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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「11ミリオン・ジョブ」 2013

11ミリオン・ジョブ [DVD]

★★★☆☆

 

あらすじ

 警備会社で働き始めた青年は、会社の杜撰な管理体制に気づき、保管されている大金を奪おうと企む。1982年に実際にアメリカで起きた1100万ドル強奪事件を題材にした作品。原題は「Empire State」。

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感想

 警官を目指していたような若者が、勤め先の警備会社のブラックぶりと杜撰な管理体制を目の当たりにして、保管する大金を奪おうと企む物語だ。そこまでは分かるのだが、その後が何もかもがグダグダで全然面白くなっていかないのが辛い。

 

 完璧な計画の元で行なわれる鮮やかな犯行の手口が見られるわけでもなく、犯人を追う警察とのヒリヒリするようなやり取りが見られるわけでもなく、行き当たりばったりでやってみたらそこそこうまくいってしまった物語を観させられただけだ。そもそもの警備会社の杜撰な体制やFBIの見当違いの捜査方針を含め、当時のアメリカ史上最高額の現金強奪事件の裏側はこんなにもグダグダだったのか、という意味での驚きはあるが。

 

 

 そんな事件の何をこの映画が描きたかったのか、それが全然見えてこない。スリリングな犯行なのか、家族の絆なのか、友情なのか、それともズッコケコメディだったのか。何もかもが中途半端だ。きっとスティーブン・ソダーバーグやコーエン兄弟だったら、この題材をもっと面白く料理してみせたのだろうなという確信はある。事件がグダグダだったからと言ってなにも映画までグダグダにする必要はなかった。

 

 元々94分という短い映画だが、それでもダレることなく最後まで引っ張るテンションを保っていたのは良かった。ただ、次に何が起きるのだ?という期待はすべて失望に変えられてしまう。

 

 そしてこの映画で一番ダメだったところは、重要な役割を演じるマイケル・アンガラノ演じる主人公の友人のキャラクターだろう。お喋りで口が軽く、身勝手で頭悪そうですべてを台無しにしてしまう嫌悪感しかないキャラクターだ。彼がもしそうではなくて、駄目な奴だけどどこか憎めない、みたいなキャラだったら、この映画の印象はだいぶ変わったような気がする。

 

スタッフ/キャスト

監督 ディート・モンティエル

 

出演 リアム・ヘムズワース/ドウェイン・ジョンソン/エマ・ロバーツ/マイケル・アンガラノ/ポール・ベン=ヴィクター/クリス・ディアマントポロス/ニッキー・リード/マイケル・リスポリ

 

音楽 デヴィッド・ウィットマン

 

11ミリオン・ジョブ [DVD]

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  • リアム・ヘムズワース
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11ミリオン・ジョブ - Wikipedia

11ミリオン・ジョブ 【字幕版】 | 映画 | 無料動画GYAO!

 

 

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「殺人遊戯」 1978

殺人遊戯

★★★★☆

 

あらすじ

 敵対する暴力団の双方から殺しの依頼を受けた凄腕の殺し屋。遊戯シリーズ第2作目。92分。

 

感想

 敵対する暴力団の間を行ったり来たりする主人公。どこか黒澤明の「用心棒」を想起させるようなプロットだ。だが細かいストーリーはかなり雑で、なぜ主人公が二つの組織を壊滅させようと思うに至ったかなどはほぼ描かれていない。でもそんな細かい部分をとやかく言ってもしょうがないと思わせるような、単純に楽しめるアクション娯楽作品に仕上がっている。

用心棒

用心棒

  • 三船敏郎
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 しかし元々90分と短い作品ではあるが、ストーリーはシンプルでセリフも少ないのに全然冗長に感じないのは不思議だなと観ながら思っていたのだが、もしかしたら主人公の松田優作の顔の濃さがそれに貢献しているのかもしれない。彼の独特な髪型だったりサングラスだったりといった情報量の多い顔のクドさが、時間経過の遅さを感じさせないような働きをしているような気がする。他の映画でも、主人公が長髪だったり無精ひげだったりのむさくるしい顔をしている事はよくあるが、キャラづくりの他にもそういう事も考慮してやっているのかもしれない。

 

 

 粗いプロットのストーリーの中でも、瀕死の主人公が恋人でもない顔見知りなだけの女の元を訪ねたのはすごいなと思ってしまった。普通、死にそうなら間違いのない自宅に戻って養生するのが一番だと考えそうなものなのに、そこで敢えて気になっていた女に助けを求める。ハードボイルドだ。そしてもちろん女は彼を招き入れて看護してくれるわけだが、さらにはこれも当然なのか、ラブシーンへ発展する。ここで主役の歌う主題歌が流れるというベタな演出がされるのだが、意外とこれがなかなか良かった。今まで気にしたことがなかったが、歌手・松田優作も悪くない。

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 ラストの一人生き残った女と対峙するシーンは、ハードボイル感が溢れていてカッコ良く、そんなクライマックスの後で今度は一転、コミカルにおどけた姿を見せるエンディング。松田優作の色んな面を見ることが出来る彼の魅力が詰まった作品になっている。

 

スタッフ/キャスト

監督 村川透

 

出演 松田優作/中島ゆたか/阿藤海/佐藤慶/佐藤蛾次郎/山西道広/竹田かほり/絵沢萠子

 

音楽 大野雄二

 

殺人遊戯

殺人遊戯

  • 松田優作
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関連する作品

前作 シリーズ第1作

 

次作 シリーズ第3作

処刑遊戯

処刑遊戯

  • 松田優作
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「ミッション」 1986

ミッション(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

  1740年代、南米の滝の上の村で布教活動を行うイエズス会の宣教師たち。カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作。

 

