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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「LIFE<ライフ> 人間が知らない生き方」 2016

LIFE<ライフ> 人間が知らない生き方

★★★☆☆

 

内容

 動物のあまり知られていない生態を紹介し、そこから人類の生き方を学ぶ。

 

感想

 ペンギン・ライオン・パンダなどが、各動物ごとに漫画と文章で紹介される。すらすらと読めるが、一気に読もうとすると飽きてくるので、空き時間にパラパラと気軽な感じで読むのがいいのかもしれない。

 

 動物の知られざる生態と、そこから人間が学べることを紹介している。中にはただのこじつけに思えるような内容も多いのだが、動物の生態を読んでいるだけで面白いので構わない。

 

 

 中でもネコの話が面白かった。猫は人間を別の生物とは認識していなくて、せいぜいなぜかでかい、のろまな猫ぐらいにしか思っていないとか。つまり主従関係を感じていないということで、ちょっとショック。

 

 それから犬は大型犬から小型犬まで様々な品種の犬がいるが、猫は品種によってサイズはそんなに変わらない。犬と違って猫は人間のために色々な仕事をしないので、猟犬などのように仕事に特化した品種改良が行われなかったというのが大きな理由のようだが、もう一つ、野生の本能が残っているので大型化すると危険、というのもあるそうだ。確かにあのサイズだからじゃれてきても可愛いが、トラやライオンのようなサイズだったら怖いだけだ。もし猫がドーベルマンくらいのサイズだったら、今のように人気ではなく、駆除の対象にすらなっていたのかもしれない。そう考えるとサイズ感は大事だ。

 

 その他、ナマケモノの不思議な生態や、象は自分の長い鼻に最初は戸惑うといった興味深い話が次々と出てくる。動物の生態は様々で、中には人間には奇妙に思える生態もある。それでもどの動物も生存競争を勝ち抜いてきた動物ばかりだ。そう考えると、確かに自分の人生も、無理して型にはまった生き方をしなくてもいいんじゃないかと思えてきて、気分が軽くなる。

 

著者

麻生羽呂/篠原かをり

 

LIFE<ライフ> 人間が知らない生き方

LIFE<ライフ> 人間が知らない生き方

 

 

 

関連する作品

続編

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「松尾潔のメロウな日々」 2014

松尾潔のメロウな日々 (SPACE SHOWER BOOKS)

★★★★☆

 

内容

 音楽プロデューサー・作詞家・作曲家である著者が、音楽ライターとして過ごした90年代のブラックミュージックを振り返る。

 

感想 

 正直、この著者のことは知らなかったのだが、クインシー・ジョーンズやジェームス・ブラウン、パフ・ダディなどの超大物たちをはじめ、ブラックミュージック界の第一線で活躍するミュージシャンたちと面会し、直接インタビューをしているのがすごい。彼らとのエピソードを読んでいるだけでも面白い。

 

「成功とはつまり、分かちあうことです。あなたがやっとの思いで沼から陸に這いあがることができても、それはまだ成功と呼べません。陸にあがったら後ろをふり向いて、まだ沼であえいでいる者に手を差し伸べてごらんなさい。そのひとを陸に引きあげたとき、初めてそれを成功と呼ぶのです。」

p136

 

 著者とのインタビューでジェームス・ブラウンが発した言葉に心打たれる。これだけでブラックカルチャーの根底にあるものが分かるような気がする。彼らがやたらといろんな人をフィーチャリングしたり、たくさんの取り巻きを引き連れていたり、ホームタウンを大事にしていたりしているのはこれがあるからなのだろう。

 

 90年代に最前線で活躍したミュージシャンたちの話を読みながら、自分が彼らの事をほとんど知らないことに落ち込んでしまう。せっかく同時代に生きてオンタイムで彼らの新曲を楽しめたはずなのにと。ただその時は別のジャンルの曲をオンタイムで楽しんでいたはずで、すべてを逃すまいと必死になりすぎても音楽を楽しめなくなってしまう。気軽に興味が湧いた時に聴き始めればいい。

 

 そう考えると今は良い時代だ。かつては気になる曲があってもラジオでかかるのを待ったりするしかなかったが、今ならネットを検索すればすぐに聴くことができる。本文中に出てきた気になる曲を、その場で聴きながら読み進めるのはなかなか快適だ。

 

 

 今の時代は演奏する側にとっても良い時代だろう。ミュージシャンに金持ちの息子が多いのは、たくさんの音源を手に入れることができてそれを吸収できたからだと思うが、今はお金がなくてもたくさんの音源を聴くことが出来る。なのでその点では金持ちのアドバンテージはなくなって、誰でも同じ条件で勝負できるようになったはずだ。

 

 本書ではその他に、著者によるR&BアーティストのCDのライナーノーツの傑作選も収められている。こういうライナーノーツは、業界の重鎮みたいなおじさんが書いているものだと思っていたが、著者のように当時20代の人間が書いていることもあったのかと驚かされた。もしかしたら、自分の持っているCDにも著者がライナーノーツを書いたものがあるのかもしれない。

 

 落ち着いた文章のそれまでと違って、ライナーノーツは妙にノリの軽い文章となっていて意外だった。これはライナーノーツの特徴なのか、時代のせいなのかと色々考えてしまうが、確かにこんなノリのライナーノーツ、あったなあと懐かしくなった。最近読んでないな、ライナーノーツ。

 

著者

松尾潔

 

松尾潔のメロウな日々 (SPACE SHOWER BOOKS)

松尾潔のメロウな日々 (SPACE SHOWER BOOKS)

  • 作者:松尾 潔
  • スペースシャワーネットワーク
Amazon

 

 

登場する作品

Strictly Business

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ハイスクールU.S.A.―アメリカ学園映画のすべて

サイドウェイ (字幕版)

エディー&マーティンの逃走人生 (字幕版)

Jason's Lyric

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ブーメラン (字幕版)

Hot R&B Songs 1942-2010

ドゥ・ザ・ライト・シング (字幕版)

「Pipe Dreams」 1976

Buppies, B-boys, Baps, And Bohos: Notes On Post-soul Black Culture

Cb4

She's Gotta Have It

モータウン・ミュージック

Seduced

Urban Romance

狩人の夜 [DVD]

山猫 [DVD]

LIFE SUPPORT

遠いアメリカ (講談社文庫)

