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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「ボヘミアン・ラプソディ」 2018

ボヘミアン・ラプソディ

 

★★★★☆

 

あらすじ

 クイーンのボーカリストとして成功をおさめたフレディー・マーキューリーの伝記映画。 

フレディー・マーキュリー 華やかな孤独

フレディー・マーキュリー 華やかな孤独

  • 作者:リック スカイ
  • 発売日: 2001/11/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

   

感想

 主人公であるフレディー・マーキュリーがバンドに加わり、「クイーン」として活動を始めるところから物語はスタートする。 彼の音楽的な素養や能力に関する説得力のある説明はなく、それらは当然備えているという前提で描かれていく。

 

 クイーンの数々のヒット曲が出来上がる瞬間が描かれていて、とても興味深い。それと共に誰もが知っているような有名なヒット曲がたくさんあることを改めて思い知り、すごいバンドだったのだなと再確認させられる。どのメンバーも作詞作曲をしてヒット曲もあるというのは意外だった。

 

 

 バンド活動と共に描かれるのは、フレディーのセクシャリティーだ。結構ゴリゴリと描いている。彼が自分がゲイであることに気付き、それまで付き合っていた運命の人と言っていた女性と別れるのだが、その後も彼女を自分の元に置いておこうとしたのはさすがにわがまま過ぎった。当然そんな事は出来ないわけで、彼女は新しい恋人を作り、フレディは孤独を感じるのだが、それは仕方がない話だ。運命の人というよりも、信頼できる親友が欲しかったということなのだろう。

 

 そしてこの手の物語で定番なのは、成功後のバンド内での揉め事だ。当然、クイーンでも起こるのだが、罵り合う醜い争いはなく、とても穏やかでジェントルな雰囲気で繰り広げられて、大人だなと思ってしまった。彼らがインテリだからなのか、本物のメンバーがこの映画の製作に関わっているからなのか。バンドが和解するときの穏やかなシーンも良かった。

 

 ここまでで主人公の音楽に対する想いや苦悩、セクシャリティーや私生活の問題、バンドの成功とそれにより生じた数々の問題などが色々と描かれているが、どれも表面的で芯を食ってないような印象がある。さらには、彼の死因となったエイズの話も出てくるが、これもあまり深く掘り下げない。

 

 少し物足りなさを感じない訳でもなかったが、ここからが凄かった。バンドメンバーに自身の病気を告げる主人公の気丈さに胸を打たれてからの、圧巻のライブシーン。そこで歌われる曲の歌詞が、主人公のシチュエーションとリンクして、心が熱くなっていく。渾身のパフォーマンスとそれに熱狂する大観衆。怒涛の展開に、これは盛り上がらざるを得ない。

 

 結果、大満足して観終えたわけだが、映画というよりもクイーンというバンドがすごいだけなのではないか、と思わないでもない。それから、スポーツの試合ではなく、コンサートで観客と共に「We Are The Champions」を大合唱するのはいい光景だなと思った。皆が勝者の誇り高さをもって生きようというメッセージが強く感じられ、勝利の凱歌というよりも、もはや人間賛歌だ。それを皆で共有する高尚な空間となっていた。

 

スタッフ/キャスト

監督 ブライアン・シンガー

 

脚本/原案    アンソニー・マクカーテン

 

製作 グレアム・キング/ジム・ビーチ/ピーター・オーベルト/ブライアン・メイ/ロジャー・テイラー


製作総指揮 アーノン・ミルチャン/デニス・オサリヴァン/ジェーン・ローゼンタール/デクスター・フレッチャー


出演 ラミ・マレック/ルーシー・ボイントン/グウィリム・リー/ベン・ハーディ/ジョゼフ・マゼロ/エイダン・ギレン/トム・ホランダー/アレン・リーチ/マイク・マイヤーズ/アレン・リーチ/アーロン・マカスカー/アダム・ランバート

 

音楽/編集 ジョン・オットマン

 

ボヘミアン・ラプソディ (映画) - Wikipedia

 

 

登場する人物

フレディ・マーキュリー/ブライアン・メイ/ロジャーテイラー/ジョン・ディーコン/ボブ・ゲルドフ/ケニー・エヴェレット/ティム・スタッフェル

 

 

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「ジャズ大名」 1986

ジャズ大名

★★★☆☆

 

あらすじ

  幕末の駿河の小藩に、アメリカからやって来た黒人ミュージシャンが流れ着く。

 

感想

 「ジャズ大名」というタイトルはインパクトがある。スチャダラパーの昔の曲で、この言葉が出てくる曲があったはずだが、どの曲か思い出せない。でも、このタイトルを初めて聞いた時は、あんな感じのリアクションをしてしまいそうだ。

 