感想

 異国の異文化の原住民たちが暮らす村に布教活動のためにやって来た宣教師たちが、現地の植民地社会や本国の意向に翻弄されながらも懸命に活動を続けようとする姿が描かれていく。現地の風景や原住民たちの風俗習慣などといった映像は異国情緒があり興味深いが、この映画で描こうとしていること自体にはかなり欺瞞を感じてしまって素直に楽しめない。

 

 いくら彼らが板挟みで辛いですわーと言ったところで、別にキリスト教徒でもない人間から見れば、彼らだって異国の植民地化に加担する一味でしかない。よく言われることだが、布教活動をする彼らがまず先鞭をつけ、その後に国と商人が進出するという植民地化の方法論が出来上がってしまっている。彼らはそれが本望ではないと思っていたのかもしれないが、それでも都合が良いからとそれを黙認していたわけで、すっとぼけて被害者面されても困る。

 

 

 宣教師たちと原住民たちの交流も本当であれば心温まる場面となるのかもしれないが、そういった背景があるので全然別のものに見えてしまう。たまたま出会った原住民たちの中に入って彼らのやり方に従うのではなく、最初から彼らのやり方を変えるという目的で彼らの中に入っていくわけだから、基本的には侵略と変わらない。それを善意のつもりでやっているのだからたちが悪い。

 

 一応は、自分たちがやって来たことは彼らにとって幸福だったのだろうか?と疑問を投げかけてみたり、イエズス会側の理不尽な言動を描いてみせたりはしているが、全体としては善いことをしているという前提のもとで描いているので、そういった何もかもがあまりにも浅すぎるように感じた。もっと深く見つめ直すべきだろうと言いたくなる。結局はポジショントーク。自分たちは殉教者となれて気持ち良いのかもしれないが、その道連れにされてしまった原住民たちは気の毒としか言いようがない。

 

 映画はずっと政治的軋轢の中で苦労する彼らの様子が描かれていくのだが、終盤になって突然、アクション映画のような雰囲気が出てくる。しかしそれも呆気なく終焉を迎えてしまって「七人の侍」みたいに描いてくれたら盛り上がったのにと思ってしまったが、そんな事をしたら映画の趣旨がブレてしまうのでやらないのは当たり前か。それはいいとして、ロバート・デ・ニーロ演じる元奴隷商人があっさりと宣教師になってしまったり、終盤に他の宣教師たちが上司の命令を簡単に無視してしまったりと、そこはもっと苦悩する姿などを丁寧に描くべきでは?と思うような箇所は多く、後から振り返るといろいろ気になってしまった。

七人の侍

七人の侍

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スタッフ/キャスト

監督 ローランド・ジョフィ

 

脚本 ロバート・ボルト


出演

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ジェレミー・アイアンズ/リーアム・ニーソン/エイダン・クイン

 

音楽    エンニオ・モリコーネ

 

撮影    クリス・メンゲス

 

ミッション(字幕版)

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  • ロバート・デ・ニーロ
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「家族」 1970

家族

★★★★☆

 

あらすじ

 長崎の小さな島を出て、北海道の開拓村に移住する事にした一家。

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 民子3部作の第1作目。キネマ旬報ベスト・ワン作品。

 

感想

 一家が島を出るシーンから物語が始まる。移住を決意し島を出ることになった経緯が描かれた後は、すぐに北海道での開拓生活が始まると思っていたのだがそうではなく、この長崎の島から北海道の開拓村まで移動する過程が描かれる物語だった。飛行機を使えば1日もかからず到着してしまいそうだが、調べてみると今でも陸路なら1日半はかかる行程で、当時は新幹線が新大阪―東京間しかなかったので3日以上はかかる旅となる。確かに、これだけで十分物語になりそうな移動だ。

 

 しかし一家が旅をする姿を見ているだけで、切なくなってしまうのはなぜなのだろう。列車などの公共交通機関を使った旅だと、旅先で「家」のような役割を果たす自家用車などもなく、はぐれてしまえば簡単に離れ離れになってしまう家族というものの脆さがより強く感じられるからだろうか。そして大きな世間の波にさらされてみれば、家族なんて心細くて頼りない、ちっぽけな存在だと気づかされるからだろうか。

 

 ここで描かれるのは、旅慣れない家族が全財産を持って移住するための旅なので特殊ではある。だが案外と家族旅行というものは、家族の脆さや心許なさをはっきりと露呈させてしまうような、切なく危ういものなのかもしれない。

 

 

 旅の途中でそれぞれがそれぞれの家族の思い出を振り返る。電車に乗って何をするわけでもなく過ごす時間は、ついそんな忘れていたようなことまで思い出してしまう時間だ。家族の思い出を胸に、それぞれがそれぞれを思いやって道中を過ごしている。積み重ねてきたそんな家族の歴史が、家族を家族たらしめているともいえる。

 

 想像以上に失うものが多いハードな旅なのだが、そんな中で見ている者の心を慰めてくれるのは、幼い子供ではなく、笠智衆演じる祖父なのが面白い。親族に邪魔者扱いされて子犬のように濡れた目で悲しそうな顔をしたり、重苦しい空気を和ませるために敢えておどけて見せたりと、一家のマスコット的存在になっている。良いキャラクターだ。そしてもちろん彼は彼で、家族のことを真剣に考えている。

 

 途中の大阪で当時開催していた大阪万博の様子が見られるが、その他にも日本に勢いがあった頃の各地の風景が映し出されていて、それだけでも見る価値があった。

 

 また、「男はつらいよ」でお馴染みのメンバーたちがチョイ役で出演していることもこの映画の見どころの一つとなっている。中でも初期の山田映画によく出ていたハナ肇が印象的だった。大都会東京で活躍する都会人役で出演している。多分一番素に近いのだろうが、これまで見た中で一番カッコよかった。こういうギャップがあるからコメディアンはモテるのだろうなと実感させられる。

