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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「blank13」 2018

blank13

★★☆☆☆

 

あらすじ

 借金を抱え、家族を捨てて出て行った父親の葬儀に参列する息子たち。 

 

感想

 父親の抱えた借金により、厳しい取り立てに耐える日々を過ごした兄弟。やがて父親は蒸発し、朝から晩まで働いて、女手一つで育ててくれた母親を見てきた彼らにとって、父親は当然憎むべき存在だ。だから出て行って13年後に、末期がんで死期が迫った父親の所在が分かった所で、無視しようとするのは理解できる。

 

 だが完全には切り捨てられないのが、血のつながった親子の悲しい性だ。嫌な事が多かった幼少期だが、父親との心温まる思い出もないわけではない。苦労させられた母や兄とは違い、弟はそんな懐かしい父親との記憶を今も時々思い出している。そして、複雑な思いを抱えながらも、父親に会いに行く。

 

 

 前半はそんな当時の家族の様子と、13年ぶりに会った父子の愛憎劇が薄くベタに描かれていく。このあたりはありきたりの出来事が淡々と描かれだけなので、結構つらかった。

 

 後半は、死んだ父親の告別式が主な舞台となる。そこで参列者が故人の思い出を語り、兄弟が知らなかった父親の姿が浮かび上がっていく。いい話ではあるのだが、その形式も、浮かび上がる父親の姿も、とてつもなくありきたりだ。新鮮味がなさ過ぎて、困惑してしまうほどだ。

 

 ただ参列者が語る様子を、面白おかしく描こうとはしているようで、佐藤二朗がいつもの感じで司会者役となり、参列者がコミカルに答えていく。ボケたりツッコんだりして、まるでコントみたいだなと思っていたら、もともとこの映画はコントの企画だったようだ。それを知ると、今までなぜこんなにベタだったのかの謎が解けた。

 

 コントは、店員と客、医者と患者のような、日常でよくある状況を面白おかしく描くものだ。基本は誰もが分かるありきたりのものじゃないといけない。葬式もコントでよく使われるシチュエーションだ。だからこれはコントとしては間違っていないのだが、映画としては既視感あり過ぎて正直しんどい。コントのままで留めておいた方が良かったような気がする。

 

 でも葬式というのは、本当はこんな形のものがいいのかもしれない。どこの誰だか分からない人たちに交じって神妙な顔をして時が過ぎるのを待つよりは、参列者が一人ずつ故人との関係を語る方が、故人の人生が浮かび上がって皆の記憶にいつまでも残るはずだ。二度と同じメンバーで集うことはない、故人のための一期一会の集まりなのだから、同じ参列者の事をより知る機会がもっとあってもいい。

 

 豪華な出演陣を楽しむにはいいが、高橋一生ら主要キャストに期待していた人にとっては、がっかりさせられるだろう映画となっている。

 

スタッフ/キャスト

監督*/出演 斎藤工

*齊藤工名義

 

脚本 西条みつとし

 

出演 高橋一生/松岡茉優/神野三鈴/リリー・フランキー/佐藤二朗/村上淳/織本順吉/川瀬陽太/伊藤沙莉/くっきー/大水洋介/永野/ミラクルひかる/福士誠治/蛭子能収/杉作J太郎/波岡一喜/森田哲矢/榊英雄

 

出演/音楽 金子ノブアキ
 

blank13

blank13

  • 発売日: 2018/10/31
  • メディア: Prime Video
 

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「センター・オブ・ジ・アース2 神秘の島」 2012

センター・オブ・ジ・アース2 神秘の島 (字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 無線で何者かによって送られてきた暗号を解読し、「神秘の島」に向かう少年と義理の父親。

 

感想

 前作はブレンダン・フレイザーが出ていたことと、悪くない映画だったということぐらいしか覚えていないのだが、続編となる今作では、少年役だったジョシュ・ハッチャーソンのみが引き続き出演しているだけで、あとのメンバーは一新されている。

 

 ブレンダン・フレイザーの代わりにドウェイン・ジョンソンが出ているぐらいで、あとのキャストは同じかと思っていたので驚いた。しかし、それで特に違和感も感じないのだから、すごいと言えばすごい。前作と登場人物がなるべく被らないようになっている。

 

 

 映画はワクワク感を感じさせてくれる冒険映画。なんとなくジョージ・ルーカスやスピルバーグが作っていたような80年代のアドベンチャー映画を思い出させる。今はこんな感じの、大人が安心して子供に見せられるような映画が少ない様な気がするが、自分が知らないだけなのだろうか。

グーニーズ (字幕版)

グーニーズ (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

 時代を経るごとに、どんなジャンルの映画も深みを求めて色々な要素が付け加えられ、どうしても複雑になっていきがちだが、Vシネのヤクザ映画のように、愚直に同じようなものをつくり続ける事も大事なのかもしれない。下心を出して大人も唸らせようといろんな要素を足したりせずに、間違いなく子供が楽しめる冒険映画を作り続けるという事は、なかなか自制の必要な難しい事なのかもしれない。だけど、いつの時代も子供はいるわけで、そんな映画は必要とされる。

 

 映画は誰も死なず、悲惨な目に遭う事もない、まさに安心して見せられる子供向けの映画。細かい部分がおおざっぱで、キャラクターの描き方も物足りないが、見たこともない景色や生き物を見せてくれるワクワク感や、大きな生物に捕食されそうになったり、初めての体験をしたりするドキドキ感があって、十分に楽しませてくれる。親子で観るには最適の映画だろう。

 

 よく考えると、ストーリーは前回と同じ構図。未知の世界にたどり着くも、すぐにとんぼ返りするという物語。強いて言えば、もっと未知の世界でアドベンチャーをしてもらいたかった。

 

スタッフ/キャスト

監督 ブラッド・ペイトン


原作 神秘の島(上) (福音館古典童話シリーズ)

 