 舞台は、幕末の黒船来航以来の政局が混乱する世の中。そんな中、アフリカに戻ろうとしていたアメリカの黒人たちが駿河の小藩に流れ着く。日本中の各藩が、情勢を見極めようと慎重になっており、幕府と倒幕派の両サイドから付け入られないよう事なかれ主義を貫いている時期。当然、バレないよう黒人たちを藩の外に追い払おうとする意見が出てくる。

 

 

 彼らを救うためにちょっとしたドラマが生まれていくのかと思っていたのだが、そんな事はなかった。小藩の殿様は、幕府も討幕派も好きにしろとばかり、投げやりな態度。政局関係なしで黒人たちに興味を示している。そして彼らが持っていた楽器にも関心を持って、一気に大合奏が始まる。

 

 ここからは、ただひたすらの演奏シーン。政府が倒れ新政府が樹立して、と世の中は目まぐるしく変化しているのにお構いなし。気分としては、ええじゃないかを踊る民衆と同じだろうか。地上の出来事をよそに演奏を続ける様子は「アンダーグラウンド」を思わせる。

アンダーグラウンド 完全版 [DVD]

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  • 発売日: 2018/06/22
  • メディア: DVD
 

 

 世間の空気に流されないで、こっちはこっちで好きにやらせてもらう、という一種の反骨精神みたいなものだろう。観客にも難しい事は考えずに音楽を楽しもうぜ、と言っているかのよう。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 岡本喜八

 

原作  「ジャズ大名」(エロチック街道(新潮文庫)収録)

 

出演 古谷一行/財津一郎/神崎愛/殿山泰司/本田博太郎/利重剛/ミッキー・カーチス/唐十郎 /六平直政/タモリ

 

出演/音楽 山下洋輔

 

音楽 筒井康隆
 

ジャズ大名

ジャズ大名

  • 発売日: 2015/09/21
  • メディア: Prime Video
 

ジャズ大名 - Wikipedia

 

 

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「ザスーラ」 2005

ザスーラ (字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 父親が出かけ、家に残された子供たちのうちの一人が、地下室で謎のボードゲームを発見する。

 

感想

  ボードゲームで起きたことが実世界でも起きるというファンタジー映画。ただ、ボードゲーム的には二人で対戦しているのに、実世界ではどちらの順番だとしても二人とも被害を被るのが正直、モヤっとする。これなら、ボードゲーム上も二人で協力する形にして欲しかった。

 

 仲のよくない兄弟が、ゲームを通して協力し合い、絆を深めるというよくあるパターンの物語。いつも兄にいじめられている可哀そうな弟、という構図だと思っていたのだが、見ていると弟にイライラさせられるシーンが多くて、兄に同情してしまうという意外な展開。意図的にこうしてるのなら結構すごいかも。

 

 

 そして、前半は全くの蚊帳の外だった年の離れた十代の姉が、途中から登場して一人だけ場違いなリアクションを繰り返すシーンは面白かった。本当は姉の反応は間違ってないのだが、もう観客を含めて皆、とっくにそこは通り過ぎていて、既に違うステージにいる。

 

 それなりに楽しめる作品ではあるが、やはり子供向けの映画。意外と細かい伏線などもちゃんとしていて、子どもと一緒に見るにはいい映画だと思う。

 

スタッフ/キャスト

監督 ジョン・ファヴロー

 

脚本 デビッド・コープ/ジョン・カンプス

 

原作 ザスーラ

 

出演者 ジョシュ・ハッチャーソン/ジョナ・ボボ/ダックス・シェパード/クリステン・スチュワート/ティム・ロビンス/(声)フランク・オズ

 

ザスーラ (字幕版)

ザスーラ (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

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「アレノ」 2015

アレノ

★★☆☆☆

 

あらすじ

  共謀してボートを転覆させ、泳げない夫を溺れさせた妻と愛人は、遺体が上がるまで近くのラブホテルに滞在することにする。

 

感想

 死んだ夫の遺体が見つかるまでホテルで過ごす妻と愛人、という設定は非常に映画的。ただ、全く面白い展開がない。

 

 そもそもラブホテルに滞在する事に、首を傾げさせられる。病院からラブホテルに直行するのは、目的を遂げた二人の感情をよく表しているが、この設定であれば殺人が疑われるサスペンス要素があってもおかしくない。

 

 

 最初は勢いでそこでいいかもしれないが、滞在は旅館とかにしろよ、と思ってしまった。建前上は遺体が見つかるのを待つ妻と友人なのだから、警察に滞在先が二人でラブホテルだと知れたら、完全にクロだなと思われる。

 

 とはいいながら、サスペンス要素はゼロ。男を殺害した妻と愛人の今さらになって湧いてくる様々な思いが気怠く描かれていく。大それたことをしてしまったという戸惑いや後ろめたさ、死んだ男との思い出、相手への不信感などが描かれるのだが、それらのつながりが感じられず、散発的。こんなことがありそう、というのをただ羅列しただけ。また、それぞれのシーンにもセンスが感じられない。