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スタッフ/キャスト

監督/脚本

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脚本 宮崎晃

 

出演 倍賞千恵子/井川比佐志

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梅野泰靖/前田吟/太宰久雄/花沢徳衛/ハナ肇/犬塚弘/桜井センリ/石橋エータロー/安田伸/三崎千恵子/森川信/塚本信夫/谷よしの

 

家族

家族

  • 倍賞 千恵子
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関連する作品

民子3部作

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「モール・ラッツ」 1995

モール・ラッツ (字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 共に恋人にフラれた二人の青年は、憂さ晴らしにショッピングモールに出かける。ヴュー・アスキューニバースの映画シリーズの第2作目。

 

感想

 ショッピングモールを舞台に繰り広げられるコメディ。めちゃくちゃ面白いわけではないが、全然面白くないわけでもない微妙なラインだ。いわゆるオタクの青年たちの話なので、彼らの好きそうなものに詳しい人ならより楽しめるのかもしれない。なぜかマーベル・コミックのスタン・リーもノリノリで映画に出ているし。ただ音楽も悪くないので、何も考えず気楽に観るには悪くない映画だ。

 

 主人公は二人の若者。そのうちの一人、ジェイソン・リーはいいキャラクターをしているなと思っていたのだが、当時はプロのスケートボーダーだったらしい。演技のプロでもないのに、簡単にこういうことをやってのける人がいるというのは何なのだろう。その他、まだ売れる前のベン・アフレックも嫌な奴の役で出ている。彼はアカデミー脚本賞受賞者などの余計な情報を抜きにして客観的に見れば、本来はこういう役が一番似合うキャラのような気がする。めちゃくちゃカッコいいというほどではない男前。男前ばかりの映画の中で見たら、どこにでもいそうな普通の兄ちゃんに見える。

 

 

 それから、ビバリーヒルズ高校白書で有名なシャナン・ドハーティが出ているのも嬉しい。彼女はなんだかんだでやっぱり華がある。途中で「ブレンダ?」と声をかけられるシーンがあって、ニヤリとしてしまった。そう言われて彼女が眉をひそめて嫌そうな顔をするのも面白い。

 

 アメリカのショッピングモールにはだいたいコミックの専門店があって、田舎のオタクが足繁く通う場所になっているというのを聞いたことがあるが、そう考えるとショッピングモールは地方のカルチャーを担っている部分があると言えるのかもしれない。日本だとヴィレッジヴァンガードみたいなものか。今の日本だとマイルドヤンキーが集う場所と言われたりもしているので、各国で同じように田舎のショッピングモールだけで完結する物語を作ったら、それぞれの国の特色が表れて面白いかもしれない。でも大きくまとめれば、結局どこも田舎のマイルドヤンキーが集う場所だよね、となるのかもしれないが。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/出演 ケヴィン・スミス

 

出演 ジェイソン・リー/ジェレミー・ロンドン/シャナン・ドハーティー/クレア・フォーラニ/ベン・アフレック/ジェイソン・ミューズ/ジョーイ・ローレン・アダムス/イーサン・サプリー/スタン・リー/マイケル・ルーカー/プリシラ・バーンズ/ウォルター・フラナガン/スヴェン=オーレ・トールセン

 

音楽 アイラ・ニューボーン

 

モール・ラッツ (字幕版)

モール・ラッツ (字幕版)

  • ジェイソン・リー
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関連する作品

前作 ヴュー・アスキューニバースの映画シリーズの1作目

クラークス (字幕版)

クラークス (字幕版)

  • リサ・スプーノア
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次作 ヴュー・アスキューニバースの映画シリーズの3作目

 

 

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「ヒキタさん! ご懐妊ですよ」 2019

ヒキタさん! ご懐妊ですよ

★★★☆☆

 

あらすじ

 その気のなかった年の差夫婦が、ふとしたきっかけで子供を持つことを決意し、妊活を始める。

 

感想

 コミカルに爽やかに描いてはいるが、「妊活」がテーマなだけにやはりどこかに重苦しさがある。不妊は大抵どちらか片方に原因があるので、そのどちらか一方が責任を強く感じて落ち込むこともあるだろうし、子供を持つことに対する想いに温度差があって夫婦間に亀裂が入ることもある。それに単純に、互いに努力しているのにそれでも妊娠しないという辛い状況が続くわけだから、どうしたって重苦しくなってしまうのは仕方がないと言えるだろう。

 

 年の差夫婦が一つの目標に向かって互いに励まし合う姿が描かれて、心温まる良い物語だと思うのだが、夫婦が妻の両親に妊活開始を報告に行くシーンは、なんでそんなことをする必要があるのかがよく分からず意味不明で戸惑った。しかもその報告に対して父親は娘を厳しく叱るような態度。夫婦間の問題を報告したり、それにとやかく意見していることがグロテスクに感じて気持ち悪い。父親役の伊東四朗と娘役の北川景子の年齢差を考えると、てっきり父親も妊活で辛い思いをしたからという背景でもあるのだろうと思っていたが、単純に松重豊演じる娘婿がただただ嫌いなだけだった。この一連のくだりは何を意味していたのか訝しんでしまうが、妊活は周囲の人々のサポートが必要だ、とでも言いたかったのだろうか。

 

 

 それに意外とクリニックの医師がほとんど何の助言もしてくれなかったことも気になった。主人公が必死に健康な精子のために何をすればいいのか訊ねているのに、なにも答えずただ微笑を浮かべているだけ。その後主人公が自分でインターネットで調べて、アルコールやサウナ通いを止めたりしていたが、ザクロの写真を飾るとかの民間療法的なものは無理としても、せめて医学的根拠のあるアドバイスはしてやれよと思ってしまった。これは取り乱す主人公と冷静な医者という対比で笑わせようとしたのかもしれないが、医者に対する不信感が募ってしまった。