出演 ドウェイン・ジョンソン/マイケル・ケイン/ジョシュ・ハッチャーソン/ヴァネッサ・ハジェンズ/ルイス・ガスマン/クリスティン・デイヴィス

 

センター・オブ・ジ・アース2 神秘の島 (字幕版)

センター・オブ・ジ・アース2 神秘の島 (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

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登場する作品

神秘の島(上) (福音館古典童話シリーズ)

宝島 (光文社古典新訳文庫)

ガリバー旅行記

 

 

関連する作品

前作

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「なつかしい風来坊」 1966

なつかしい風来坊

★★★☆☆

 

あらすじ

 何度か偶然出会ったことで親しくなった役人と日雇い労務者の二人。

 

感想

 主人公である生真面目で線の細い官僚と、ハナ肇演じるガサツだが人の良い日雇い労働者の男の二人が、ふとしたきっかけから交流をするようになる。まったく違う種類の人間が出会う事で起きるコメディだが、その多くは主人公の一般家庭に入り込んだ男が笑いを生んでいる。ただ、古い映画という事もあってそんなに笑えるシーンはない。

 

 男は、酔っぱらうとたちが悪いが、頼まれれば主人公や隣人の家の修繕をしたり、主人公が欲しがっていた庭石を見繕って持ってきてくれたりと、気の良い男だ。一晩お世話になった主人公一家にお礼を持って来たり、病人が元気になれば快気祝いと、そんな風に見えないのにきっちりとしている一面もあってそこが面白いのだが、それよりも、そんな男の誠実さが眩しくて仕方がなかった。

 

 

 彼の陽気な振る舞いを見ていると、出来の悪い自分だが、せめて人様のためになる真っ当な人間でありたい、という男の想いがひしひしと伝わってくる。自分も含めて、最近はこんな人いないよなと。いい人だと思われたいとかそんな下心は一切なく、ただ相手が喜ぶことをしようと無心に行動している。

 

 そんな男に好感を持ち、信頼を寄せる主人公。彼も最初は生真面目だけが取り柄の気弱な男かと思ったが、自殺未遂の女性を助けて家に住まわせたりと、意外と男らしい。官僚と日雇い労働者という普通なら交わることのなかっただろう二人が、友情を深める様子は心温まる。

 

 ところが突然起きた不穏な事件。予期せぬ出来事にも関わらず、一瞬たりとも男に疑いを持たなかった主人公に胸が熱くなる。その一方で、修理をしてもらったりして喜んでいたくせに、あっさりと手のひら返しをする主人公の家族や隣人。だが世の中というのはそんなものだ。多くの人は何も考えずに、ただその場の状況に流されていく。世にいる悪人たちよりも、深く考えもせず現状を追認するだけの大衆の方がよほど怖い。

 

 その事件の当事者でもある倍賞千恵子演じるヒロインは、ほとんど見せ場がなく、それどころか自殺未遂はするわ、暗くて何考えているか分からないわ、勝手に家を出て行くわで、滅茶苦茶イメージが悪い。なんだかちょっと可哀想だった。

 

 不穏な事件をきっかけに、映画はどこか寂しい雰囲気をまとい出す。男の態度の変化や主人公の異動の話など、人生の侘しさを感じるような話が増えてくる。そんなシーンに何となくしみじみとしながら迎えたラスト。意外なハッピーエンドが待ち受けていたのだが、男らの思いもよらない変わりように驚いてしまって、少しついていけなかった。

 

 ちなみに内容とは関係ないが、映画の主な舞台は茅ヶ崎。砂浜でのシーンで江の島と共に変な形の大きな建築物が映っていて、ああこれがサザンオールスターズの歌っていた「HOTEL PACIFIC」(パシフィック・ホテル)なのかと、軽く感動した。

HOTEL PACIFIC

HOTEL PACIFIC

  • 発売日: 2018/08/06
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本

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脚本 森崎東

 

出演 ハナ肇/倍賞千恵子/有島一郎/中北千枝子/真山知子/久里千春/松村達雄/桜井センリ/犬塚弘/高原駿雄/穂積隆信

 

音楽 木下忠司

 

なつかしい風来坊

なつかしい風来坊

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

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「キャットウーマン」 2004

キャットウーマン (字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

  勤めていた化粧品会社の秘密を知ったことで殺されてしまった女性が、猫神の力によって生き返り「キャットウーマン」として不正を暴く。アメコミ「バットマン」のキャラクターを主人公とした映画。

バットマン:ラストナイト・オン・アース (ShoPro Books DC BLACK LABEL)

バットマン:ラストナイト・オン・アース (ShoPro Books DC BLACK LABEL)

 

 

感想

 致命的な事に、ハル・ベリー演じるキャット・ウーマンが、全く魅力的ではない。化粧は濃いし、動きは完全にCGで不自然だし、時々ネコのモノマネなんかしてしまうしで、観ていて気分が上がるというよりも下がることの方が多い。衣装も使い方が悪くて、セクシーというよりも間抜け感がある。

 

 「キャット・ウーマン」といえば、気まぐれな猫のように、つかみどころのないキャラクター、というイメージだったが、この映画ではか弱い子猫のようなキャラクターとなっている。一人で行動しているのだが、相手役の刑事がいないとどこか心もとない。男性の助けを必要とするキャラになっていて、あまりスーパーヒーロー感はない。恋愛要素を入れようとしたから、こうなってしまったのか。

 

 しかも敵が誰だか曖昧で、ヒーローものらしいストーリーの分かりやすさがない。最初は化粧品会社の社長が敵役になるのかと思っていたのだが、いつの間にか退場していなくなり、その妻が最終的な敵役に。ただ彼女は美人で金持ちかもしれないが、特殊能力を持っているわけでもない普通の女性。なのに互角に戦うものだから、もしかしてキャットウーマンって弱いのか?と気分が盛り下がってしまった。しかも、シャロン・ストーン演じる敵役の方が、どことなくキャットウーマンぽいし。

 