ブルース・ブラザース (字幕版)

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ロスト・イン・トランスレーション [DVD]

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ハウス・パーティー [VHS]

Rappin [VHS] [Import]

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ポエティック・ジャスティス/愛するということ [Blu-ray]

ロミオとジュリエット (新潮文庫)

Jason's Lyric

THIN LINE BETWEEN LOVE & HATE

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ハイスクール・ハイ(字幕) [VHS]

ポップ・ガン (字幕版)

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インデペンデンス・デイ (字幕版)

マルコムX [DVD]

 

 

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「小津安二郎への旅 魂の「無」を探して」 2014

小津安二郎への旅: 魂の「無」を探して

★★★☆☆

 

内容

 小津安二郎にゆかりのある深川、松坂、尾道、鎌倉などを歩き、小津の人となりを探る。

 

あらすじ

 序盤は名作「東京物語」についてページを割いて語られる。その中でかなり詳細な映画のあらすじが語られるのだが、それを読んでいるだけで映画のシーンを思い出し、涙が出そうになって困った。

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 本書では、寅さんや松尾芭蕉、志賀直哉と小津との共通点について考察している点が面白い。少し強引とも言えなくはないのだが、共通点、相違点を考えることで、小津の人物像が浮き上がってくるような気がした。しかし、松尾芭蕉や志賀直哉は作品の簡潔さから何とかわかるような気がするが、寅さんを出してくるのは意外だった。

 

 そして著者は小津のゆかりの地を巡るのだが、その中でも小津が幼少から青年期を過ごした松阪の話が面白かった。東京下町の花街の近くで生まれ育ち、両親が教育環境を考慮して松阪に引っ越したのに、引っ越し先の近くにも花街があった、といううっかりエピソードや、真偽は不明だが「稚児事件」というものを起こして中学の寮を追い出されていたエピソードなど、知らなかった話が色々と出てくる。

 

 

 中でも受験に失敗して浪人をした後、わずか一年だけ田舎の小学校で代用教員として勤務していた時の話は興味深かった。突然ローマ字を熱心に教えたり、授業そっちのけで見てきた映画の話をしてなかなかの人気教師だったようである。そして数年後にかつての教え子が、監督となって撮影所にいた小津のもとを訪れた時には、それを温かく迎え入れたという。きっと小津にとっても良い思い出となっていたことが偲ばれる良いエピソードだ。

 

 こういった小津にとっては思い出深いはずの教員時代の話や、その他にも戦争の体験などは、本人の口からほとんど語られることはなかったようである。まるで大事なことは敢えて直接描かない彼の映画のように、それが彼の人生の作法だったのかもしれない。語ることで陳腐なものへと変わってしまうことを恐れ、大事な思い出は彼の心の中にずっと大事にしまっておく、そんな彼の美学が感じられる。

 

著者

伊良子序

 

小津安二郎への旅: 魂の「無」を探して

小津安二郎への旅: 魂の「無」を探して

 

 

 

登場する作品

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泥の河

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誰も知らない

マッチうりの女の子

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タクシードライバー (字幕版)

戦場の黙示録 (字幕版)

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七人の侍

鏡 DVD HDマスター

自転車泥棒 (字幕版)

羅生門 デジタル完全版

街の灯 コレクターズ・エディション [DVD]

黄金狂時代 [DVD]

戦艦ポチョムキン【淀川長治解説映像付き】 [DVD]

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ファンタジア スペシャル・エディション [DVD]

わが谷は緑なりき (字幕版)

怒りの葡萄

駅馬車(字幕版)

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哀愁(字幕版)

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暴行 [DVD]

用心棒

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菊と刀 (講談社学術文庫)

白痴

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東京画 [DVD]

結婚哲学《IVC BEST SELECTION》 [DVD]

二十四の瞳 (デジタルリマスター2007)

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日本の悲劇

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ひめゆりの塔 [DVD]

君の名は 第1部

禁じられた遊び(字幕版)

笛吹川 

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「甘え」の構造 [増補普及版]

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「いき」の構造

野ざらし紀行 現代語訳付

「鹿島紀行」 松尾芭蕉

笈の小文

「更科紀行」 松尾芭蕉

おくのほそ道 (ワイド版 岩波文庫)

杜若 (観世流特製一番本(大成版))

人情紙風船 [DVD]

断腸亭日乗 01 〔はしがき〕

煙突の見える場所 [DVD]

いつでも夢を

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ハワイ・マレー沖海戦

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「「都市」の中の作家たち」 川本三郎

ブレードランナー ファイナル・カット(字幕版)

日本の夜と霧

青春残酷物語

シヴィリゼーション 小津安二郎の愛した映画 [DVD]

檸檬

城のある町にて

古事記 (岩波文庫)

源氏物語 01 桐壺

ゼンダ城の虜 [DVD]

「オーヅ先生の思い出」 飯高オーヅ会

船頭小唄

歌舞伎名作撰 勧進帳 [DVD]

孔雀船

新版 放浪記

風琴と魚の町

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志賀直哉〈上〉 (新潮文庫)

清兵衛と瓢箪 (ポプラ社文庫)

小僧の神様・城の崎にて (新潮文庫)「城の崎にて」

浮雲

裸の島 [DVD]

こころ

如是我聞

「夕べの鐘」

主人は冷たい土の中に

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 「暗夜行路」(映画)

放浪記

「うず潮」(映画)吉永小百合主演

靴みがき [DVD]

揺れる大地 海の挿話 [DVD]

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山猫 [DVD]

ベニスに死す (字幕版)

ルートヴィヒ デジタル完全修復版 [DVD]

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何が彼女をそうさせたか クリティカル・エディション [DVD]

雪国 [DVD]

幸福を売る男

華麗なる千拍子'99

サンダカン八番娼館 望郷

人間の條件 DVD-BOX

松竹大船撮影所前松尾食堂

十五才 学校IV

「偶成」朱熹

 

 

登場する人物

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「鳥頭なんて誰が言った? 動物の「知能」にかんする大いなる誤解」 2019

鳥頭なんて誰が言った? 動物の「知能」にかんする大いなる誤解

 

★★★☆☆

 

内容

  生き物について考えるとき、人々は当然のように人類を最も知能の発達した存在としているが、それは果たして真実といえるのだろうか?フランス人生物学者による考察。

 