 

 そしてさらに言えば、主人公の妊活に対する情熱は、子供が欲しいというよりも、懐妊するというミッションを達成するためのもの、自分が子供を作れる人間であるということを証明するためのもの、という風に、手段が目的化してしまっているように感じられるのだが、子供を持つ理由なんて人それぞれなので、それはとやかく言うところではないのだろう。将来的に子供が欲しいと思っているカップルには、心構えとして不妊治療の実態を知っておくのに役に立ちそうな映画。なんだかんだで重苦しかった映画の最後は、せっかくなので赤ちゃんの顔を見せて終わって欲しいような気がしていたが、それはまた別の話、とでもいうように、潔く終わるエンディングは好感が持てた。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 細川徹

 

原作 「ヒキタさん! ご懐妊ですよ」 男45歳・不妊治療はじめました (光文社新書)


出演 松重豊/北川景子/皆川猿時/河野安郎/原田千枝子/山中崇/濱田岳/伊東四朗

 

「ヒキタさん! ご懐妊ですよ」男45歳・不妊治療はじめました - Wikipedia

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「マシニスト」 2004

マシニスト (字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 不眠症の機械工の前に謎の男が現れ、それ以降奇妙な出来事が起こるようになる。

 

感想

 不眠症の主人公を演じるクリスチャン・ベールのガリガリに痩せこけた姿がなかなかショッキング。そのヤバさだけで映画に惹きつけられてしまうが、極端な体重の増減をくり返しやっているとそのうち死んでしまいそうな気がして怖いので、あまりこういうのを役者魂と持て囃すのはやめたいところ。そういうのはCGや特殊メイクでやってもらって、後は演技力でカバーすればいい。

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 主人公がなぜ不眠症になったのか、そして彼がその不眠症に苦しむ様子が描かれていく映画なのかと思っていたのだが、あまりメインでそのことは描かれず意外だった。本人が眠れなくて苦しむ様子はほぼ無いし、周囲も一応痩せすぎだと指摘することはあるが基本的にはそんなには気にしていない様子。もはやこの状態が普通で、日常の見慣れた光景として扱われている。実はこれが映画の結末につながってくるので敢えて描いていなかったということが後で分かるのだが、それでもやっぱり無視できない気になる所なので、違和感なく観られるように一応の建前上の説明くらいは欲しかった。

 

 

 ある日、謎の男が現れ、それから周辺で奇妙な出来事が起こるようになった主人公は、その男の正体を突き止めようとする。このあたりの一連の出来事は、色々と意味深で興味を掻き立てられた。映像が美しいのも良く、よく分からないなりにもついつい観てしまう魅力がある。途中で主人公が訳あって何とか車に轢かれようとするところなどは、どこかユーモラスで面白くもあった。

 

 そしてついに明らかになる真実。驚くというよりも、なるほどそういう事ねとうなずかされるような感じだった。それが分かるとそれまでの奇妙な出来事にも説明がつく。ただそれだったら、それらはもうちょっとリアリティのある描き方をした方が良かったのでは?という気がしないでもない。なんでもアリだったわけだから。それらは幻想感が強く描かれてしまっていたので、ああこれは主人公がちょっとおかしいのだなという事には既に気づいてしまっていた。だから真実が明らかになっても驚くのではなく、納得したわけで。元々これを狙っていたのかもしれないが、それよりも、そうだったのか!と驚きたかったなと言うのはある。

 

スタッフ/キャスト

監督 ブラッド・アンダーソン

 

出演 クリスチャン・ベール/ジェニファー・ジェイソン・リー/アイタナ・サンチェス=ギヨン/ジョン・シャリアン/マイケル・アイアンサイド/ラリー・ギリアード・Jr/レグ・E・キャシー

 

撮影 シャビ・ヒメネス

 

マシニスト (字幕版)

マシニスト (字幕版)

  • クリスチャン・ベール
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登場する作品

白痴1 (光文社古典新訳文庫)

 

 

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「徳川の女帝 大奥」 1988

徳川の女帝 大奥

★★★☆☆

 

あらすじ

 江戸時代、11代将軍・家斉の治世。出世を狙う男の養女として、大奥に送り込まれた女。

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感想

 大奥に入った主人公が、養父の出世のために将軍に気に入られようと、女たちの世界で奮闘する様子が描かれていく。想像していたような女同士の足の引っ張り合いも勿論ちゃんと描かれているが、案外とあっさりとしたものだ。嫌がらせをされ、犯人も大体察しがつくのに、相手に詰め寄りバチバチの戦いを繰り広げるのではなく、泣き寝入りをして有耶無耶のままにしてしまう。もうちょっとドロドロとした戦いが見たかった。

 

 そしてついに将軍に気に入られ、念願叶った主人公の増長ぶりも控えめだ。元々バチバチにやり合っていたわけではないので仕方がない部分もあるが、ライバルたちが地団太踏んで悔しがるようなことをして欲しかった。

 

 ただ、どうせ将軍はそのうち心変わりするから、あの女が得意でいられるのもそれまでだ、という周囲の冷めた態度があった事も大きい。若手はピリついていたが、それに対してベテランは大きく構えていたのが印象的だ。やくざ映画でもよく見られる光景だが、同じような光景をデジャヴのように何度も見てきた経験豊富な年長者ならではの達観なのだろう。

 

 