 敵との戦いもいまいちで、スケール感のない、こじんまりとした物語になっている。この感じだったら、一話完結のテレビドラマの方が相応しいのでは?と思ってしまった。

 

 

スタッフ/キャスト

監督 ピトフ

 

原案 テレサ・レベック/ジョン・ブランカトー/マイケル・フェリス

 

出演 ハル・ベリー/ベンジャミン・ブラット/ランベール・ウィルソン/フランセス・コンロイ/シャロン・ストーン/アレックス・ボースタイン/マイケル・マッシー/バイロン・マン

 

音楽 クラウス・バデルト

 

キャットウーマン (字幕版)

キャットウーマン (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

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関連する作品

 キャットウーマンが登場する作品

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「哀愁のサーキット」 1972

哀愁のサーキット [DVD]

★★★☆☆

 

あらすじ

  人気歌手と恋に落ち、逃避行するプロレーサー。当時、実際にあった出来事をモデルにした映画。

幻のレーサー・福沢幸雄 (1978年)

 

感想

 主人公を演じる峰岸徹(峰岸隆之介)が、まるで少女漫画の王子様のような男前だ。なんだか怪しげなおじさん役をすることが多かった中年以降の彼しか知らなかったので、若い頃はこんなに男前だったのかと驚いた。

 

 そんな彼が演じる主人公が乗る車はシボレー・コルベット・スティングレーで、これまたカッコいい。海越しの富士山を背景に、車を停めた主人公が佇む映像があったりして、画になる凝った構図を撮ろうと意気込んでいるのがよく分かる。ファッションや音楽も良くて、全体的にスタイリッシュだ。特に前半は、そんな映画を撮りたいというチャレンジ精神が強く伝わってくる。

 

 人気レーサーである主人公だが、車と女を賭けた草レースをやったりして刹那的に生きている。レーサーが刹那的に描かれがちなのは、死と隣り合わせの競技だから、まるで生き急いでいるように見えるからだろうか。

 

 そんなレーサーに惹かれる人気女性歌手。彼女はヒット曲を連発して忙しい日々を送っていたが、実感の乏しい日々に空しさも感じていた。二人はどこか似た者同士だったという事なのだろう。共に仕事をほっぽり出して、逃避行に出る。

 

 

 車に乗り込み、当てもない旅を続ける二人。何やら熱心に仕事をしている海辺の漁師たちのそばで、若い二人が戯れているシーンはまるで現実感がなく、虚無感が強調されていて印象的だった。そんな夢のような時間は続かないという事を暗示しているようでもある。

 

 それから二人のベッドシーンで、敢えての演出なのか、予定外の応急処置なのか分からないが、時々、画面の横幅が狭くなったり̚̚角だけ黒くなったりして、少し面白かった。映ってはいけないものを映さないために、必死に隠しているという際どい感じが良い。

 

 やがて二人の逃避行は行き詰まりを迎え、現実世界へと戻っていく。二人ともスターのくせに、そこらの若者のようにお金を持っていないのだな、と思わないこともないが、わりとよくある話ではある。物悲しい結末だが、どこかで必然だったような気がするエンディングだ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 村川透

 

出演 峰岸隆之介(峰岸徹)/木山佳/槇摩耶/石川セリ/絵沢萠子/粟津號/日高晤郎

 

音楽 樋口康雄 

 

撮影 姫田真佐久

 

哀愁のサーキット [DVD]

哀愁のサーキット [DVD]

  • 発売日: 2019/08/02
  • メディア: DVD
 

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「ラスト・ターゲット」 2010

ラスト・ターゲット (字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 スウェーデンで襲撃された殺し屋の男は、ほとぼりが冷めるまでイタリアの片田舎で身を潜めることになる。原題は「The American」。

 

感想

 冒頭は、雪景色の人里離れた森の中。小さな家の暖炉のある部屋で、恋人と過ごす主人公が映し出される。そんな絵に描いたような幸福な光景から一転する翌日の朝の出来事は、なかなかショッキング。セリフも少なく、まだ何者かも分からない主人公の、突然の非情な行動に驚かされて、良いスタートだった。

 

 こんな感じで、突然のバイオレンスが発生するような激しいアクション映画なのかと思っていたらそんな事はなく、この後は、追手から逃れるためにローマの片田舎で過ごす殺し屋の主人公が静かに暮らす様子が描かれる。

 

 

 主人公はほとんどセリフもなく、誰かと会っても言葉少なで笑顔を見せる事もない。さらには、組織に指定された場所ではない所に潜伏したり、与えられた携帯電話は使わなかったりと、殺し屋らしく誰も信用しない慎重さを見せている。しかし、静かな生活を送る中で、次第に主人公の心境に変化が訪れる。

 

 少し不自然なかたちで神父が登場することからも、キリスト教的、宗教的な暗示がありそうな物語。主人公は誰も信用しないような非情な、いわば地獄のような世界に嫌気がさしてそこから抜け出したいと思う気持ちが芽生え始めている。その対極、安らげる楽園のような世界の象徴は、恋人とピクニックをした、森の中の静かで心落ち着く場所か。

 

 改造銃を依頼した女性が、ブリーフケースの暗証番号に指定した「14」も何か意味があるのかと思ったが、単純に銃の名前「Ruger Mini 14」から取っているようだ。

 

 主人公は足を洗って穏やかな生活を送ろうとするが、この手の組織はそれを簡単には許さない。それでもなんとかしがらみを断ち切り、恋人の待つ場所、楽園へと向かう。しかし、さなぎの状態から蝶になって自由にはばたける、という一歩手前で力尽きてしまった。切なく物悲しい結末ではあるが、最後にそれを目指すことができたという満ち足りた気分もある。

 

 静かで地味な映画だが、意味ありげなシーンが多く、何回見ても新しい発見がありそうな、しみじみとした深みを感じる映画だった。

 

スタッフ/キャスト

監督 アントン・コービン

 