 

 80分という短い映画だが、とてつもなく長く感じる映画。映画冒頭の、転覆したボートから救助されたばかりの男が、嘘だろというくらい長々とセリフを喋るのを見て、すぐにこの映画はマズそうだ、と身構えてしまったのでなおさら。唯一の見どころと言えば濡れ場くらいだろう。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 越川道夫

 

原案 テレーズ・ラカン〈上〉 (岩波文庫)

 

出演 山田真歩/渋川清彦/川口覚/内田淳子/遊屋慎太郎/諏訪太朗

 

アレノ

アレノ

  • 発売日: 2016/06/03
  • メディア: Prime Video
 

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「かくも長き不在」 1961

かくも長き不在 (字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 パリのカフェの女主人は、毎日店の前を通るホームレスの男が、戦中に行方不明になった夫とよく似ていることに気付く。カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作。 

 

感想

 主人公であるカフェの女主人が、ホームレスの男が行方不明の夫とよく似ていると気づいてからの行動が挙動不審すぎる。男のあとをつけて住処を見つけ、すぐそばで一晩明かし、朝から様子を窺い、そして遂に話しかける。当然会話は弾まないが、それでもその後出かけた男のあとをつけ、彼の行動を見守り続ける。 

 

 何も知らない男にとっては気味悪すぎだったはず。完全なるストーカーだ。単刀直入に「もしかして私の夫では?」と切り出せばいいのに、と思ってしまった。相手は記憶喪失だから変に詰め寄ってはいけないという優しさや、奥ゆかしさの表れなのかもしれない。

 

 

 その後も親せきを呼び寄せて遠くから観察してもらったり、わざとらしく大きな声で身内の話をしてちらちらと様子を窺ったりと、あくまで遠回しに確認をしている。自分の夫だった人だから、本人を見ればわかりそうなものだが、行方不明になって16年も経っているし、記憶喪失で雰囲気は違っているし、主人公ももはや帰って来るとは思わず、記憶は薄れていっているだろうしで、案外分からないものなのかもしれない。

 

 主人公が積極的に男と接し、なんとか記憶が蘇らないかと色々試みる姿は切ない。それでもそんな二人が、店のジュークボックスの前で仲良く並んで座り、姿勢を正してオペラを聴き、曲が終われば二人で歌い出したのは良いシーンだった。ちゃんと心を通わせている。

 

 生き別れになった男女の悲劇的な出会いを描いた恋愛ものかと思っていたら、映画は次第に戦争の深い傷跡を露わにしていくかたちに。戦争が終わって16年が経っても、あちこちに戦争の跡は残り、この主人公にとってはまだ完全に終わっていないということを知る。主人公が確認のために呼んだ夫の叔母が、「困ったことになった」とボヤいていたのが、今さらになって重い言葉となってズシンと心に響く。

 

 主人を演じるアリダ・ヴァリが、浮世離れした美人女優といった風ではなく、どこにでもいそうなカフェを仕切る女主人といった容貌なのが良かった。こうやって戦争を引きずる人間がどこにでもいることを窺わせる。戦争が終わってもその傷跡がいつまでも癒えない事もある。戦争なんてするものではないなと改めて実感させられる。

 

スタッフ/キャスト

監督 アンリ・コルピ

 

脚本 マルグリット・デュラス

 

出演 アリダ・ヴァリ/ジョルジュ・ウィルソン

 

かくも長き不在 (字幕版)

かくも長き不在 (字幕版)

  • メディア: Prime Video
 

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「メールで届いた物語」 2005

メールで届いた物語

★★★☆☆

 

内容

 メールを題材にした4つの物語からなるオムニバス映画。

 

感想

  こういったオムニバス映画は若手を集めて作る、ということが多いように感じるが、15年後の今も活躍する役者たちが多数出演していて、少なくともキャスティングに関しては間違いなかった、と言えるかもしれない。多部未華子は当時16歳くらいで、幼さが残り、まだ子供みたいだった。

 

 4つの短編が含まれるが、真ん中二つはまずまずで、最初と最後の作品は全然ダメ、といったところ。最初と最後の作品は、安易に病気や死を扱いすぎ。特に最初の相武紗季演じる病人を、聖人のように描くのがイラっとした。不治の病で入院している若い女性は皆、無垢で純粋で天使のよう、というある意味で馬鹿にしたステレオタイプ。

 

 

 そもそも、この耳が聞こえず口もきけず、しかも不治の病という謎の病気は、どんな病気のつもりなのだろうか。物語に都合の良い病気を仕立てていること自体が、腹立たしい。こういうタイプの物語は古今東西良くある話なので、一定の人たちを楽しませることが出来る物語といえるが、それだけに凡庸さが際立っていた。

 