 おとなしめの描写が多かった映画の中で、唯一主人公がギラギラしていたのは、出産を終えて、離脱中に大きく勢力図が変わった大奥に復帰したときだ。だがこの時に潰しに行った相手が、自分の上司と妊娠中の同僚だったのは、そこじゃない感が大きかった。なぜそこを潰せば再び将軍の寵愛を取り戻せると考えたのかがよく分からない。戦う相手は現役バリバリの同僚たちだったと思うのだが。なんだか全体的に力を入れて描く所が間違っているように感じてしまう映画だった。

 

 それから内容とあまり関係はないのだが、養父が江戸城中で切腹しようとするシーンで、たくさんあるふすまの中の一つだけが、模様となっていた葵の御紋が逆さまになっているのに気づいてしまって、めちゃくちゃ気になってしまった。そんな事よりもまず、そのふすまを作った職人が切腹ものだろう、と思ってしまって仕方がなかった。もしかしたら、敢えて家紋を逆さにする風習があったのかもしれないが。

 

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 関本郁夫

 

脚本 高山由紀子/志村正浩

 

出演 竹井みどり/西川峰子/吉原緑里/畑中葉子/浜田晃/成田三樹夫/夏八木勲

 

徳川の女帝 大奥

徳川の女帝 大奥

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登場する人物

専行院(お美代)/広大院(茂子)/徳川家斉/中野清茂

 

 

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「THE INFORMER/三秒間の死角」 2019

THE INFORMER/三秒間の死角(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 FBIに協力することで仮釈放されていた元軍人の男は、潜入捜査官の殺人現場に居合わせた事でNY市警らに目を付けられ、危険な立場に立たされる。イギリス映画。

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感想

 FBIに協力するも、別件でNY市警に目を付けられてしまった主人公。マフィアのボスには商売がやりにくくなったと責められ、FBIには弱みにつけこまれてさらなる危険な協力を求められる散々な事態に。

 

 しかしFBIのやってることはヤクザの手口と何も変わらない。一度関係を持ってしまったらもはや手を切ることは出来ず、ズブズブになるまで関係を深めることになってしまう。しかも相手は公権力だから、他に助けを求める場所がないのがさらにたちが悪い。出来ることなら近づきたくない組織だ。

 

 そんな中でも主人公は、身を守るためにあらゆる手段を講じて対抗しようとする。このあたりは彼がそこらのただのチンピラではなく、ちゃんと訓練を受けた元軍人だからこそできることなのだろう。そして主人公がそうやって必死に先を読み、なんとか家族を守ろうとしているのに、全くそれに応えてくれない妻がもどかしい。全然夫のいう事を聞かず、事あるごとに相手の手の内に落ちている。気がつけばいつも相手の懐にお惚けフェイスでいる妻と、それを見て一瞬、マジか、と驚く主人公。これを何度かくり返しで見ていたら、ちょっと面白くなってきた。

 

 

 色々あって主人公は刑務所内の潜入捜査を依頼され、再度服役することになる。そして、そこでNY市警の追及を恐れたFBIに見捨てられたことを知る。捜査のためとはいえ刑務所に戻るだけでも相当しんどいのに、見捨てられて普通に20年ほど服役することになるとか地獄過ぎる。これは潜入捜査官にいつも付きまとう怖さだ。自分を潜入捜査官だと認めてくれる人がいなくなれば、途端に単なるマフィアや服役中の犯罪者でしかなくなってしまう。

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 FBIに見捨てられ、NY市警には目を付けられ、自分の属していたマフィアや刑務所内の他のグループには命を狙われる事になってしまった主人公。そして追い詰められた彼は、ついに決死の行動に出る。正直、それまでは説明が少なくて状況が分かりづらく、いまいち映画にノれない部分もあったのだが、ここからエンディングまでは見ごたえがあった。ただやっぱりこの部分も分かりづらい部分が多く、全体的にもうちょっと分かりやすく描いてくれていたらもっと面白くなっていたのに、と残念さを感じなくもない。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 アンドレア・ディ・ステファノ

 

脚本/製作総指揮 ローワン・ジョフィ

 

原作 三秒間の死角 上 (角川文庫)

 

出演 ジョエル・キナマン/ロザムンド・パイク/クライヴ・オーウェン/コモン/アナ・デ・アルマス

 

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「ビブリア古書堂の事件手帖」 2018

ビブリア古書堂の事件手帖

★★☆☆☆

 

あらすじ

 亡くなった祖母の大事にしていた本の秘密を探るため、古本屋を訪れた主人公は、ひょんなことからそこでアルバイトをすることになる。

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感想

 主人公の祖母の若き日の秘密の恋と、古本屋の希少本が何者かに狙われる話、その二つの物語が並行して描かれていく。

 

 まず夏帆演じる若き日の祖母の秘密の恋は、なんとなく文学的な香りを漂わせて良い感じに見せているが、ただの不倫の話でしかないよなというのが素直な感想だ。そして不倫に燃える二人よりも、不倫された夫の方が気の毒で、そちらばかりが気になってしまった。

 

 女の浮気に気づきながらも何も言えず、決定的なあやまちも受け入れるしかない男の悲哀。彼は何も悪い事なんかしていないのに、どうしてこんな目に遭わないといけないのだと、男の境遇に同情してしまう。祖母の思い出を美しく描くだけではなく、こっちもせめて丁寧に描いてやれよ、と思ってしまった。その後の彼がどう生きたのか、気になる。

 

 そしてこの時の思い出の本を大事にしまっておいた祖母。その本を他人が見たところで不倫のことなんて何もわからないのに、それを見ようとした幼い孫を張り倒すのはさすがに過剰反応だ。見られたところですっ呆ければ良かっただけの話だろう。大事な思い出の品だから触れられるの嫌だったということなのか、気立ての良いおばあちゃんとこっちで勝手に思い込んでいただけで、実際はそこそこ性格の悪い人間だったという事なのか。

 