原作 暗闇の蝶 (新潮文庫)


製作 グラント・ヘスロヴ/アン・ウィンゲート/アン・キャリー

 

製作/出演

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出演 ヴィオランテ・プラシド/フィリッポ・ティーミ

 

音楽 ヘルベルト・グレーネマイヤー
 

ラスト・ターゲット (字幕版)

ラスト・ターゲット (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

ウエスタン (映画) - Wikipedia

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登場する作品

食堂のテレビで流れていた映画 

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「デスノート Light up the NEW world」 2016

デスノート Light up the NEW world

★★☆☆☆

 

あらすじ

 人間界に存在する6冊のデスノートを巡る3人の男の物語。

 

感想

 シリーズとしては4作目なので、皆がその世界観を十分理解しているはずだという前提だからなのだろうが、映画の入り方がかなり雑。素っ気ない世界観の説明からのいきなりの本題。観客を十分に映画の世界観の中に引っ張り込む気があまりないように感じた。まるで愛想の悪い店のよう。

 

 そんなスタートで、いきなり東出昌大演じるデスノート対策班の主人公が、デスノートで人が死にまくる街を切羽詰まった表情で駆け回られても、特に恐怖も感じないし頑張れとも思わない。池松壮亮演じるLの後継者とされる探偵が、主人公とケンカ腰で話しているのを見ても、なんでこの人こんなにイキっているのだろうと不思議なだけだし、菅田将暉演じるキラの信奉者にしたところで、そんな人がいるのねと思うだけ。置き去りにされた観客はただ眺めるしかない。

 

 

 ストーリーも締まりがない。主要人物が三人いるからか、主人公対敵のじりじりとした一対一の対決というわけでもないし、三角関係で互いに影響を与え合うわけでもない。ただ三人の個別の物語が中途半端に描かれ、また互いが中途半端に絡むというだらだらとした展開になってしまっている。本当は、三人が一堂に会した時に一番盛り上がるようなプロットが理想だったはず。

 

 そして物語の一番重要なアイテム「デスノート」もあまり効果的には使われていない。もうほとんど出来る事はやり尽くしてしまったという事なのだろうが、今回はデスノートは「使う」ものではなく、「集める」ものになってしまっている。だったら、それはデスノートじゃなくてもいいのでは?なんならドラゴンボールでも成立するのでは?と思ってしまった。

 

 それにデスノートは、そこに名前を書かれた人が死ぬ、というもので、直接会って手を下すのが難しい刑務所内にいるような人物でも殺すことができる、というのが最大の特徴のはず。なのに今回はそんな使い方をされることはほとんどなく、目の前にいる人物に対して名前を書いて殺す、という使い方ばかり。それだったらどう考えても銃の方が効率的だ。

 

 迫りくる相手を前に必死で名前を書きつける姿はなかなか滑稽だった。なんなのだ、この本末転倒感は。きっとこれは銃で人を殺すという発想がない、つまり銃社会ではない日本人だから陥る過ちなのだろう。

 

 それから、なんの前振りもなく突然、孤立した主人公の前に捜査班のメンバーたちが現れて熱い絆を示したり、捜査班の女性がいきなり兄の恨みを晴らすと感情を爆発させたりと、こちらがポカンとなってしまうシーンが結構多かった。毎回、一瞬の間をおいて心の中でこだまする「いや知らんがな!」のツッコミに、一人で失笑というか苦笑をする羽目に。

 

 本人の中では積もり積もったものかもしれないが、こちらからしたらいきなりだからビックリするだけ。そういうのはちゃんと伏線を張っておいてくれないと。一般社会の人間関係では割とよくある話だが。

 

 最後の最後まで誰かに肩入れするでもなく、誰かに反感を覚えるでもなく、ただ皆さん必死に何かやってらっしゃるな、と傍観するだけの映画。

 

スタッフ/キャスト

監督 佐藤信介

 

原作 DEATH NOTE カラー版 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)


出演 東出昌大/池松壮亮/菅田将暉/藤井美菜/川栄李奈/青山草太/竹井亮介/大迫一平/金田明夫/戸田恵梨香/船越英一郎

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沢城みゆき(声)/松坂桃李(声)/中村獅童(声)
 

デスノート Light up the NEW world

デスノート Light up the NEW world

  • 発売日: 2017/04/05
  • メディア: Prime Video
 

デスノート (映画) - Wikipedia

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関連する作品

前作

L change the WorLd

L change the WorLd

  • 発売日: 2015/03/14
  • メディア: Prime Video
 

 

 

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「トレイン・ミッション」 2018

トレイン・ミッション(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 長年勤めた保険会社にクビを告げられた元刑事の男は、帰りの通勤電車で出会った見知らぬ女性の、大金をチラつかせた怪しい依頼に応じてしまう。

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感想

 大金につられ、見知らぬ女性の依頼に応じてしまった主人公。監視されて逃げることも出来ず、脅迫もされて、車内のある人物を探すという求めに応じざるを得なくなってしまう。

 

 しかし、なんども列車内を往復したり、目ぼしい人物に声をかけたりする主人公の孤軍奮闘ぶりを見ていると、元刑事とはいえ60歳の初老の男にそんな依頼するなよ、と思わないでもない。車内で敵と格闘する激しいアクションもあり、本当ならこの仕事は若者に頼むべき仕事だよなと思ってしまった。ただ終盤に明らかになるが、彼に依頼した理由はちゃんとあるのでストーリー的には間違っていないのだが。

 

 

 目ぼしい人物を絞っていくサスペンス感と程よい感じで差し込まれるアクションで、ダレることなくいい緊張感が続く。途中で乗客を一つの車両に集めるというのは、映画的に分かりやすくなって上手いアイデアだった。とはいえ、別の車両であんなに激しく暴れたら、さすがに他の乗客に気付かれるのでは、と思ってしまったが。

 