 最後の物語の、死んだ妻に似た女性に出会う男、というのも、とてつもなくベタな話。それでも敢えてこういう話に取り組むのなら、せめて何らかの野心を感じるものにして欲しかった。ベタなものに挑んでいるという自覚があったのかすら疑わしい。

 

 それぞれの作品の間をメールが行き交うようにしていた、ちょっとした遊び心は面白かった。公衆電話しかなかった時代と比べたら味気なくなった、と言われたガラケーの時代でも、それなりにドラマにはなるのだな、とちょっと感心した。ということは、スマホでもそれは可能ということか。ただ、何でもかんでもスマホで用を足せてしまうので、すれ違いや勘違いは少なくなってスムーズとなり、スケールは小さくなりそうだ。

 

スタッフ/キャスト

「mail」

監督/脚本 清水浩

 

出演 

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相武紗季

 

「CHANGE THE WORLD!」

監督 伊藤裕彰

 

脚本 井上淳一

 

出演 吹石一恵/多部未華子/松尾敏伸

 

「アボカド納豆。」

監督 鈴木元

 

脚本 大森寿美男

 

出演 岡田義徳/大倉孝二/奥貫薫

 

「やさしくなれたら…」

監督 鳥井邦男

 

脚本 鳥井邦男 / 加藤正人

 

出演 北村一輝/原沙知絵/津田寛治

 

メールで届いた物語

メールで届いた物語

  • 発売日: 2020/03/01
  • メディア: Prime Video
 

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「バッド・ウェイヴ」 2017

バッド・ウェイヴ(字幕版)

★★☆☆☆

 

あらすじ

 私立探偵が様々な依頼をこなしながら、盗まれた自身の愛犬を捜索する。

 

感想

  ブルース・ウィリス演じる主人公は、サーフィンもスケボーもして、すぐに女性と寝てしまうような探偵。そんな風変りな男を中心としたコメディ映画。オフビートのとぼけた笑いが中心で、ハマれば面白いのだが、ハマらなければしらじらとした空気が流れてしまうようなタイプのもので、この映画はと言えば、残念ながらしらじらとした空気が流れてしまっている。

 

 原因は色々あるが、一番大きいのはブルース・ウィリスのキャラクターだろう。どこか達観していて、何が起きても動じず投げやりな態度。近年のブルース・ウィリスは、こんなキャラクターばかり演じているような気がするが、本人の意志なのだろうか。

 

 

 映画の中で「パルプ・フィクション」のパロディのような、捕まったブルース・ウィリスがなんとか窮地を脱するというシーンがあるのだが、彼の魅力はこういう時に泣きべそをかきながら必死に何とかしようとする姿にあるような気がする。「パルプ・フィクション」も、彼の代表作「ダイ・ハード」シリーズもそうだ。なのにこの映画では常に悟りきった顔をして、「やれやれだぜ」といった様子を崩さない。 

パルプ・フィクション (字幕版)

パルプ・フィクション (字幕版)

  • 発売日: 2016/11/01
  • メディア: Prime Video
 

 

 主人公のある意味では余裕しゃくしゃくな、こんな調子を延々と見せられても、全然ドキドキしなくて盛り上がれない。映画では笑いどころとなっている主人公が裸でスケボーをするシーンがあるのだが、ここでも平然とした顔でやってしまっている。とんでもない事をなんでもないような顔をしてやる面白さというのもあるとは思うが、ここは半泣きで情けなくやってほしかった。

 

 そして主人公の周りで色々と事件が起きて仕事も依頼されるのだが、それらがつながり雪だるま式に重なり合ってクライマックスで一気に解決、というわけではなく、あるものは継続中で、あるものは途中で解決、そしてまた別の件が起きるといった調子で、なんとも締まりのない展開。積み重なっていくのではなく、ただ増減を繰り返すだけ。映画のテンションが上がっていくというよりも、ただストーリーを結末まで運んでいるだけ、というような物足りなさを感じる。

 

 淡々とした空気が始終続いて、こちらの気分もどんどんフラットになっていってしまった。もっと泣き笑いさせてほしかった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/製作 マーク・カレン


出演 ブルース・ウィリス/ジェイソン・モモア/ジョン・グッドマン/トーマス・ミドルディッチ/ファムケ・ヤンセン/アダム・ゴールドバーグ

 

バッド・ウェイヴ(字幕版)

バッド・ウェイヴ(字幕版)

  • 発売日: 2018/04/18
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「お嬢さん」 2016

お嬢さん(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 日本統治下の朝鮮半島。日本の資産家を狙う詐欺師の手配で、女中として送り込まれた少女。

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感想

 日本統治下の朝鮮半島が舞台だ。日本の資産家の家に乗り込むという設定のため、韓国語と日本語が飛び交う映画となっている。字幕を見ていたら、突然字幕なしの中途半端に上手い日本語が飛び出したりして、序盤は特に混乱する。

 