 そして、この時のトラウマで主人公が小説を読めなくなってしまったという設定もなんだかリアリティを感じなかった。実際に世の中にそういった例があるのかもしれないが。

 

 

 もう一方の古書店の高価な希少本をめぐる話。こちらも話が良く分からない部分が多かった。特に主人公が希少本を預かると言い出したシーンは、なぜ突然そんな提案をするのか、支離滅裂すぎて意味不明だった。なぜ預かるのか、預かったらどのように安全を担保するつもりなのか、さっぱり見えてこない。しかもあっさりと奪われてしまったくせに、黒木華演じる古本屋の女主人にブチギレていて人間性を疑ってしまった。

 

 そしてこの時点で大体の人は犯人の見当がついてしまうと思うのだが、なぜか主人公たちは自分たちの信頼関係に対する感情的な話ばかりして、これについては一切冷静に考えようとしない。ここで観客が主人公たちを追い抜いてしまった形となり、まだ答えの分からない彼らを眺めるという冷めた展開に。

 

 もはや犯人が明らかになっても、主人公たちのように驚きもない。犯人がなぜ精神を病んでいるのかの説明も曖昧で、モヤモヤの多い盛り上がらないミステリーとなってしまっている。クライマックスの女主人の行動も、そんな事をしなくても「じゃあ売ります」と言えばよかっただけでは?と思ってしまった。

 

スタッフ/キャスト

監督 三島有紀子

 

脚本 渡部亮平/松井香奈

 

原作 ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~ (メディアワークス文庫)

 

出演 黒木華/野村周平/成田凌/夏帆/東出昌大

 

音楽 安川午朗

 

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「運命のボタン」 2009

運命のボタン (字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 ある日突然、謎のボタンが家の前に置かれ、知らない男からある提案を持ちかけられた夫婦。原題は「The Box」。

 

感想

 謎の男が突然やって来て、このボタンを押せば100万ドル上げます、ただしあなたの知らない誰かがどこかで死んでしまいます、という提案を受けた夫婦。提案自体も唐突で怪しいが、一番の疑問は提案した男がそれをするメリットは何なのかという事だ。本当にお金をくれるのかという疑いに対しては信ぴょう性を担保するような描写はあるのだが、その疑問に答えてくれるような描写はなくて若干モヤモヤした。クリスマスだから分かるでしょ、サンタクロース的なやつですよ、という事なのかもしれないが。ちなみにこの提案を受けた時の、主人公を演じるキャメロン・ディアスのなんとも言えないすごい表情はちょっと笑ってしまった。

 

 そして戸惑い悩みながらも、映画的に勿論ボタンを押してしまう主人公たち。しかしその後から色々と不可思議な事が起こるようになる。お金も貰って謎の男の提案の件はもう終了したのだから、その後に色々あるのはなんだか納得がいかないが、その後何もあるとは言っていないですよね、というごはん論法的なやつなのか。夫婦がボタンを押したことを悔いて、色々と真相を探ろうとしたのもいけなかったのだろう。もし大金を手にして喜んでいるだけだったら、何も起きなかったのかもしれない。主人公の親族が、結婚パーティーのリハーサルなのに豪勢にやっていたのは、もしかしたらそのうちの誰かが主人公と同じ提案を受けて大金を手に入れ、罪悪感なく豪勢にやっているというという事なのかなと思ったりした。

 

 

 夫婦はそれぞれ別行動で真相を探ろうとする。不可思議で難解な描写が多かったが、よく分からないなりにもそれなりに楽しめていたのだが、終盤で謎の男が大体のあらましを説明してしまって、だいぶ興醒めしてしまった。そこは意味深で思わせぶりなまま最後までいって欲しかった。解釈の余地があり、その謎解きを楽しむ、という事も出来なくなった。主人公たち夫婦は、想定外の反応を見せて相手を一瞬おっ⁉と思わせたが、結局は相手の思惑通りのその他大勢と同じ動きを見せて失望させてしまったという事だろう。そして、また同じことがどこかで繰り返される。

 

 原作は短編で、この物語はあまり長々と説明したり意味づけをしたりせずに、たくさんの余白を残しつつサッと短く描く方が不思議な余韻が残って良いように思えた。「世にも奇妙な物語」でやっても良さそうで、一度「トワイライトゾーン」でも映像化されたことがあるようだ。そう考えると長編でやろうとしたこと自体がすでに間違っていたのかなと思ったりした。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/製作 リチャード・ケリー

 

原作 運命のボタン (ハヤカワ文庫NV)


出演 キャメロン・ディアス/ジェームズ・マースデン/フランク・ランジェラ/ジェームズ・レブホーン/セリア・ウェストン/デボラ・ラッシュ

 

音楽 ウィン・バトラー/レジーヌ・シャサーニュ/オーウェン・パレット/ 

 

運命のボタン (字幕版)

運命のボタン (字幕版)

  • キャメロン・ディアス
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登場する作品

「出口なし」 「サルトル全集 第8巻 恭しき娼婦」所収

 

 

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「今日も嫌がらせ弁当」 2019

今日も嫌がらせ弁当

★★☆☆☆

 

あらすじ

 会話がなくなった反抗期の娘のために、毎日嫌がらせのキャラ弁を作る母親。

今日も嫌がらせ弁当

 

感想

 やっぱりキャラ弁ネタだけで映画を作るのは厳しかったなと言うのが素直な気持ちだ。嫌がらせのキャラ弁自体は面白いと思うのだが、見て楽しんで終わり、みたいなところがあって、それだけではそんなに時間がもたない。だから写真で見るぐらいがちょうど良いのだが、それを映画にするならどれだけ話を膨らませることが出来るかが腕の見せどころだろう。

 