 目的の人物が見つかり電車も終点に近づいて、これで映画も終わりかと思っていたら、ここからさらなる展開が待ち受けていた。それは激しいアクションというよりもただの大事故といった方がいいような出来事から始まる。これでほぼ全員がほとんど怪我無く無事だったのはもう奇跡としか思えない。

 

 最後のクライマックスは、伏線が丁寧過ぎてバレバレだったのが残念だ。当然主人公も薄々は気づいているのだろうなと思っていたので、あまりに警戒心のない素直な行動に逆に驚いてしまった。ただ、他の乗客たちが身を挺して敵に立ちはだかる姿には胸が熱くなった。これは犯人の「善人ぶっても馬鹿を見るだけ」という言葉にも呼応するものだろう。

 

 エンディングを小粋に決めた後、路線図に見立てた洒落たエンドクレジットが流れる締めくくりだ。気分よく見終わることができた。細かい部分で色々引っかかる部分がある映画ではあるが、娯楽作品としては十分楽しめる。

 

スタッフ/キャスト

監督/製作総指揮 ジャウム・コレット=セラ

 

出演 リーアム・ニーソン/ヴェラ・ファーミガ/パトリック・ウィルソン/ジョナサン・バンクス/サム・ニール/エリザベス・マクガヴァン/アンディ・ナイマン/クララ・ラゴ/ローランド・ムーラー/フローレンス・ピュー/ディーン=チャールズ・チャップマン/コリン・マクファーレン/レティーシャ・ライト

 

音楽 ロケ・バニョス

 

トレイン・ミッション(字幕版)

トレイン・ミッション(字幕版)

  • 発売日: 2018/08/15
  • メディア: Prime Video
 

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登場する作品

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嵐が丘 (新潮文庫)

怒りの葡萄〔新訳版〕(上) (ハヤカワepi文庫)

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モンテ・クリスト伯 7冊美装ケースセット (岩波文庫) 

 

 

 

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「ヤングマスター 師弟出馬」 1980

ヤング・マスター/師弟出馬 (字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

  道場を出奔した兄弟子を探す弟弟子。

 

感想

 冒頭は敵対する道場との獅子舞での対決。正直、これがどういう競技なのだか良く分からず、楽しめなかった。台から落ちたらいけないとか、衣装が取れてしまってはいけない、というルールのようだが、それだと獅子らしく舞うことを放棄して、そっちに全力を傾けてしまいそうなものだが。プロレスのように、ロープに投げられたら跳ね返って戻って来ないといけない、というような「お約束」があるという事なのだろうか。

 

 前半はそんな獅子舞やちょっとしたアクションシーンがありながらも、ストーリー優先の、少しダルい展開。途中で主人公が勘違いされて、警察にとらえられそうになるのだが、その警察の一人に目をひん剥いたすごい顔芸の奴がいて、めちゃくちゃ気になってしまった。

 

 

 敵対する道場の経営者も口をひん曲げているし、昔の香港映画はこういう極端な顔芸の人が多い印象。遠くの観客までよく見えるようにわざと大げさにして見せる舞台の名残なのだろうか。大げさな顔芸のアップを見せられると若干ひいてしまう。

 

 中盤からは、ストーリー的に大事な場面も割愛してセリフで説明し、その分を怒涛のアクションシーンに費やしている。今見るとスピード感がなく、もっさりとしているように見えてしまうが、それでもコミカルさもあって、ジャッキ―らしいアクションに仕上がっている。特に布をスカート的にも闘牛士的にも使う場面は、アイデア満載で面白かった。

 

 ラストは悪役との対決で、かなりの長尺。しかし、その戦いのほとんどが一方的にボコボコにされるだけで、観ていてアドレナリンが出るというよりはただ辛かった。戦いの終盤に攻守交替して、今度は主人公が一方的に攻撃し決着がつく。

 

 この戦いは両者互角の時がなく、手に汗握って見守るという感じではなかった。やられっぱなしだった主人公がなぜ突然強くなったのかも良く分からない。火事場の馬鹿力的なものなのか。少しモヤっとした。

 

 それからこの映画で主人公は修行をするでもなく、最初から強い設定。それなら最初にそれを示すようなシーンがあれば良かったのにと思うのだが、まあでも、ジャッキーだから当然、という事なのだろう。 

  

スタッフ/キャスト

監督/原案/出演

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製作総指揮 レイモンド・チョウ

 

出演 ユン・ピョウ/ウェイ・ペイ/ウォン・インシク/シー・キエン
 

ヤング・マスター/師弟出馬 (字幕版)

ヤング・マスター/師弟出馬 (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

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「引き裂かれたカーテン」 1966

引き裂かれたカーテン (字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 東西冷戦下、学会へ向かう途中で西ドイツに亡命しようとしていたアメリカ人物理学者は、無理やり付いてきた婚約者を持て余す。

 

感想

 船でヨーロッパの学会に向かったポール・ニューマン演じる主人公。同行したジュリー・アンドリュース演じる婚約者との仲は睦まじいが、実は彼女の同行を拒んだのに無理やり付いてきたらしい。道中、何かを企んでいるらしい主人公は怪しげな行動を取っている。

 

 そんな主人公に不審を感じて、必死に彼を追う婚約者。そもそも強引についてきているわけだし、その後も先にアメリカに戻れと言っているのに、黙って東ドイツにまで付いてきたりして、主人公にとっては相当面倒くさい女になってしまっている。

 

 

 彼女にしてみれば主人公は婚約者なのに何も伝えられず、しかも亡命して東側に機密情報を持ち込むなんて祖国の裏切り者だし、その真意を問い質したかったのだろう。分からないでもない。でもその強情さが若干イライラさせられた。空気を読めよと。

 

 その後主人公の真意は明らかになるが、その途中で事件が起きてしまい苦しい立場におかれることになる。あとで振り返れば、この事件のきっかけとなった主人公らがドイツの片田舎で接触するという計画自体が失敗だった。

 