 キル・ビルぐらい無茶苦茶な日本語なら微笑ましく見ていられるのだが、この映画では皆それなりに上手くて、逆に微妙なイントネーションの違いなどが気になってしまい、なんだか集中力を乱される。日本語ネイティブだけが感じるマイナスポイントではあるが。

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 そんな序盤の混乱で登場人物の相関関係が把握しづらかったが、日本の華族に婿入りして帰化した朝鮮人とその日本人妻の姉の娘、そして資産を狙う朝鮮人の詐欺師たちが主要人物だということが分かって来る。つまり、日本人は帰化した朝鮮人の姪だけで、他はすべて朝鮮人ということになる。微妙になりがちな日韓関係に配慮した上手いバランスだ。

 

 映画は、見ていたストーリーが何度もひっくり返される展開で、手に汗握る。そこに性的な要素がかなり激しめに加えられ、妖しげな雰囲気も醸し出している。登場する二人の女性、キム・ミニとキム・テリはともに美人だが、肌の質感は残酷なほどに年齢差を感じさせるなと、妙に冷静に思ったりもした。だいたい8歳の差がある。

 

 

 話が二転三転し、結局、詐欺師の男が痛い目に合わされるのだが、そこにあまりカタルシスは得られない。彼は悪人ではあるが、出し抜こうとしたわけではないからだろう。そしてよく考えると、詐欺師の男、日本人令嬢、女中と全員悪人だ。つまり悪人同士の騙し合いだったわけだ。勧善懲悪的にやられたわけでなく、騙し合いに負けたからやられたということになる。

 

 韓国語と日本語のちゃんぽんで少しイライラさせられることを除けば、結末の読めない物語で楽しめた。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/製作 パク・チャヌク

 

原作 荊の城 上 (創元推理文庫)


出演 キム・ミニ/キム・テリ/ハ・ジョンウ/チョ・ジヌン

 

お嬢さん (2016年の映画) - Wikipedia

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「ブラッド・ファーザー」 2016

ブラッド・ファーザー(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 トレーラーハウスに住み、禁酒を続ける入れ墨師の元に、長年行方不明となっていた娘から連絡が入る。

 

感想

 娘が行方不明となりその身を案じながら暮らす男。「行方不明」と聞くと、誰かに連れ去られたのかとか事件に巻き込まれたのかと思ってしまったが、実際の所は家出ということらしい。「行方不明」と「家出」ではずいぶん印象が異なるので、紛らわしい。

 

 目元のアップから始まるメル・ギブソンの登場シーン。目元は皺だらけ、ひげ面でぼさぼさの髪、野暮ったい服装と、冴えないおじさんといった雰囲気なのに、それでも主役感のある存在感。不思議だ。

 

 事件に巻き込まれ、警察と組織に追われることになり、そんな父親に助けを求めた娘。主演がメル・ギブソンなので、娘は添え物になってしまいそうなものだが、ちゃんと彼女にも見せ場を作っていて、いいバランス。父親が往年のアクションスター、娘が今を時めくアイドルという配役の、こんな感じの父娘の映画をつくれば、色んな層を取り込めてヒットしそうだ。

 

 ギャングたちから娘を守るため、かつての裏社会で培ったコネや技術をフル活用する主人公。しかし、バイクも荒野もあまり必然性がないのに登場することに、ちょっとしたパロディを感じて可笑しい。ただ広大な大自然の風景は悪くない。少し緑がかった青空が良かった。

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 娘が捕まり、主人公は直接対決をするために敵方に乗り込んでいく。人質を取られ、一対多で武器もなく、圧倒的不利なのにどうするのだ?と思ったら、ただ無茶をするだけという。でもそれが男らしいメル・ギブソンならではで、爽快感があった。強引だなと思いながらも、どこかで納得しているというか、ニヤリとしてしまうというか。

 

 できれば最後はもっとハッピーなエンディングにして欲しかった気もするが、気軽に楽しめるアクション映画として悪くない。

 

スタッフ/キャスト

監督 ジャン=フランソワ・リシェ

 

脚本/製作 ピーター・クレイグ

 

原作 Blood Father: A Novel (English Edition)


出演 メル・ギブソン/エリン・モリアーティ/ディエゴ・ルナ/マイケル・パークス/ウィリアム・H・メイシー/ミゲル・サンドバル/デイル・ディッキー/トーマス・マン

 

撮影 ロバート・ギャンツ

 

ブラッド・ファーザー(字幕版)

ブラッド・ファーザー(字幕版)

  • 発売日: 2017/10/03
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「洲崎パラダイス赤信号」 1956

洲崎パラダイス 赤信号

 

★★★★☆

 

あらすじ

 金も行く先もなくなった男女が、売春街「洲崎パラダイス」の目と鼻の先にある居酒屋にたどり着く。

 

