切っているのは見事。

 

 ただ、ちょっと上映時間が長く感じてしまい、終盤少しダレてしまった。本当はもっと長いのだが頑張って2時間を切るようにした、という感じはあるが。それから、女子高生の父親と染谷翔太演じる男の祖母が昔付き合っていたということで、少し年齢設定的に混乱したが、早婚と晩婚ということなのだろう。

 

 使われている音楽も良くて、音楽映画としても十分楽しめる。劇中には数多くのミュージシャンが登場しているようで、このあたりの音楽が好きな人はそれも楽しめるはず。残念ながら自分はほとんどわからなかったが。

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スタッフ/キャスト

監督/脚本/編集 瀬田なつき

 

出演 橋本愛/永野芽郁/染谷将太/石橋静河/森岡龍/佐野史郎/澤部渡/高田漣

 

出演/音楽 トクマルシューゴ

 

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「ファントム・オブ・パラダイス」 1974

ファントム・オブ・パラダイス [DVD]

★★★☆☆

 

あらすじ

 自分の曲が大手レコード会社の社長に盗まれた事を知り、激怒する駆け出しのミュージシャン。「オペラ座の怪人」を翻案したミュージカル映画。

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感想

 自分の曲を盗まれ、陰謀で刑務所にまで入れられてしまった主人公。ただ、怒り狂ってるうちにあっさりと脱獄をしてしまったのは面白かった。まさに怒りの脱獄。この辺はミュージカルなのでノリが大事ということなのだろう。

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 そして主人公は、怒り過ぎて我を失い、事故って喉をやられ、顔にも大きな傷を負ってしまう。その傷を隠すようにマスクをするようになるのだが、いつもマスクが少しズレているように見えて、出てくるたびに気になってしまった。

 

 

 異様な容貌になってしまった主人公に、彼の作品を盗んだレコード会社社長が再び声をかけて二人は一緒に仕事をするようになるのだが、声をかける社長もそれを受ける主人公も凄い。主人公はそれでも自分の作品を世に出したいという欲求が強かったのだろう。

 

 そんな主人公を利用する社長も山師のような怪しい男だ。独特の容貌で怪しい気配を漂わせている。彼の住む豪邸や、彼の劇場、そして主人公に楽曲製作させた小部屋等のセットが昔のSF特撮風で、マスク姿の主人公の存在も相まって、今見ると逆に新鮮で魅力的な雰囲気となっている。

 

 「ファウスト」や「ドリアングレイの肖像」などをモチーフにしているということで、主人公や社長の芸術に対する並々ならぬ情熱が描かれている。美のためなら悪魔にでも魂を売る、といったような超人たちの世界だ。

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 個人的にはこのミュージカル映画の中で使われる楽曲にあまりグッと来なかったので、内容にあまりノれなかった。そもそもベースとなっている「オペラ座の怪人」にもピンと来ていないので仕方がないのかもしれない。

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スタッフ/キャスト

監督/脚本 ブライアン・デ・パルマ

 

出演/音楽 ポール・ウィリアムズ

 

出演 ウィリアム・フィンレイ/ジェシカ・ハーパー/ゲリット・グレアム

 

ファントム・オブ・パラダイス - Wikipedia

 

 

この作品が登場する作品

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「一番美しく」 1944

一番美しく

★★★☆☆

 

あらすじ

 軍需工場で働く女子挺身隊員たち。高い生産目標の達成のために一丸となる。ちなみに主演の矢口陽子は、のちに監督の黒澤明と結婚した。

 

感想

 戦時中に作られた映画ということで、明らかな国威発揚映画。序盤は、ほとんど北朝鮮と変わらないような、洗脳されてるような人々を観ていたら、なんだか吐き気を催すような気持ちの悪さがあった。

 

 こういうのを見ていると、未だに軍国主義に憧れている人たちはどこに魅力を感じてるのだろうと訝しく思ってしまう。そもそも彼らはそんな体制のどこに自分はいるつもりなのだろう。政治家は国の上層部、特権階級にいると思っているだろうからまだ分かるが、普通の庶民は体制が変わったら、マインドコントロールされた庶民になるのだが、それがいいのだろうか。理解できない。まあそこまで深く考えてないのかもしれないが。

 

 

 とかいいながら、映画の中の乙女たちは充実した顔をしている。きっと誰かが洗脳されてて可哀想ですね、と本人たちに言っても、きっと何の疑いもなく、洗脳されてないし、幸せですよ、と返しそうだ。やる事が決められていて、他の事に思い悩む必要がないので、ある意味では現在よりも満ち足りているのかもしれない。

 

 ただ気分の悪さを感じるのは序盤のみで、それ以降はあまりお国のため、みたいな描写はなくなり、少女たちが生産目標達成のために様々な困難を乗り越えていく姿を描く物語となっていく。優勝を目指すスポーツチームやプロジェクト達成に全力を挙げる部署の物語と同じで、けがを隠してプレーを続ける選手がいたり、家庭の事情を顧みず仕事に打ち込むメンバーがいる感じ。そしてそれがドラマを生んでいく。

 

 最初はモチベーションが高く想定を上回る成績をおさめながらも、長続きせず中だるみがあり、士気を高めるために様々な施策を打ったりと、工場の生産管理をしている人はより楽しめる内容かもしれない。働いているのが少女たちなので幼さがまだ残っており、士気が下がった時のあからさまな無気力ぶりには思わず笑ってしまった。

 

 少女たちの健気さがよく表れている女子映画で悪くない映画なのだが、登場人物たちが全員善良なのが不満。そんなわけがない。ただ国威発揚映画なので、悪い日本人がいては問題があるということなのだろう。

 