 目立たないようにという事でそうしたのだろうが、逆にそんな人のいない所で会えば逆に目立つし、見つかった時に言い訳もしづらい。普通に都会の雑踏の中で会うべきだった。そうすればその後はゆっくりと作戦を実行できたはずだ。

 

 ただそのおかげで、少しモヤモヤする前半とはうって変わって、後半は限られた時間の中でやり遂げばならないという緊迫感のある展開となった。一連の脱出シーンはハラハラさせられ、特に様々な事が起こるバスの中のシーンは良かった。

 

 しかし、この時代になっても逃亡兵による山賊みたいなのがいたり、涙ながらにアメリカに亡命したいと訴える老女を登場させたりと、共産国の負の側面を強調しているのが印象的だった。よく考えれば冷戦の真っただ中で作られているわけで、そう考えると別の意味での緊張感もある。ヒッチコックもプロパガンダというか忖度をするのだな、と思ったが、わりと彼は赤狩りに肯定的だったようだ。そして実際に、理想には程遠い共産国の現実が明らかになっていた時期なのかもしれない。

 

 ところでこの映画に婚約者の存在は必要だったかな、と一瞬思ったのだが、彼女を通して見たからこそ、序盤の主人公の行動にミステリーが生まれたわけだし、彼女がいるからロマンス的なことも出来た。そう考えると彼女は、映画を盛り上げるという意味では重要な役割を果たしていることになる。

 

 主人公たちが東ドイツに到着したときに登場する勘違いおばさんが、ちょっとした笑いを提供するその場だけのキャラクターかと思ったら、終盤に再登場して重要な役割を果たす。嫌な感じのキャラクターなのに、どこか憎めない所があって面白かった。いい仕事をしている。

 

 それから古い外国映画だと、登場人物の顔が覚えづらかったりするが、この映画では登場人物の顔が皆個性的で、簡単に覚えられたのも良かった。

 

スタッフ/キャスト

監督/製作

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出演

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ジュリー・アンドリュース/リラ・ケドロヴァ/タマラ・トゥマノワ

 

引き裂かれたカーテン (字幕版)

引き裂かれたカーテン (字幕版)

  • 発売日: 2014/02/02
  • メディア: Prime Video
 

引き裂かれたカーテン - Wikipedia

 

 

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「三度目の殺人」 2017

三度目の殺人

★★★★☆

 

あらすじ

 供述が二転三転する殺人犯の弁護を引き受けることになった弁護士。

 

感想

 主人公は真実や正義よりも、裁判を有利に進めることを重要視する弁護士。そんな彼が受け持つことになった依頼人は、供述が二転三転し、死刑になりたくないという必死さも感じられず、どうにも真意が読み取れない殺人犯だ。訝しく感じながらも、主人公は自身の信念に基づき、裁判の準備を進める。

 

 主人公が何度も犯人と接見を繰り返すうちに見えてくるのは、実は二人はよく似ているという事だ。生まれてこない方が良かった人間だっている、人間の運命なんて決まっている、報われない事ばかりだ、などと語る犯人に主人公は共感を示している。立場は違うが、見ているものは同じだ。面会室で左右対称に二人が向かい合う姿が印象的。

 

 

 そんな犯人に興味を示す主人公。いつの間にか裁判優先の信念は揺らぎ、犯人の見ている世界を見ようとするようになっている。次々と新しい事実が明らかになり、さらには犯人の主張の急変と目まぐるしく状況が変わる中、主人公はついに新たな決意を固める。

 

 被害者の娘が証言する日、雨の日の裁判をきっかけに事態は変わる。まるで雨がこれまでを洗い流して、リスタートを促しているかのようだ。犯人の要望に乗った主人公は、判決が下されて裁判が終了した日に、初めて犯人と直接握手を交わす。この二人が直接触れ合った瞬間に、主人公は彼の意図を理解したのかもしれない。

 

 裁判を終えて最初の面会で、いつもは単刀直入に裁判の話を始めていた主人公が、世間話を始める。目をしかめるほど面会室に光が溢れているのも何か象徴的だ。二人を隔てるアクリル板に主人公の顔が反射して、二人の顔が重なる。今や二人は左右対称ではなく、同じ場所から同じものを見ている。

 

 映画は、似た者同士の主人公と犯人の関係を描くだけでなく、そこに日本の司法の欺瞞も示している。裁判官・検察・弁護士と、同じ司法という船に乗る人たちが、正しい針路を取るよりも、難破しない事だけを考えて目的地も分からずにただ漂っている。

 

 映画の中で「裁く」「裁かない」という言葉が頻出するので、途中でゲシュタルト崩壊して「さばく?」って何だっけ?みたいに若干なってしまった。それからこれは本当に全く関係ないが、二人が面会室で顔を近づけて話をする白熱のシーンは、「ソーシャルディスタンス」とか「密」というワードが頭に浮かんできて、ちょっと困った。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/原案/編集

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出演 福山雅治 

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広瀬すず/斉藤由貴/吉田鋼太郎/満島真之介/松岡依都美/市川実日子/橋爪功

 

音楽 ルドヴィコ・エイナウディ

 

三度目の殺人

三度目の殺人

  • 発売日: 2018/03/07
  • メディア: Prime Video
 

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「キング・ホステージ」 2017

キング・ホステージ(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 かつては頼もしかったが今は荒れた生活を送る兄が誘拐されてしまい、その行方を探す弟。原題は「Arsenal 」。

 

感想

 ニコラス・ケイジが主演かと思っていたが違って、敵役だった。しかし、ふざけているのかと思うような胡散臭いキャラクターになっていて、相変わらず彼は面白い。分かっている。そして彼でないとしたら、主役はジョン・キューザックかと思ったのだがこれもまた違って、彼は何のために存在するのか分からないようなチョイ役で出ているだけだった。だがニコラス・ケイジと示し合わせたかのように、彼もまた無駄に怪しい格好をしていて、じわじわと笑えてくる。

 