感想

 タイトルから鳥類や生き物に関する面白話が書かれた本かと想像してしまったが、そうではなく動物の「知能」に関する内容の本だった。著書は、最も知能の高い生き物は「人間」である、という共通認識に疑問を投げかけている。本書ではそんな認識の根拠となっている考え方について一つ一つ反証していく。

 

 具体的には、人間は唯一道具を使えるだとか、生み出した技術を伝承していくことができるとか、共感する力があるという説に対して、他の生き物たちも道具を使ったり、技術を伝承している事実を挙げ、それが出来るのは決して人間だけじゃないことを教えてくれる。さらには生き物たちの人間以上に優れた能力までが紹介される。

 

 

 そのような話を読み進めているうちに、次第に人間と他の動物との大きな違いは何なのだろうと考えこんでしまう。さらには、そもそも知能とは何だろうというところまで疑問は膨らんでくる。

 

 著者も本の中でそれに触れ、もし生き残ることが知能の高さだというのなら、人類の誕生の前から存在し、人類が滅んだ後も生き残るだろう生物のほうが知能が高いといえるのかもしれない、と述べている。確かに数億年後には「人類とかいうそんな生き物もいたが、愚かにも滅びてしまったよ」と言われているのかもしれない。誰がそれを言っているのかは分からないが。

 

 そう考えると、文明を発達させること自体があまり頭のいいことではないように思えてきて訳が分からなくなる。過去には高度に発達した文明が滅んだこともあるわけで、意外と頭の悪い戦略なのかもしれない。自らが作り上げた社会でストレスを抱えて生きるよりも、昆虫のように幸福だとか不幸とかの概念すらない世界で黙々と、子孫を繁栄させて生存していくほうがよっぽど賢いのかもしれないと思えてきた。

 

 本書は、知能とは何か?ということに主眼が置かれているので難しい話になりがちで、なかなかすらすら読むというわけにはいかなかった。時々、動物の面白いエピソードが語られてページをめくる手に勢いが出るのだが、すぐに抽象的な知能に関する話に戻ってしまってトーンダウンしてしまう。なかなかリズムがつかめない本だった。

 

 また内容とは関係ないが、章の中の節のタイトルがページ見開きの最終行に書かれ、次のページをめくると本文が始まるというパターンが多く、精神衛生的に気持ち悪かった。それから翻訳の仕方のせいか、いくつか意味の通じない文章もあり、それも文章のリズムの悪さに一役買ってしまっている気がした。

 

著者

エマニュエル・プイドバ

 

 

 

登場する作品

Le Singe, l'Afrique et l'homme

森の隣人―チンパンジーと私 (朝日選書)

心を育てる せかいむかしばなし 6 イソップ童話2 ― カラスと水差し他9話

 

 

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「パンドラの匣」 1946

パンドラの匣 (新潮文庫)

★★★★☆

 

あらすじ

 結核の療養のために施設に入った青年が、療養所内の様子を友人宛の手紙に綴る。

 

感想

 不思議なマッサージや体操を行い、読書は禁止など、独自のルールに基づいて運営が行われる人里離れた場所にある療養所。なかなか奇妙だが、独自の理論に基づいて治療が行われる施設というのは今もあるから、珍しくはないのか。病人の弱みに付け込む宗教味が強い印象もなくはないが、医師による独自の理論に基づいた善意の療養施設のようである。

 

 そんな施設で過ごす主人公の青年。この主人公自体は裕福な家庭の出らしいが、同じ入院患者は左官屋だったり、郵便局長だったり、謎のおじさんだったりと様々だ。主人公よりも年上ばかりで、そんな彼らを見ながら知らなかったであろう大人の意外な一面を垣間見たりする。

 

 

 そして療養所で働く若い看護婦たちの存在がある。年頃の青年にとっては気にならないはずがない。ミステリアスな大人の女性と子供っぽい若い女性、二人の間で勝手に心が揺れたりする気持ちはすごくよくわかる。そして、彼女らの不思議なリアクションに戸惑い、腹を立てたりキュンとなったり。

 

 終戦直後に出版された本というせいもあるのか、主人公や文通相手の友人の間に敗戦後の新しい時代を生きようとする爽やかな決意がみなぎっているのが印象的だ。

 

十年一日の如き、不変の政治思想などは迷夢に過ぎないという意味だ。

太宰 治. パンドラの匣 (Kindle の位置No.1467). . Kindle 版.

 

 敗戦の傷を引きずって打ちひしがれて過ごすのではなく、敢えてそれらを飲み込んだ上で軽やかに生きようとしている。負けたとはいえ、終戦直後はこういう気分もあったのかと意外な気がした。

 

 ただ、青年にありがちな少し無理した部分もあった。意図的に軽やかであろうとしたのに、看護婦にいわば失恋し、軽やかでいられない自分を発見したりする。あまり接点のなかったであろう多くの大人や女性と接して観察し、考えることで主人公は成長していく。

 

 手紙形式ということもあるが、太宰治の文章の読みやすさに感心してしまう。文章が読みやすいからといって内容も単純というわけでなく、主人公の心の動きが繊細に描かれている。途中で文通相手の友人が療養所にやってくる展開もよく練られている。爽やかな読後感を得られる小説だ。

 

著者

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パンドラの匣

パンドラの匣

 

パンドラの匣 (小説) - Wikipedia

 

 

登場する作品

蘭学事始

オルレアンの少女

 

 

関連する作品

映画化作品

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「島」 1962

島 (1980年)

★★★☆☆

 

あらすじ

 嵐でインド洋上の島に漂着し、島人に助けられた主人公。独自の世界を築いている島の様子を見て回る。

 

感想

 同じ著者のディストピア小説「すばらしい新世界」とほぼ同じような世界なのだが、こちらはユートピア小説となっている。

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 庶民が何も考えられなくなるように、フリーセックスやドラッグで享楽的に過ごさせていたのが「すばらしい新世界」だったが、こちらでも同様にフリーセックスやドラッグを与えながらも、それらを意義あるものにする教育を授けることで、人々それぞれが人間として豊かな人生を歩めるよう導いている。

 

「それはいつも忘れるからじゃない?つまり、いまのできごとに注意をはらうことを忘れるでしょう。それはいまここにいないことになるのよね」

p15 上

  