感想

 その日を暮らす金も寝る場所もない男女。そんな状況になってもただ女に「どうする?」と聞くだけの男が情けない。ただただ女についていくだけだ。女の必死の頑張りでなんとか居酒屋で寝泊まりできるようになっても、そこの女将さんには無愛想。仕事を紹介してもらっても、その勤め先でも無愛想。不貞腐れているというか、偉そうというかぶすっとした顔のままだ。

 

 なんの義理もないのにそんな男に仕事を探してやり、女には住み込みで働かせる居酒屋の女将さんの人の良さが印象的だ。この人情味は、彼女個人のものか場所柄か、それとも時代的なものか。夫に逃げられ、子どもを抱えながら居酒屋を切り盛りする彼女は、新玉三千代演じる主人公と対をなすような、もう一人の主人公と言える。

 

 

 頼りなかった男に愛想をつかし、店の常連客と引っ付いてしまう主人公。案の定といったところだが、ここから男の執着心が凄かった。そのまま女を探しに行ってしまう。飲まず食わずで、しまいには道で力尽きて倒れてしまうその姿は、ストーカーじみた狂気があって怖かった。そんな情熱をどこに持っていたのかと、ちょっとした驚きだった。

 

 主人公を見つけられなかった男が、このまま勤め先の芦川いづみ演じる店員とくっつくのか、なんだか締まりのない話だなと思っていたが、そうではなかった。結局、男と女の仲なんて分からないものだ、ということか。運命というか、腐れ縁というか。理屈ではない。

 

 そんな男女の仲を描いた物語だ。良く分からないはずなのに、なぜか良く分かってしまう不思議。主人公と男、女将さんと出ていった夫、それぞれが再会した時の、お互いの顔を何となく正視できないような、気まずい時間が流れるどこか落ち着かないシーンが何とも言えず良かった。これだけで、男女の不思議を表現してしまっているようなすごさがある。

 

スタッフ/キャスト

監督 川島雄三

 

原作 洲崎パラダイス (集英社文庫)

 

出演 新珠三千代/轟夕起子/河津清三郎/三橋達也/芦川いづみ/小澤昭一

 

音楽 眞鍋理一郎

 

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「モンスターズ/新種襲来」 2015

モンスターズ/新種襲来(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 中東で増殖する地球外生物との戦いに、地元の仲間と共に出兵した青年。

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感想

 前作からは世界観や設定のみを引き継ぎ、登場人物らは一新されている。そして、前作同様、モンスターたちは背景のようなものでしかない。今回は巻き込まれた民間人ではなく、軍人の目から見たモンスターとの戦いが描かれる。

 

 モンスターとの戦いと言いながら、実際は誤爆などで彼らに反発を抱きテロリスト化した現地人との戦いがメインとなっているのが皮肉だ。そして、そんな皮肉な出来事が世界でありふれているという皮肉、といくつもの皮肉が積み重ねられているような気がしてしまう。最近でも、コロナと戦っているはずが、別の何かと戦っている人たちを見たような。

 

 

 モンスターがうろうろしていることを除けば、戦争映画としてリアルで緊迫感のある仕上がりになっている。主人公ら経験の浅いルーキー達を引き連れる軍曹が頼もしくてカッコいい。戦地で起こる様々な出来事に動揺し、精神状態が不安定な主人公たちを叱咤激励し、冷静な判断で引っ張っていく。

 

 とはいえ、そんな軍曹も心に負荷がかかっていたことが次第に分かってくる。数々の戦場を生き抜いてきたが、そもそもこれは何のための戦いで、誰と戦っているのか、もはや理由が分からなくなっている。そんな不毛な戦いを繰り返し、キツい状況に何度も遭遇すれば、誰だっておかしくなる。

 

 敵対している現地の人はたまたまそこで生まれ、家族を作って暮らしているだけで、それを邪魔されれば怒るのも当然だ。そして、もしかしたらそれはモンスターたちにも当てはまることなのかもしれない。となると誰が悪いのか。

 

 戦場の現実を突き付けてくるような音楽と映像も良くて、見ごたえのある戦争もの映画となっている。ただ、痛快なモンスターたちとの対決が展開されるかのようなタイトルやポスターデザインで損をしているのかもしれない。前作を見ていれば、それはないはずだが。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 トム・グリーン


製作総指揮 ルパート・プレストン/ニック・ラヴ/ナイジェル・ウィリアムズ/デヴィッド・ピュー/スクート・マクネイリー/ギャレス・エドワーズ


出演 ジョニー・ハリス/サム・キーリー/ジョー・デンプシー/ソフィア・ブテラ

 

音楽 ニール・ダヴィッジ

 

撮影 クリストファー・ロス 

 

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「カルメン故郷に帰る」 1951

カルメン故郷に帰る デジタルリマスター

★★★★☆

 

あらすじ

 家出して東京でストリッパーになった女が、久しぶりに故郷に戻ってくる。日本映画最初の国産カラー映画。

 