 主人公はエイドリアン・グレニアーで、貧しい地区で兄弟二人だけで育ち、今は会社を経営をしている男を演じている。彼と昔は頼りになった兄、二人の絆を描いた物語が展開される。兄は定職もなく、怪しい商売に手を染めているようなのだが、兄弟仲は悪くない。二人で野球を見たり、弟の家に兄が招待されたりと何かと交流をしている。いい歳になっても仲の良い兄弟というのは、単純にいいなと思ってしまう。

 

 

 そんな兄が誘拐されて慌てる主人公。しかし、きっと弟の金を狙った兄の狂言に違いないと皆が疑っている。主人公の妻でさえ同調してしまうほどで兄が可哀そうになるが、皆がそういう事をしかねないと彼を見ているという事だ。だがただ一人、そんな疑いを微塵も持たず、必死で兄の行方を探す主人公。兄の取った言動も後ほど明らかになるのだが、二人の互いを思う気持ち、固い絆に胸が熱くなる。

 

 ただ、幼少期からの兄弟の絆の深さを示すような出来事があまり描かれていないので、なぜそこまで信頼しあっているのかがよく分からないのも事実。いくつか紹介されるエピソードもそんなにインパクトがなく、いまいちピンと来ない。ついでに弟がなんで武闘派な感じでガンガン行くのかもよく分からなかった。貧しい町では喧嘩したり銃を扱えたりする能力というのは標準装備で、それが無いと生き残れないという事なのか。

 

 そして誘拐事件についての描き方も今一つ。これはひとえに、敵役の見せ方が悪いからだろう。せっかくニコラス・ケイジが胡散臭さ満開の演技をしているのに、あんなに出番が少ないのはもったいない。もっと憎悪を煽るようなことをさせて、クライマックスに向けて気分を盛り上げて欲しかった。

 

 最後の対決シーンは、なんとなく「バッファロー66」を思い出した。確かこんなシーンがあったような気がするが、気のせいかもしれない。

バッファロー'66 [DVD]

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  • 発売日: 2000/03/17
  • メディア: DVD
 

 

スタッフ/キャスト

監督 スティーヴン・C・ミラー

 

出演 ニコラス・ケイジ/ジョン・キューザック/エイドリアン・グレニアー/ジョナサン・シェック/クリストファー・コッポラ

 

キング・ホステージ(字幕版)

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  • 発売日: 2019/10/01
  • メディア: Prime Video
 

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「at Home アットホーム」 2015

at Home

★★☆☆☆

 

あらすじ

 詐欺や窃盗で生計を立てる一家。ある日、母親が詐欺に失敗して、一家は窮地に立たされる。

 

感想

 父親が一日の窃盗の成果を発表したり、家族で母親の結婚詐欺の設定を考えたりするような一家。それだけでも普通ではないのに、家族が皆、妙に仲が良くて違和感がある。そんな奇妙な家族の過去の出来事が回想され、その理由が少しずつ明らかにされていく。

 

 ただ、次男に関するエピソードの一端は映画冒頭で示されているので、そんなに驚かす気はなかったのかもしれない。この次男に関する仄めかしだけで、だいたい事情を察することは出来るわけだが、なぜかこの後、家族一人一人のバックボーンを丁寧に描き出して、めちゃくちゃ冗長に感じてしまった。

 

 

 最初の一人の話で他の人の物語も大体想像できるので、わざわざ全員分を描く必要はないだろう。そんなことされてもただ気が滅入るだけ。家族とは何か、血とは何か、と問いかけたい映画なのだろうから、そんな事より今の家族の様子をしっかり描くべきだった。

 

 母親が詐欺に失敗し、相手に人質に取られてしまった事で、家族に危機が訪れるのだが、この一連の出来事の描き方が全然なっていない。そもそも相手が少し席を外しただけで電話をかけて仕事の経過報告をし、それを戻ってきた相手に盗み聞きされてバレるなんて素人すぎる。気が緩み過ぎだ。

 

 騙された相手が急にヒールになるのも違和感がある。そもそも気づいた瞬間に相手を監禁して身代金を要求するような男が、そんな結婚詐欺に引っかかるとは思えないのだが。ところで、この映画は松雪泰子演じる母親が村本大輔、千原せいじといった吉本芸人演じる男たちにいたぶられるシーンが多いのだが、彼女は何か吉本興業を怒らせるようなことをしてしまったのだろうかと、どうでもいい何の根拠もない勝手な想像をしてしまった。もしくは監督がこれを撮りたかったのか。

吉本興業史 (角川新書)

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  • 作者:竹中 功
  • 発売日: 2020/06/10
  • メディア: Kindle版
 

  

 さらに身代金と人質の交換をするという危険な現場に幼い子供を含む家族連れで行ったり、すぐに逃げる必要があるかもしれないのに、車を行き止まりに頭から突っ込んだ状態で駐車したりなど、のんきか!とツッコみたくなるシーンが満載だった。相手も1対2の状況で大した武器も持っていないくせに、なぜか強気という不思議。

【極!合本シリーズ】 やるっきゃ騎士1巻

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 そして想定外の事が起こり危機的な状況が訪れるのだが、長男が機転を利かして正当防衛に見せかけようとする。てっきり長男が犠牲になる気なのかと思っていたら、当然のように父親が犠牲になる前提にしていて、え?と声が出てしまった。しかもせっかち。いやいや、一旦落ち着いてよく考えようよと宥めたくなるくらい電光石火。この辺りは意外な展開すぎて爆笑してしまった。

 

 そして最後は涙涙の感動シーン、という事にしたかったのだろうが、行き場のない人たちが集まっているわけだから、でしょうね、という感想しかない結末。逆に離散していた方が驚く。

 

 なんとなく「万引き家族」を思い起こさせるような内容の映画。あの映画でわざわざ描かなくても分かるだろうと描かなかった部分をこの映画ではわざわざ描いているので、あの映画のあとでなんでそんな事したのだろうと訝しんでしまったのだが、この映画の公開の方が先だったので安心した。