 この作品は神秘主義的、オカルト的側面があると言われることもあったそうだが、いまならそれはマインドフルネスとして扱われている内容もあったりして、著者の先見性に驚かされる。島にある学校の教育方針なども面白い。

 

 ただこのユートピアは、人々の日々たゆまぬ努力が必要とされる。常に正しい方向に人々が進んでいるかをチェックし、それがすべての人にもれなく伝わっているかを確認しなければならない。こんなしんどいことをやろうとするリーダーはなかなかいないだろう。こんな細心の注意がいる世界よりも、似ているようで全く違う「すばらしい新世界」のやり方を選択したほうが楽に世を治められる。

 

 この本の結末のように、このユートピアが今の世を生きる人達に受け入れられて広がっていかない限り、維持するだけでも大変だ。外からこの世界を見れば、間違っていると思う人だっていっぱいいるだろう。全員にとってのユートピアというのはなかなか難しい。

 

 この島に著者の考えるユートピアを作り上げ、そこを訪れた主人公が、いろいろな場所に連れていかれて見学しているような、いわば視察旅行をしているような形の本となっている。主人公の心の傷を癒やす場面や島の人間の妻が亡くなるシーンなど印象的な場面もあったが、著者の思想を示すためという側面が強く、物語としては面白みにかけた。文章も哲学的な内容を含んでおり、スラスラと読めるような種類のものでもなかった。

 

著者

オルダス・ハクスリー

 

島 (1980年)

島 (1980年)

 

 島 (小説) - Wikipedia

 

 

登場する作品

エレホン―山脈を越えて (1952年) (岩波文庫)

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ファウスト〈第一部〉 (岩波文庫)

告白 上 (岩波文庫 青 805-1)

卓上語録(テーブルトーク)

トム・ジョウンズ〈1〉 (岩波文庫)

ピクウィック・ペーパーズ―新訳 (上巻)

「地獄の格言」 ウィリアム・ブレイク

アラビアン・ナイト〈上〉 (岩波少年文庫)

般若心経・金剛般若経 (岩波文庫)

バガヴァッド・ギーター (岩波文庫)

国家〈上〉 (岩波文庫)(共和国)

ニコマコス倫理学(上) (光文社古典新訳文庫)

ヘンデル:オラトリオ「サウル」

ブランデンブルク協奏曲 第4番 ト長調 BWV1049

OGTー1127 ヴァーグナー 聖金曜日の音楽(「バルジファル」より) (Philharmonia miniature scores)

 

 

この作品が登場する作品 

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「 仕掛学 人を動かすアイデアのつくり方」 2016

仕掛学―人を動かすアイデアのつくり方

★★★☆☆

 

内容

 小さな鳥居を置くと不法投棄が無くなる、ゴミ箱の上にバスケットゴールを設置するとゴミを拾って投げ入れたくなる、といった、人々が自然と望ましい行動を取るようになる「仕掛け」について説明した本。 

 

感想

 「不法投棄をしないでください」「ゴミはゴミ箱へ」といった注意喚起の掲示をするよりも効果的なことが多い「仕掛け」。世の中にはそんな仕掛けがたくさんある。男なら男子トイレの小便器に貼られたシールの的がわかりやすいかもしれない。「トイレをきれいに使ってください」という貼り紙よりも効果がある。

 

 こういう人々が無意識に取ってしまう行動を利用して、望ましい行動を取らせる「仕掛け」。設置した側は望ましい行動をしてもらってハッピーだし、行動した方も無意識なので命令されたような嫌な気分にはならない。人を動かすのにこんなに良い方法はないわけだが、人々は世の中にある「仕掛け」にほとんど気づかない。気づかれないように設置するわけだから当然ではあるのだが、本書ではそんな仕掛けの事例の数々がまず紹介される。

 

 どの仕掛けも面白いのだが、その中でもなるほどと思ったのは、チラシスタンドの上部に鏡を設置すると、人々がチラシを取る確率が上がる、というもの。

 人は鏡があると気になってついチラシスタンドに近づいてしまい、そのときに自身の行動を正当化するためにチラシを取ったのではないかと考えている。

p118

 

 これは自己承認の欲求を利用したもの。鏡を見たくて近づいたが、周りには鏡を見たくて近づいたわけじゃない、チラシが欲しかったのだ、とアピールするためにチラシを取る仕組み。罠を仕掛けておびき寄せる感じが面白い。

 

 しかしこの鏡をつい見てしまう、というのはナルシストでなくても誰でもそうなような気がする。個人的には、家庭内の鏡の所有枚数とその家の住人の美人度、男前度は比例すると思っている。体重計に毎日乗る人のほうが体型をキープしやすいのと同じ理論。鏡を見ることが多いほど自分の外見を磨きやすいはず。持って生まれた物はあるが、その手持ちのカードを最大限効果的に使えるようになるはず、と思っている。

 

 本書の中では仕掛けを紹介した後、それらの仕掛けを仕組みの種類ごとに分類し、さらにその分類を利用して、新しい仕掛けを作る方法を紹介している。仕掛けは説明されるとなるほどとは思うのだが、いざ自分が作るとなるとなかなか難しそうだ。発想方法なども紹介されているので助けにはなりそうだ。

 

 皆が色々と仕掛けを考えることで、「あれをしろ」だの、「これはするな」だの口うるさく言われない社会になったらいいのに、と思うのだが、悪用されて知らないうちにディストピア、ってこともあり得るかもしれないな、とちょっと恐ろしい気分にもなる。

 

著者 松村真宏

 

 

 

登場する作品

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北風と太陽 世界の童話シリーズその69

ローマの休日 (字幕版)

 

 

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「裏が、幸せ。」 2015

裏が、幸せ。

★★★☆☆

 

内容

  日本海側、裏日本の魅力について、文学や歌、祭りなど様々な観点から、著者が語る。

 

感想

 序盤は「裏日本」という言葉で変な刺激を与えやしないかと、少し及び腰でクドいくらい繰り返し悪い意味じゃないですよ、と念を押しているのが少し面白い。最近は全文を読まずに文句を言ってくる人が多いからだろうか。

 

 この調子で最後まで行かれると流石にしんどいし、しつこすぎて逆にやっぱり馬鹿にしてるのかと思ってしまいそうだが、途中から通常モードになっていて安心した。

 

 