 でも大して話を膨らますことが出来ていない。キャラ弁の作り方やネタが尽きて困る様子には多少触れていたが、もうちょっとしっかり描くべきだったような気がする。そもそも篠原涼子演じる母親が、なんでそんなに上手にキャラ弁が作れるのかは描かれていないので分からない。彼女が色んなテクニックを身に着けていく過程とか、思い描いた弁当を作るために苦労する様子などもちゃんと見せて欲しかった。それから一切、味については触れていないのも謎だった。触れたところで美味しいとかマズいくらいしか言えないだろうとは思うが、一度くらいはちゃんと言及してくれないと気になってしまう。

 

 

 物語のメインは片親の母親と反抗期の娘の親子関係で、嫌がらせ弁当はそのちょっとしたエピソードの一つのような扱い。しかし娘の一本調子なキャラクターは、演じる芳根京子が可哀相なくらいだった。反抗期だから基本的には親に対してブスッとした態度を取るというのは分からなくはないのだが、それでも多感な時期の高校三年間を描いているのだから、もうちょっと思春期らしい感情の揺れや変化を描いてくれないと不自然に思えてしまう。

 

 そして上手くコミュニケーションが取れない親子関係の描き方もまた一本調子。二人の距離感が近くなったり遠ざかったりする動きがほとんど無いので、物語的につまらない。これはきっとキャラ弁をメインの題材にしていることが仇になっていて、母親はキャラ弁を毎日作っているのだから、そして娘はそれを毎日しっかり食べているのだから、二人の間にはちゃんと親子の絆があるに決まっていて、それをわざわざ他で分かる形で描写する必要はない、という事になってしまっているからだろう。

 

 こんなことなら逆に、激しい親子喧嘩などをしながらも、毎日何の変哲もない普通の弁当を渡す様子だけはさりげなく見せておいて、最後に反抗期で色々あったけど毎日美味しいお弁当を作ってくれてありがとう、という形にしてくれた方が感動したかもしれない。反抗期の娘に毎日嫌がらせ弁当を作った話、と言われてしまうと、もうそれだけで話は終わってしまっているような気がする。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 塚本連平

 

原作 今日も嫌がらせ弁当


出演 篠原涼子/芳根京子/松井玲奈/佐藤寛太/スギちゃん/小島よしお/日本エレキテル連合/ダンディ坂野/村上知子/佐藤隆太/岡田義徳

 

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「カリフォルニア・ダウン」 2015

カリフォルニア・ダウン(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 史上最大規模の巨大地震が起こり、家族を助けるために現地に向かうレスキュー隊員。原題は「San Andreas」。

 

感想

 巨大地震でダムは壊れて高層ビルは次々と崩れ落ち、そして大津波がやって来るディザスタームービー。とにかく映像の迫力がすごくて、それだけでも観る価値がある。これらはどうやって撮っているのだろうと思ってしまうが、当然CGなのだろう。実際にセットを作って壊していたら、予算がいくらあっても足りないはずだ。

 

 甚大な地震被害の中、離婚寸前の妻と娘を助けに行くドウェイン・ジョンソン演じる主人公の姿と、たまたま知り合ったある兄弟と共に現地でサバイブする娘の姿が並行して描かれていく。レスキュー隊員でドウェイン・ジョンソンである主人公がすごいのは当然だが、セクシーで美人な娘が高いサバイバル能力を見せるのはカッコ良かった。善人だが頼りない兄弟をリードして、生き残るために全力を尽くす。強い男がか弱い女を導くというよくあるパターンとは逆で、それが新鮮で良かった。

 

 

 そんな頼りない兄弟だが、彼らが共に行動するきっかけとなった、車の中で動けなくなった彼女をジャッキを使って救出するシーンは、アイデアが効いていて面白かった。それからクライマックスで母親が見せた、ボートで建物に突っ込む男らしい姿には胸を打たれた。彼女はそれまで夫にただ従うだけだったのに急に変わったなと思ったが、娘のためならそれくらいやるか。

 

 家族救出のために必死になる主人公の姿は、家族から見たら当然文句なしに素晴らしいが、レスキュー隊員としてはどうなの?と思わなくもない。途中で一瞬だけ周囲の人達を避難させる一幕があったが、それ以外のシーンでは他の被災者には一切目もくれず、ただ家族を助けることしか考えていなかった。でもそれが批判するべきポイントではなく、ただの面白ポイントに思えてしまうほどに映画を楽しめた。

 

 この映画は時期的にも内容的にもきっと東日本大震災から着想を得ているはずで、それをエンターテイメント作品に仕立てられちゃったかと少し複雑な気分があるし、実際に被害にあった人は色々と思うところもあるだろうが、地震はいつでもどこでも起きうるものだし、そのための啓発映画として捉えることも出来るので、あまり考えすぎない方がいいのだろうという気はする。少なくとも説教臭いヒューマン映画を撮られるよりは何万倍もましだ。

 

 あと、エンドロールで流れるシーアの「California Dreamin'」のカバーが良かった。

www.youtube.com

 

スタッフ/キャスト

監督 ブラッド・ペイトン

 

出演 ドウェイン・ジョンソン/カーラ・グギノ/アレクサンドラ・ダダリオ/ヨアン・グリフィズ/アーチー・パンジャビ/ポール・ジアマッティ/ウィル・ユン・リー /カイリー・ミノーグ/コルトン・ヘインズ

 

カリフォルニア・ダウン(字幕版)

カリフォルニア・ダウン(字幕版)

  • ドウェイン・ジョンソン
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「夜明けの街で」 2011

夜明けの街で

★★☆☆☆

 

あらすじ

 不倫など馬鹿らしいと思っていたのに、不倫にのめり込んでしまった男。129分。

 