感想

 浅間山麓が舞台。広大な大自然と開拓した村の様子がまるで西部劇のワンシーンのようだ。また、高原で出演者が歌い踊る様子から「サウンド・オブ・ミュージック」ぽくもある。

 

 芸術家になったという娘の本当の仕事に薄々気づいている父親の苦悩や、盲目の音楽家とそれを支える妻、といった少しシリアスな内容を含みながらも、基本的には主人公たちの歌と踊りを楽しむ娯楽作品といったところ。実際、彼女たちの少しユルさのある踊りは見ていて楽しい。若干不自然なカラー映像も非現実的な華やかさがある。

 

 

 しかし、ほぼ半裸で踊る主人公たちに奔放さは感じるが、あまりセクシーさは感じない。背景が広大な大自然だからなのだろうか。彼女たちの周りに集まって来た牛や馬のように、人間だってそれが自然な姿だということなのだろう。どこか健康的ですらある。ただ、終盤の設営された小屋で踊るシーンでは妖しさが出ていたので、シチュエーションというのは大事なのだな、と実感させられた。

 

 主人公たちの言動に頭を抱える父親や校長とは対照的に「別にいいじゃない」といった様子でニコニコしている主人公の姉にグッとくる。数は少ないがこういう人たちがいることで、世界は変わっていくことができるのだろうなと思った。校長を演じる笠智衆のとぼけた演技も面白かった。

 

 主人公たちがやって来たことで村にちょっとした変化が訪れる、という良い話。しかも一つ所ではなく各所から善意が湧き出ていることが、なんだか幸せな気分にしてくれる。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 木下惠介

 

出演 高峰秀子/小林トシ子/望月優子/佐野周二/坂本武/見明凡太朗/三井弘次

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音楽 木下忠司/黛敏郎

 

カルメン故郷に帰る - Wikipedia

 

 

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木下惠介生誕100年「カルメン純情す」 [DVD]

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  • 発売日: 2012/09/26
  • メディア: DVD
 

 

 

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「黒いジャガー」 1971

黒いジャガー(1971) (字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 黒人街ハーレムのボスの娘が誘拐され、捜査を依頼された私立探偵。

 

感想

 登場人物たちのファッショナブルな姿や、小粋な会話、アイザック・ヘイズの印象的な音楽に、意味なく挿入される美女とのベッドシーンと、エンターテイメントに富んだ作品。ただ50年前の当時ならいざ知らず、今見ると会話やシーンのつなぎのテンポがゆったりし過ぎているように感じて、少々だるい。

 

 主人公に捜査を依頼したマフィアと、その娘を誘拐した敵の組織の間には、少し複雑な事情があり、それが登場人物たちの会話から断片的に浮かび上がってくるのだが、テンポがのろすぎて逆に頭にあまり入ってこなかった。今だと隙あらばスマホをチェックしたくなるくらいなので、当時とはだいぶ時間の感じ方が変わってしまったという事なのだろう。

 

 

 もっさりとした調子でアクションあり、緊迫感ありの物語が展開されていく。いまいち乗り切れない感じだったのだが、ラストの、じりじりと敵に迫るシーンで引っ張ってからの、電光石火のクライマックス、そしてスカッとする台詞で気持ちよくエンディングを迎える流れは見事だった。後味は悪くない。

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 この映画のテーマ曲、「黒いジャガーのテーマ(Theme from Shaft)」は有名だが、曲の中盤あたりからアイザック・ヘイズが歌い出すと「サウスパーク」のキャラクター”シェフ”の姿が頭に浮かんで困った。

SOUTHPARK サウスパークシェフ ぬいぐるみ人形 BIG36cmアニメ アメコミ カートゥーン Vintage stuffed animal toy

 

スタッフ/キャスト

監督 ゴードン・パークス

 

出演 リチャード・ラウンドトゥリー/モーゼス・ガン/チャールズ・シオフィ/ローレンス・プレスマン/アントニオ・ファーガス

 

音楽 アイザック・ヘイズ

 

黒いジャガー(1971) (字幕版)

黒いジャガー(1971) (字幕版)

  • 発売日: 2015/03/15
  • メディア: Prime Video
 

黒いジャガー - Wikipedia

 

 

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  • メディア: Prime Video
 

 

 

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「絶対の愛」 2006

絶対の愛(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 いつか付き合っている男が自分に飽きてしまうのではないかとの不安から、整形手術を受けた女。 

 

感想

 男に飽きられてしまうかもと不安になり、別人になるくらい整形してしまう主人公の心理が全く理解できない。容姿が理由で相手にもしてくれない、というのならまだ理解できるが、すでに付き合っているのに。

 

 そして、フラれたくないからとそんな事をしたのに、彼の前から姿を消してしまう主人公。いつかフラれて、彼が別の誰かと付き合い始めるくらいなら、その別の誰かになってやれ、という事か。案の定、上手くいって別人として再び男と付き合い始める。