 著者が言わんとしている裏日本の魅力は良く分かる。日本海側を旅行すると、何だよこの光景、みたいな景色によく出会う。時間が止まっているのかと一瞬思ってしまうような昔の日本の光景がそのまま残っていたりして嬉しくなる。

 

 しかも最近の観光地として整備されたような古い町並みというわけでなく、普通に意図せず残っている風景。 だから古い町並みの中に突然近代的な家が建っていたりする。きっとそこにいる人達にとっては何が良いのだかさっぱり理解できないだろう。そしてグローバリゼーションの中で、少しずつどこにでもあるような景色に変わっていこうとする。旅人としては寂しい限りだが、そこにいる人にとってはそんなものより便利な方が良いに違いない。

 

 文学や観光、宗教や演歌などを通して、裏日本の魅力が語られていく。個人的に面白かったのは、顔を隠して盆踊りなどをする祭りの話。西洋の仮面舞踏会の話などを聞くと、何が面白いんだ、と思ってしまっていたが、日本でも同じようなことをしている。

 

が、いずれにしても東北の日本海側地方の人々は、農作業の時に顔を覆った経験から、「顔を隠す時の開放感」を知っていたように思うのです。顔を隠し、誰でもなくなった時の自由さを、彼らは短い夏の夜の祭りで、思いきり味わおうとしたのではないしょうか。

単行本 p114

 

 言われてみれば、そういう匿名の開放感というのは分かるような気がした。今のネット空間で悪口雑言が飛び交っているのも、きっと同じ心理だ。現代は毎日がハレの日になってしまっているということか。

 

 著者が挙げるような様々な裏日本の魅力は、表日本との時差のようなものから来ていることが多い。ただこの事は、観光で食べていかなければいけない、これからの時代にとっては有利に働くかもしれない。均一化してしまっている表日本と違い、裏日本のまだまだ色濃く残る地域の独自性を守り、活かすことで、外国人観光客たちに「今、裏日本が熱い」と言わせることが出来るかもしれない。

 

 余談だし、本当はわざわざ波風を立てる必要はないとは思うのだが、個人的には九州の裏日本は東側だと思っている。九州を旅行した時にそう感じた。

 

著者

酒井順子

 

裏が、幸せ。 (小学館文庫)

裏が、幸せ。 (小学館文庫)

 

 

 

登場する作品

裏日本―近代日本を問いなおす (岩波新書)

「裏日本」はいかにつくられたか

雪国 (新潮文庫)

易経〈上〉 (岩波文庫)

ゼロの焦点 (新潮文庫)

なんだかなァ人生

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越前岬[川中美幸][EP盤]

雪中花

夢越前

越前有情

日本海[北島三郎][EP盤]

LP時代の復刻盤:日本海

日本海

哀しみ本線日本海

ふりむけば日本海

女ひとりの日本海

演歌の愁~女 泣き砂 日本海

「日本海ブルース」 坂本冬美

日本海の詩

海雪

秋元康にっぽん作詞紀行―ことばを紡ぐ旅 (NHK趣味悠々)

津軽海峡・冬景色

天城越え

能登半島

暖流

滝の白糸

義血侠血

風の盆恋歌

風の盆恋歌 (新潮文庫)

飢餓海峡

飢餓海峡(上) (新潮文庫)

越前竹人形 (中公文庫 A 19-11)

越前竹舞い

はなれ瞽女おりん (新潮文庫 み 7-13)

日本的霊性 (岩波文庫)

出雲国風土記 (講談社学術文庫)

日本書紀(上)全現代語訳 (講談社学術文庫)

妄想ニッポン紀行: 高天原-伊勢-出雲 (講談社文庫)

古事記 (岩波文庫)

裏日本ベスト12コース (1965年) (トラベル・シリーズ〈17〉)

現代語訳吾妻鏡〈1〉頼朝の挙兵

源氏物語(一)桐壺―末摘花 (岩波文庫)

新訂 新古今和歌集 (岩波文庫)

「金島書」 世阿弥

月影ベイベ コミックセット (フラワーコミックスアルファ) [マーケットプレイスセット]

杏っ子 (新潮文庫)

故郷を辞す

「文学者と郷土」 室生犀星

「自然と民謡に」 泉鏡花

海神別荘

夜叉ヶ池

天守物語

「雨のゆうべ」 泉鏡花

醜婦を呵す

泉鏡花集成〈14〉由縁の女 (ちくま文庫)

泉鏡花作『外科室』

雁の寺(全) (文春文庫)

五番町夕霧楼 (新潮文庫)

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金閣炎上 (新潮文庫)

金閣寺の燃やし方 (講談社文庫)

私の履歴書 (1966年)

田中角栄 - 戦後日本の悲しき自画像 (中公新書)

「日本列島改造論」 田中角栄

オヤジとわたし 田中角栄との23年

淋しき越山会の女王―他六編 (岩波現代文庫―社会)

若狭海辺だより

神の火はいま : 原発先進地・福井の30年

故郷 (集英社文庫)

美しい星 (新潮文庫)

金沢 (1973年)

春昼

北越雪譜 (岩波文庫 黄 226-1)

美術は地域をひらく: 大地の芸術祭10の思想 Echigo-Tsumari Art Triennale Concept Book

 

 

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「供述によるとペレイラは… 」 1994

供述によるとペレイラは… (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

★★★★☆ 

 

あらすじ

 舞台はファシズムが台頭する1938年のポルトガル。小さな新聞社で文芸欄を担当する中年の男は、たまたま目にした論文の若い作者を雇おうと電話をしたことで、彼の人生は変わっていく。

 

感想

 タイトル通り、供述書のようなスタイルで書かれた小説だ。そのため、会話であっても平文の中で記述され、改行もほとんど無く、中盤ぐらいまで文体になかなか馴染めなかった。数ページの章で区切られているのが救いだった。

 

 主人公は妻を亡くし、孤独に暮らす新聞社の中年男だ。たったひとりの文芸部員で仕事も一人、死んだ妻の写真に話しかけ、甘いレモネードを好み、最近出てきたお腹を気にしている。凡庸な、どこにでもいるような惰性で生きているような男に見える。

 

 

 そんな主人公がふとしたきっかけから、若い男女と知り合うことになる。詳しくは語られないがレジスタンスに関わっている男女と思われる。彼らに危険なものを感じつつも、何故か関係を絶とうとせず、つい金銭面などで支援をしてしまう。