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スタッフ/キャスト

監督 蝶野博

 

原作 at Home (角川文庫)


製作 中村直史/野崎研一郎/神夏磯秀/三宅はるえ

 

製作総指揮 奥山和由

 

出演 竹野内豊

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坂口健太郎/黒島結菜/池田優斗/村本大輔/千原せいじ/板尾創路

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音楽 村松崇継

 

at Home

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  • 発売日: 2019/01/05
  • メディア: Prime Video
 

at Home アットホーム - Wikipedia

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「ヒズ・ガール・フライデー」 1940

ヒズ・ガール・フライデー(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 かつての上司で元夫である新聞社の編集長に結婚の挨拶にやってきた女は、強引に取材に行かされることになる。

 

 クェンティン・タランティーノ監督が名作の一つに挙げた作品。

jp.sputniknews.com

 

感想

 古い白黒映画ということで、のどかなテンポの映画だろうと思い込んで見始めたので、登場人物たちが早口でまくし立てるテンポの速い展開にかなり面食らった。「スクリューボール・コメディ」というコメディ映画のジャンルで、1930年代から40年代に流行ったスタイルのようだ。

スクリューボール・コメディ - Wikipedia

 

  映画のテンポに慣れることなく呆気に取られている間に、そのままエンディングを迎えてしまったという感じ。最初からちゃんとそういう映画だと気を引き締めて臨まないと完全に置いていかれる。集中力なくボーッとしていては駄目なタイプの映画だ。

 

 そして、基本的にはセリフで笑わせるタイプのコメディ映画。早口でまくし立てるセリフは、おそらく日本語字幕では完全にカバーされておらず、そんなに笑えない。ちゃんと英語を聞き取れるか、日本語吹き替えで観ないと厳しいのかもしれない。なんとなく、ここは笑うところなのだろうなという事は分かるのだが、当時は劇場で爆笑の渦だったのだろうか。

 

 

 おそらくそのセリフの応酬でバンバンと笑えていたなら気にならないのだろうが、ただ話の筋を追うのが精いっぱいの状況では、同じ場所で延々とまくし立てる人たちを見ているのは若干辛かった。ほとんど動きがなく、絵替わりもないので段々とイライラしてくる。話を聞いているうちにどんどん展開も変わっていくので、忙しない。

 

 ケーリー・グラント演じる編集者が、元妻の主人公を引き留めようとする強引なやり方や、彼をはじめとする記者たちの取材のためなら何でもやるという手法に引いてしまう部分が多々あった。記事を書くことで死刑を止めさせようともしていて、今見たら過剰反応して騒ぐ人が多そうだ。

 

 しかし考えてみれば、今から80年前の、太平洋戦争がまだ始まる前に作られた1940年の映画。そんな時代に、こんな白黒映画のイメージを覆すような、テンポの速い映画が作られていたということが凄い。

 

スタッフ/キャスト

監督/製作 ハワード・ホークス

 

原作 Front Page

 

出演 ケーリー・グラント/ロザリンド・ラッセル/ラルフ・ベラミー/アルマ・クルーガー/ジーン・ロックハート/アブナー・ビーバーマン/クリフ・エドワーズ/ビリー・ギルバート

 

ヒズ・ガール・フライデー - Wikipedia

 

 

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  • 発売日: 2009/09/26
  • メディア: DVD
 

 

 

 

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「南瓜とマヨネーズ」 2017

南瓜とマヨネーズ

★★★☆☆

 

あらすじ

  ミュージシャンを目指す男のために、夜の店で働き始めた女。

 

感想

 ほとんど活動もせず、くすぶっているミュージシャンを目指す彼氏のために、夜の店で働き始める臼田あさ美演じる主人公。彼氏の音楽活動の為だったら、どんなことでもして応援するつもりでいる。でもこれは、彼氏が好きなのではなく、彼氏のために頑張る自分が好き、という典型だ。

 

 だからそんな男のために夜の店で働いたり、体を売ったりしてボロボロになればなるほど、本人は幸せを実感することになる。男がその頑張りに応えてくれないと腹が立ったりはするわけだが、こういう女性は世の中に結構いる。別に本人がそれで幸せならそれでいいし、男にとってもありがたい存在ではある。

 

 

 ただそんな関係はいつまでも続かない。男の夢が必ずしも叶うわけでもないし、いつまでも女に期待を抱かせ続けることも難しいだろう。男は男で将来に不安を感じるし、女に申し訳ないと思う気持ちもある。そこで現実的に生きようとしたら、人と同じじゃないあなたが好きだったのに、と責められるなんて、男としてはちょっとたまらない。

 

 主人公は、偶然再会した昔の男と会うようになる。この昔の男を演じるオダギリジョーのモテキャラぶりが、腹立たしさを覚えるほど自然だ。こういう事が出来る男というのは才能だよなと感心してしまった。昔の男は、モテキャラのらしさ全開で、主人公を振り回す。

 

 結局主人公は、男のために一生懸命応援したり、振り回されたりするのが好きなのだろう。自分が自分ではなくなる瞬間を求めている。きっとそんな主人公に、多くの女性が共感するのだろうなという気がしている。二人の男が出くわすシーンで、笑いが止まらなくなっている主人公が印象的だった。

 

 最後は、主人公なりにそんな状況を脱することができて、悲しみはあるが前向きになれる結末。ただ、自分のもとを巣立っていったな、尽くしたな、と気持ちよくなっていそうでもある。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 冨永昌敬

 

原作 南瓜とマヨネーズ (TOKYO NEWS BOOKS)

 

出演 臼田あさ美/太賀/浅香航大/若葉竜也/大友律/清水くるみ/岡田サリオ/光石研/オダギリジョー

 

音楽 やくしまるえつこ

 

撮影 月永雄太

 

南瓜とマヨネーズ - Wikipedia

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