 

 

 しかし、整形した彼女と付き合いながらも、前の彼女が忘れられないという男。主人公にとっては、変わらず思い続けてくれて嬉しいような、そんなことを言いながら今付き合っている自分は何なの?と腹立たしいような、複雑な気分だろう。でも、これは主人公の気持ちがひねくれすぎているとしか言いようがない。男にとっては、前の彼女にいくら思いを寄せても、相手にもうその気がなければどうしようもないわけで、あきらめて前に進むしかない。

 

 そんな中、ついに真実を告げる主人公だが、当然、男は怒る。この後の展開が、頭がイカれ過ぎていて戸惑ってしまった。すべてが愛ゆえの、という事なのだろうが、正直、男が取った行動はそんなものより復讐、と言った方がしっくりくるような行動だった。男に色目を使いまくりながらも寸止めを繰り返す主人公も、なかなかのヤバさだ。

 

 結局これは「絶対の愛」とかいうものを描いているのではなくて、二人の自信のなさを描いているだけのような気がした。整形手術がその象徴となっていて、自分に自信がないから別の人間になろうとする。自分を大切にしていない、とも言えるかも知れない。

 

 ただ、整形を題材にしているからクレイジー感が際立つが、魔女に変身させられた、みたいなおとぎ話風にすれば、割と世界中でよくみられる普遍的な話になるといえばなるのかもしれない。

 

 映画の中で、彫刻の森っぽくも、秘宝館っぽくもある印象的なオブジェがたくさん点在する場所が登場するのだが、茅島(モド)にある「ペミクミ彫刻公園」というところのようだ。ちょっと行ってみたくなった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/製作/編集 キム・ギドク

 

製作総指揮 鈴木径男

 

出演 ソン・ヒョナ/ハ・ジョンウ/パク・チヨン/杉野希妃/キム・ソンミン

 

絶対の愛(字幕版)

絶対の愛(字幕版)

  • ソン・ヒョナ
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「ヴェンジェンス 」 2017

ヴェンジェンス(字幕版)

★★☆☆☆

 

あらすじ

  集団で暴行されたにもかかわらず、加害者側の悪徳弁護士の力によって裁判でも不利な状況に立たされた被害者の女性に同情し、復讐を誓う刑事。

 

感想

 暴行された上に裁判でもつらい状況に置かれてしまった被害者女性。そんな女性のために法に代わって男が加害者たちに制裁を与えていく物語。スカッとした話になりそうなものだが、全然そうはなっていない。

 

 とりあえずニコラス・ケイジ演じる主人公と、被害者女性との関係が希薄すぎる。たった一度、酒場で話をしただけで、あとは犯行現場に駆け付けたくらい。主人公は刑事なのだから、それぐらいの経験は何度もしているはずで、それならこれまで何度も義憤に駆られて私刑を行っていないとおかしい。

 

 

 なぜ彼女は特別だったのか、それがあまり伝わってこないので、主人公の行動が怪しく見えてしまう。依頼されたわけでもなく、勝手に憤って加害者を処刑していく。その処刑の仕方も相手に懺悔させるでも命乞いさせるでもなく、淡々と見せ場なくあっさりと殺してしまう。あまりの手際の良さに、見ていてスカッとするというよりも、もしかして主人公の方がやばい奴なのでは?と引いてしまった。

 

 ただ、加害者側が酷すぎるのも事実で、本人たちは全然反省していないし、被害者にわざわざ嫌がらせに行くのに加えて、妹は被害者の娘を脅迫し、母親は被害者をビッチ呼ばわりする始末。なんて家族だと反吐が出る。確かにこんな家族を相手にしないといけないなんて辛すぎる。

 

 前半の暴行シーンも当然辛いので、なんだかずっとやりきれない気持ちのまま映画を観ることになってしまう。

 

 ラストで被害者の娘が主人公に感謝をするのだが、なんで?と思ってしまった。おそらく娘の視線だと、何もしないくせになぜか母親の近くにいつもいた気味の悪い刑事、くらいの認識になってるはずなのだが。こんな調子でこの映画はどこかちぐはぐな描写が続く。そういえば冒頭の刑事の相棒が死んでしまうシーンも特に必要なかったのでは?と急に思い出して、さらにモヤモヤとした気分になってしまった。

 

スタッフ/キャスト

監督 ジョニー・マーティン

 

原作 Rape: A Love Story (English Edition)


製作/出演 ニコラス・ケイジ

 

出演 アンナ・ハッチソン/タリタ・ベイトマン/デボラ・カーラ・アンガー/ドン・ジョンソン

 

ヴェンジェンス(字幕版)

ヴェンジェンス(字幕版)

  • ニコラス・ケイジ
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ヴェンジェンス (2017年の映画) - Wikipedia

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