 

 おそらく主人公は何も深くは考えていない。だがファシズムが台頭する世の中で無意識に危機感は感じ取っていたのだろう。自身が担当する文芸欄で、そんな世相に逆行するようなフランスの作家たちを自然と取り上げていたのは その表れかもしれない。関わるとヤバそうな若いカップルに親身になってしまうのも同様だ。

 

 だが彼が自身の信念に目覚めていったかと言えば、そうではないだろう。体制派の編集長に叱責されて、あっさりとその指示に従おうとしたことからも明らかだ。健康のために禁止された甘いレモネードを、飲んだり飲まなかったりする程度の意志の強さでしかない。

 

 そんな彼でも状況が整えば、勇気ある行動を取ることが出来る。世の中に変化を与えるのは誰か一人の強い意志ではなく、皆のちょっとした勇気なのかもしれない。最初は散発でも、次第にそれはひとつの大きな流れになっていく。

 

 最初は読むのに苦戦していたが、後半以降はのめりこんで一気に読んでしまった。主人公の行動に勇気づけられ、彼のその後に幸あれと思うのだが、この小説のタイトルから考えるに、まぁそういうことなのだろうな、と寂しい気持ちになってしまう。だがきっとこれが大きな流れの中の一つとして、意味あるものであったことは間違いないだろう。

 

著者

アントニオ・タブッキ

 

 

 

登場する作品

Sogno (ma forse no). Bellavita (Biblioteca italiana) (Italian Edition)

ベルナルダ・アルバの家 (1956年) (てすぴす叢書〈第42〉)

ベラミ〈上〉 (岩波文庫)

Le Horla (French Edition)

「ザング=トゥム=トゥン」 フィリッポ・トンマーゾ・マリネッティ

「友の唄」

オノリーヌ: バルザック・コレクション (ちくま文庫)

月曜物語 (岩波文庫 赤 542-3)

プチ・ショーズ―ある少年の物語 (岩波文庫)

最後の授業 (ポプラポケット文庫)

田舎司祭の日記(新潮文庫)

 

 

この作品が登場する作品

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「ドルフィン・ソングを救え!」 2015

ドルフィン・ソングを救え! (角川文庫)

★★★☆☆

 

あらすじ

  睡眠薬を飲んで自殺を図った中年女が気付くと、1989年にタイムスリップしていた。青春時代に好きだった二人組のミュージシャンに起きた悲劇を止めるべく、女は動き出す。

 

感想

  過去にタイムスリップしたら、普通は自分自身の人生を修正したくなると思うのだが、この主人公は思い入れのあるミュージシャンの歴史を変えようと奔走する。それだけそのミュージシャンが好きだったとも言えるが、自分に関心を持てなくなってしまっているとも言えるかもしれない。だからこそ自殺を図ったわけで。

 

 主人公は、好きだったミュージシャンの運命を変えることで、自分の人生も変わると考えていたのだろう。それほど彼らの存在が主人公の人生の大きな位置を占めていたことになる。そう考えると、誰かに熱中することは悪いことではないが、崇拝し過ぎるのは良くないことなのかもしれない。崇拝しすぎて、自分がいなくなってしまう。

 

 

 この主人公の好きだったミュージシャンのモデルはどう考えてもフリッパーズ・ギター。彼らのことは小説の中では勿論フィクションになっているが、それ以外のこの時代の音楽やテレビ、流行は詳細に語られていて、もう忘れてしまっていたことも色々と思い出し、懐かしい気分になる。

www.youtube.com

 

 フリッパーズ・ギターは解散して、現在は各自がソロで音楽活動を続けている。しかし、小説の中のミュージシャンはそうなっていない。なので主人公のタイムスリップで歴史が変わり、本当のフリッパーズ・ギターのその後みたいになっていたら面白いかなと思いながら読んでいたが、甘かった。

 

 主人公が、天才のミュージシャンたちに近づけたのは、未来を知っているというアドバンテージがあったから。だからもし彼らと今後も付き合いが続いたとしても、タイムスリップ前の時点を過ぎてしまったら、結局また天才と凡人の立場に分かれてしまう。

 

 そう考えるとあの結末でよかったのだろう。凡人であったとしても、卑下することも遠慮することも必要なく、ただ自身のやらずにはいられないことやるだけだと悟ったのだから。

 

著者

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ドルフィン・ソングを救え! (角川文庫)

ドルフィン・ソングを救え! (角川文庫)

 

 

 

登場する作品

カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生

キッチン (角川文庫)

TUGUMI(つぐみ) (中公文庫)

哀しい予感 (幻冬舎文庫)

11/22/63 上 (文春文庫 キ 2-49)

母乳

ブラッド・シュガー・セックス・マジック

ISN'T ANYTHING

DIAMONDS (ダイアモンド)

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バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2 (字幕版)

黄金の七人 [DVD]

「黄金の七人」オリジナル・サウンドトラック

「無鉄砲大将」

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刺青一代 [DVD]

河内カルメン [DVD]

東京流れ者

すべてが狂ってる [DVD]

探偵事務所23 くたばれ悪党ども [DVD]

「ハイティーンやくざ」

Bacchus Is Back

(There's Always) Something on My Mind

宇宙遊泳

Ok Computer

Kid A?[国内盤 / 解説・日本語歌詞付] (XLCDJP782)

ノストラダムスの大予言 迫りくる1999年7の月人類滅亡の日 (ノン・ブック)

「儀式」 林真理子

稲村ジェーン [VHS]

浪漫飛行

東大一直線 【コミックセット】

Dance to the Music

Flash, Bam, Pow

白昼の幻想 [DVD]

バック・トゥ・ザ・フューチャー (字幕版)

だめんず・うぉ?か?(1) (SPA!コミックス)

おどるポンポコリン

パルプ・フィクション (字幕版)

カル・デ・サック

スメルズ・ライク・ティーン・スピリット

 

 

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「悪癖の科学 その隠れた効用をめぐる実験」 2016

悪癖の科学--その隠れた効用をめぐる実験

★★★☆☆

 

内容

 イグ・ノーベル賞受賞の心理学者による酒、セックス、悪態、恋、無謀な運転など、 ともすれば世間に白い目で見られがちな悪癖についての、科学的な立場からの見解の紹介。

 