 しかし、悪い人が全く出てこないとディストピ感が出てくるのは発見かも。個性が死に絶え、全員が完全に洗脳されたディストピア世界が確立したよう見えるからか。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本

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出演 矢口陽子/入江たか子/志村喬

 

一番美しく

一番美しく

  • 発売日: 2015/04/22
  • メディア: Prime Video
 

一番美しく - Wikipedia

 

 

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「女と男の観覧車」 2017

女と男の観覧車 (字幕版) 

★★★☆☆

 

あらすじ

 1950年代のニューヨーク、コニーアイランドで、再婚した夫と共に遊園地で働き、そこに暮らす女。夫の娘が転がり込んできたことで女の生活は微妙に歯車が狂いだす。

 

感想

 働いている遊園地の元見世物小屋で、自身の連れ子と再婚した夫と暮らす主人公。元女優の彼女は、刺激のない暮らしの中で歳を重ねていくことに嫌気がさしている。趣味の合わない夫と火遊びに夢中になっている子供との生活は、確かに消耗しそうだ。

 

 しかし、主人公の子供は清々しいほど可愛げがない。そして何かにつけて火を放つコメディ担当のような立ち位置なのだが、これはこれで彼の心の闇を表しているということなのだろう。すべてを燃やし尽くして初めからやり直したい、というような。ある意味で皆の心境を表していると言えるのかもしれない。

 

 

 潤いのない生活の中で、ふとしたきっかけからジャスティン・ティンバーレイク演じるライフガードの男と不倫をするようになった主人公。気が滅入るような生活から抜け出すチャンスと、男とどこかに逃れられないかと考えている。ところがその男が、夫の娘、義理の娘に気持ちが向き始めていることに気付いて焦り始める。それにしても、この不倫相手は、口説き文句が「パリかボラボラ島で一緒に暮らそう」のワンパターンで笑える。男は単純だ。

 

 物語は、焦った主人公がとっさの判断で取った行動によって、後味の悪い結末を迎えることになる。ただ、主人公は不倫をした時も相手に既婚であることを正直に打ち明けているし、義理の娘のピンチを知った時には取り乱すほど慌てていたので、根は善良な人間なのだろう。まさに魔がさしたとしか言いようのない行動だったといえる。

 

 そんなわけだから、彼女の心の中ではモヤモヤとしたものがきっとあったはずなのに、そんな状況を楽しむように生き生きと輝き出したように見えるのが興味深い。メロドラマ的状況になると燃えるというか。まさに女優の面目躍如といったところだろう。女優的瞬間を楽しんで演技している。

 

 初めての不倫の時もそうだが、主人公がドラマチックな瞬間に酔っているときは、まるでスポットライトのように強い光が彼女に注ぐ演出が印象的だった。義理の娘にもそんな状況の時は強く青い光が当てられているので、女は皆女優、と言っているのかもしれない。

 

 映画は全体としては笑いが薄く、女が精神的に参っていく描写が大部分を占めるので、重苦しく気づまりな内容になってしまっている。その分、主演のケイト・ウィンスレットの繊細な演技巧者ぶりは堪能できるのだが。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本

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出演

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ジャスティン・ティンバーレイク/ジュノー・テンプル/ジム・ベルーシ/デビ・メイザー/トニー・シリコ/マックス・カセラ/デヴィッド・クラムホルツ

 

女と男の観覧車 (字幕版)

女と男の観覧車 (字幕版)

  • ケイト・ウィンスレット/ジャスティン・ティンバーレイク/ジュノー・テンプル/ジム・ベルーシ
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「新ポリス・ストーリー」 1993

新ポリス・ストーリー(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 資産家が誘拐され、犯人を追う刑事。1990年に香港で実際に起きた事件を基にした作品。

 

感想

 シリアスな雰囲気の映画で、いつものコミカルなジャッキー映画とは様相が違う。そう聞くとジャッキーの良さを殺してしまっているような気がしてしまうが、意外にも悪くなかった。

 

 まず犯人一味に警察内部の人間がいるのが良かった。犯人とその犯人を追う刑事が一緒に行動をしたりして、緊張感がある。別に犯人の肩を持つ気はさらさらないのだが、ばれないように犯人がコソコソと攪乱工作をするのを見て、なぜかドキドキしてしまったり。主人公が同僚の犯人を疑い、確信に変わっていく過程も見ごたえがあった。

 

 

 そしてシリアスとはいえ、コミカルなシーンがないわけではない。敵との格闘シーンの中で見せるコミカルなアクションは、いつもの大げさすぎる動きは抑え気味で、シリアスな雰囲気の中のちょっとした清涼剤となっている。いい緊張と緩和。

 

 ラストの雑居ビルの爆破は、凄すぎて逆に笑ってしまうくらいのど迫力。この無茶する感じは香港映画ならでは。さすがに今はこんなことやってないと思うが。

 

 実話をもとにした映画ということで、事実にどれくらい忠実なのかは分からないが、犯人も警察も銃を撃ちまくって共にワイルドだ。警察は犯人のいる部屋の壁を破壊して銃を乱射するという荒ぶり具合。しかし、最近は誘拐事件なんてめっきりないような気がするが、さすがに効率が悪いし、リスクが高いということなのかもしれない。

 

 シリアスな雰囲気のジャッキーも意外といける、と気づかせてくれる映画。 

 

スタッフ/キャスト

監督 カーク・ウォン

 

出演

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ケント・チェン/プア・レンレン/ロー・カーイン/クリスティーン・ン

 

撮影 アーサー・ウォン/プーン・ハンサン/アーディ・ラム/アンドリュー・ラウ/チャン・コンホン 

 

新ポリス・ストーリー(字幕版)

新ポリス・ストーリー(字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

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関連する作品

タイトルから連想するが「ポリス・ストーリー」シリーズとの関連はない 

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