感想

 不倫相手にサスペンスの気配を感じさせながら、主人公が不倫にのめり込んでいく過程が描かれる。でも奥さんは疑う様子を見せないし、不倫相手は駄々をこねて困らせないし、主人公はまったく罪悪感を感じていないしで、不倫は順調そのもの。冷や冷やしたりドキドキしたりするような感情の起伏が起こるシーンが何もないので、何をモチベーションにこの二人の不倫の様子を観ればいいのかが分からなかった。こういう場合はきっと二人の濡れ場で引っ張るのが定番なのだろうが、不倫の相手役が深田恭子なのでそれは期待できず、もちろん中途半端なシーンしかない。

 

 それでもその不倫相手が何やら殺人事件に関与しているらしいというミステリー要素が冒頭にあったので、それに対する興味で辛うじて頑張って観ているという感じだった。だがその匂わせがあまりにも少ないので、もしかしたらあれは幻だったのか?と途中で不安になってしまうほど。もうちょっとこまめに、この後サスペンスシーンが待ってますよと撒き餌をしておいて欲しかった。

 

 

 そして死んだ目で不倫の様子を2時間弱ほど眺めたあとで、ようやくサスペンスのクライマックスが訪れる。だがそこで明かされる事実にビックリするくらいビックリしなくてビックリした。正直どうでもよいというか、そもそも興味がないというか。やっぱり不倫ばかり描いていないで、物語のあちこちに興味を掻き立てるような伏線をもっと張っておくべきだった。主人公がこの現場に巻き込まれた理由もいまいちよく分からない。不倫していた親に対する当てつけだったという事なのだろうが、その論理が上手く理解できずモヤモヤする。

 

 最後は順調に見えていた不倫も、実はそうではなかったという事に主人公が気づいてわなわなと震えるシーン。ショッキングなシーンのつもりなのだろうが、あれだけやりたい放題やってればそりゃそうでしょうよとしか思えなかった。ビックリしていることにビックリするレベル。主人公を利用していたつもりがそうじゃなくなってしまったという不倫相手の話も、そもそもが嘘っぽいのでリアリティを感じない。よくある面白みのない普通の不倫をただ2時間以上も観させられただけ、という感想しかない。もしかしたら不倫経験がある人は楽しめるのかも。

 

スタッフ/キャスト

監督 若松節朗

 

原作 夜明けの街で (角川文庫)


出演 岸谷五朗/深田恭子/木村多江/石黒賢/黄川田将也/田中健/萬田久子/中村雅俊

 

夜明けの街で

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「セックス・アンド・ザ・シティ2」 2010

セックス・アンド・ザ・シティ 2 [ザ・ムービー](字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 中東アブダビの豪華ホテルに招待されたいつもの4人組。146分。

 

感想

 いつもの4人組が中東に。エキゾチックで豪華な旅行を見せながら、いつもの女の友情や人生についてが描かれていく。ただ、彼女たちの乗るファーストクラスの飛行機や泊まるホテルは確かにラグジュアリーで見ごたえがあるのだが、あまり異国情緒のある映像は無く、観光映画としては物足りない部分がある。後で調べたら、映画のタイトルに現地当局が難色を示して撮影許可が下りず、モロッコで撮影したという事のようなのでそれは仕方がないか。

 

 そして4人のドタバタの珍道中になるのかと思いきや、案外そうでもない。様々な人生を抱えた4人が集まって親交を深め合うという割と普通の旅行になっている。でも、そんな中で旅行終盤に見せたサマンサのいつもの振り切れ具合は、相変わらずロックで面白かったが。ただ4人で語ったりはしゃいだりと、やっていることはいつもと同じなので何も中東に行くことはなかったのではと思わなくはないが、いつもと違う場所で違う景色の中にいるからこそ特別な何かが生まれて思い出になるわけで。

 

 

 中盤、主人公は旅の途中で偶然出会った昔の恋人と過ちを犯してしまい、それを夫に告げるべきか悩む。よくあるシーンだが、これは相手のためではなくて、自分がすっきりしたいだけだよなといつも思ってしまう。こんな事をしちゃったんだけどそれに対してあなたはどうする?と、突然相手に決断を迫る感じが上から目線で何だか偉そうだし、それを告げられた相手には許すしか選択肢がないような気もする。この映画でもなぜか相手が下手に出る感じになってしまっていて、なんかズルいよなと思ってしまった。ただ、映画で告白するべきかしないべきかという形にしてしまったら、それはもう物語的に告白するの一択しかないだろうという気はするが。

 

 4人でワイワイ騒ぎながらも、時々その中の二人だけになる状況を作ってシリアスな話をさせたり、戒律で抑圧された現地の女性達の姿を見せて女性が自分らしく、自分の色で生きていくことについて考えさせたり、様々な伏線を張っていたりして、物語としては上手くまとまっており、良く出来ている。残念なのは盛り上がりに欠けることだが、それでも気楽に観るには悪くない作品となっている。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/製作    マイケル・パトリック・キング

 

製作/出演 サラ・ジェシカ・パーカー

 

出演 キム・キャトラル/クリスティン・デイヴィス/シンシア・ニクソン/クリス・ノース/ジョン・コーベット/デビッド・エイゲンバーグ/エヴァン・ハンドラー/ジェイソン・ルイス/ウィリー・ガーソン/ラザ・ジェフリー/ライザ・ミネリ/ペネロペ・クルス/マイリー・サイラス/アリス・イヴ/アート・マリック/オミッド・ジャリリ/ハイディ・クルム/チューズデイ・ナイト

 

セックス・アンド・ザ・シティ2 - Wikipedia

セックス・アンド・ザ・シティ2(R15+) 【字幕版】 | 映画 | 無料動画GYAO!

 

 

登場する作品

或る夜の出来事(字幕版)

希望の降る街 (字幕版)

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関連する作品

前作

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