感想

  世間には悪癖とされている事があるが、それらは本当に悪いことなのだろうか?本当は何らかの利点があるのではないだろうか?という観点から、過去の実験データをもとに考察されていく。ただ残念ながら期待していたほどびっくりするような内容はなく、想定の範囲内のことしか書かれていない。

 

 そんな中で興味深かったのは、腹上死は不倫の時に起こりやすいというデータ。不倫のカップルは金持ちの中年男と若い女という組み合わせが多く、相手に合わせて頑張ってしまうから、ということらしい。言われてみれば納得である。

 

 それと、ジェットコースターは喘息の症状を和らげる効果があるということ。喘息の症状は意外と心理面の影響が大きいようで、不安感が強い患者は肺機能に問題が起きていなくても、呼吸困難を感じることがあるそうだ。ジェットコースターに乗ることで、身体に良いストレスを加え、不安感を消すことで心理面の影響による症状が緩和するという仕組み。「病は気から」とはいうが、まさにその通り。もしかしたらその他の病気にも適用できるのかもしれない。

 

 驚くような内容はなかったと言ったが、良く考えてみれば当然で、きっと驚くような内容があったらニュースになっているはずではある。驚くような内容はない、ということを確かめることも、科学の役割といえるのかもしれない。世界の何処かで今この瞬間も、悪態やセックスなどについて、真面目な顔で考えている科学者達がいるかと想像すると、ちょっと楽しい気分になる。

 

著者 リチャード・スティーヴンズ

 

悪癖の科学--その隠れた効用をめぐる実験

悪癖の科学--その隠れた効用をめぐる実験

 

 

 

登場する作品

ブコウスキー・ノート

ベスト・パートナーになるために―男と女が知っておくべき「分かち愛」のルール 男は火星から、女は金星からやってきた (知的生きかた文庫)

Eva Fraser's Facial Workout: Look Fifteen Years Younger with this Easy Daily Routine (Penguin Health Care & Fitness) (English Edition)

The Globalization of Addiction: A Study in Poverty of the Spirit (English Edition)

レミーのおいしいレストラン (字幕版)

Lucky Jim

虚栄の市〈一〉 (岩波文庫)

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Blue Streak:: Swearing, Free Speech, and Sexual Harrassment

「ロイドの神出鬼没」

Thunder Road [DVD] by Robert Mitchum

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The Psychology of Driving (English Edition)

Daydream

悲しき街角

Everybody in Love

Love and Limerence: The Experience of Being in Love (English Edition)

Just an Ilusion

Love Is The Drug

The Far Side

Memoirs of Sir Isaac Newton's life (English Edition)

 

 

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「ビジネスに効く最強の「読書」 本当の教養が身につく108冊」 2014

ビジネスに効く最強の「読書」 本当の教養が身につく108冊

★★★☆☆

 

内容

 各テーマに沿って著者がいくつか本を挙げて話をし、それを編集者がまとめたもの。

 

感想

 最近、読む本のパターンが決まってきてしまって多少マンネリを感じていたので、視野を拡げるためにこの本を手に取ってみた。 

 

 そして、読み終わって思うのは結局、最終的に読書家は古典や原典に行き着くのだという事。挙げられる本は聞いたことがあるが、読んだことのない本が多い。有名なのでいつかは読みたいなと思いながらも、どこか敬遠してしまっていた本ばかり。

 

 

 おそらくは、ある分野の本を何冊も読み続けていたら、何度も挙がる本の名前なので、それなら読んでみるか、となるのだろう。で、そのうちどうせこの古典や原典は多くの本で言及されているだろうから読んでおくか、となって、古典や原典から読むようになる。自分はまだそのレベルまで行っていないということだ。

 

 そもそも古典や原典はそれだけの価値があるから、現在まで生き残っているわけで、読まない手はないのだが、昔の本は読みにくいしな、となかなか手が出ない。読み応えがあるという意味では良いのだが、上下巻だったり、それ以上の冊数があったりすると、ますます躊躇してしまう自分がいる。

 

 とはいえ、挙げられている本は古典や原典だけではなく、割と最近の本も挙げられていて、何冊かの小説などは読んでみようかと思っている。しかし、視野を広げたいと思って読み始めたのに、結局好きなジャンルにしか興味を示していない自分に呆れてしまう。まぁ何かのきっかけで今後、違う分野にも興味を持つようになるかもしれないので、その時までは好きなジャンルを深く掘りつつ少しずつ広げていけば良いのかもしれない。

 

 様々な本を挙げながら繰り広げられる話には、興味深いものがいくつもある。

 とはいえ、フランス人はやはり「理性」で考える人々の集まりで、今の政体を「第五共和制」と呼んでいます。フランス風に考えれば、日本では第一立憲制が明治憲法、第二立憲制が今の憲法ということになるはずですが、日本で日本の政体についてそう考える人はまずいません。

p121

 

 読んでいて確かに、と思ってしまった。どこかで日本はひとつづきで続いて来たと思ってしまっている人が多いような気がする。なので今更、第一立憲制を必死に弁護しようとする人がいるのかもしれない。今は第二立憲制なのに。こういう認識がちゃんと出来ていれば、もう少し冷静に物を考えられるはず。

 

 本当はもっと読みやすそうな本がたくさん挙がっていて欲しかったと思う部分もあるのだが、でもまぁやっぱり、長い間読み継がれてきた古典は読んでおくべきだよなと再認識させられて、納得の内容でもある。

 

著者

出口治明

 

ビジネスに効く最強の「読書」 本当の教養が身につく108冊

ビジネスに効く最強の「読書」 本当の教養が身につく108冊

 

 

 

登場する作品

アノスミア わたしが嗅覚を失ってからとり戻すまでの物語

ローマ政治家伝I カエサル

ローマ政治家伝II ポンペイウス

ローマ政治家伝I カエサル

ガリア戦記 (岩波文庫 青407-1)

ローマ人の物語〈8〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(上) (新潮文庫)

プルターク英雄伝(全12冊セット) (岩波文庫)

採用基準

文庫 新版 指輪物語 全10巻セット (評論社文庫)

君主論 (岩波文庫)

韓非子 (第1冊) (岩波文庫)

ブッデンブローク家の人びと〈上〉 (岩波文庫)

夏の砦 (文春文庫)

王書―古代ペルシャの神話・伝説 (岩波文庫)

チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷 (新潮文庫)

ドン・キホーテのごとく―セルバンテス自叙伝〈上〉

朗読者 (新潮文庫)

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白い城

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貞観政要 上 新釈漢文大系 (95)

宋名臣言行録 (中国の古典)

戦争論〈上〉 (岩波文庫)

自分のアタマで考えよう

宇宙は本当にひとつなのか―最新宇宙論入門 (ブルーバックス)

宇宙論と神 (集英社新書)

バウドリーノ(上) (岩波文庫)

西遊記(10冊セット) (岩波文庫)

三國志逍遙

預言者

「2050年への構想 グローバル長期予測と日本の3つの未来~経済一流国堅持の条件~」 日本経済研究センター

2052 今後40年のグローバル予測

2050年の世界 英『エコノミスト』誌は予測する

第五の権力---Googleには見えている未来

ユートピア (岩波文庫 赤202-1)

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迷宮に死者は住む―クレタの秘密と西欧の目覚め (1975年)

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アンダルシーア風土記

気候で読み解く日本の歴史―異常気象との攻防1400年

ヘロドトス 歴史 上中下巻セット (岩波文庫)

史記列伝 全5冊 (岩波文庫)

イタリア絵画史

日本のピアノ100年―ピアノづくりに賭けた人々

国宝神護寺三像とは何か (角川選書)

モンゴル帝国の興亡<上> (講談社現代新書)

東方見聞録1 (平凡社ライブラリー)

1940年体制(増補版) ―さらば戦時経済

昭和史-1945 (平凡社ライブラリー)

敗北を抱きしめて 上 増補版―第二次大戦後の日本人

〈民主〉と〈愛国〉―戦後日本のナショナリズムと公共性

田中角栄 - 戦後日本の悲しき自画像 (中公新書)

首相支配-日本政治の変貌 (中公新書)

変貌する民主主義 (ちくま新書)

職業としての政治 (岩波文庫)

人間の条件 (ちくま学芸文庫)

政治思想論集 (ちくま学芸文庫)

小説フランス革命 11 徳の政治

物語 フランス革命―バスチーユ陥落からナポレオン戴冠まで (中公新書)

フランス革命の省察

アメリカのデモクラシー (第1巻上) (岩波文庫)

トクヴィルが見たアメリカ: 現代デモクラシーの誕生

世界をゆるがした十日間 上下巻セット (岩波文庫)

ワイルド・スワン 上中下巻セット (講談社文庫)

ペルリ提督日本遠征記〈第1〉 (1953年) (岩波文庫)

ペリー

幕末「円ドル」戦争 大君の通貨 (文春文庫)

近代世界システム?―農業資本主義と「ヨーロッパ世界経済」の成立―

クアトロ・ラガッツィ 上 天正少年使節と世界帝国 (集英社文庫)

モンゴル帝国が生んだ世界図 (地図は語る)

黒いアテナ―古典文明のアフロ・アジア的ルーツ〈2〉考古学と文書にみる証拠〈下巻〉

ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る (光文社新書)

定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行 (社会科学の冒険 2-4)

民族という虚構

社会心理学講義:〈閉ざされた社会〉と〈開かれた社会〉 (筑摩選書)

戦後世界経済史―自由と平等の視点から (中公新書)

マッキンダーの地政学ーデモクラシーの理想と現実

マハン海上権力史論 (新装版)

海洋国家日本の構想 (中公クラシックス)

世界正義論 (筑摩選書)

ハドリアヌス帝の回想

生物学的文明論 (新潮新書)

老い 上 (新装版)

決定版 第二の性〈1〉事実と神話 (新潮文庫)

おひとりさまの老後 (文春文庫)

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ブッダのことば―スッタニパータ (岩波文庫)

生と死の接点

5 (ファイブ) 5年後、あなたはどこにいるのだろう?

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君たちはどう生きるか (岩波文庫)

幸福論 (岩波文庫)

ラッセル幸福論 (岩波文庫)

ニコマコス倫理学〈上〉 (岩波文庫)

ルバイヤート (岩波文庫 赤 783-1)

幸福な王子―ワイルド童話全集 (新潮文庫)

男性論 ECCE HOMO (文春新書 934)

何でも見てやろう (講談社文庫)

深夜特急 全6巻セット 文庫本

グレートジャーニー 人類5万キロの旅 1 嵐の大地パタゴニアからチチカカ湖へ (角川文庫)

大唐西域記 1 (東洋文庫)

イタリア紀行 上中下3巻セット (岩波文庫)

三大陸周遊記 抄 (中公文庫BIBLIO)

イブン・ジュバイルの旅行記 (講談社学術文庫)

インド日記―牛とコンピュータの国から

スペイン旅行記―カレル・チャペック旅行記コレクション (ちくま文庫)

中国奥地紀行〈1〉 (東洋文庫)

朝鮮紀行〜英国婦人の見た李朝末期 (講談社学術文庫)

 

 

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「HARD THINGS」 2015

HARD THINGS

★★★☆☆

 

内容

 かつてIT企業のCEOとしてITバブル崩壊の中を生き抜き、現在はベンチャーキャピタルの共同創業者として活躍する著者の、ベンチャー企業のCEOに対するアドバイス。 

 

感想

 序盤は著者のCEO時代の体験談が綴られる。そこには予想していた華々しい成功物語ではなく、 次々と襲い来る危機をなんとか切り抜けようとする、読んでいるだけで冷や汗が出てくるような物語が語られている。正直、こんな感じだとは思わなかった。IT系の企業に対しては、どこか軽薄なイメージを持ってしまいがちだが、当然そんなわけはないということか。

 

 著者自身も、華やかなことが何もなく、ただただこんなに苦しい場面ばかりなのは、自分がCEOとしてふさわしくないからだと悩んでいたというのは面白い。確かに成功しているIT企業のCEOはスーパースター的に扱われていることが多い。だけど、本当は著者同様の苦しい状況を乗り越えてきたはずだ。どんな話も成功した後に語られることなので、他の成功者同様に、自分をよりよく見せるために華やかな成功物語を語ってもおかしくないのに、素直に困難の連続だったと告白する著者には誠実さが感じられる。

 

 

 著者の体験談の後は、その体験から学んだことが紹介される。彼なりのCEO論が語られていく。いきなり「人を正しく解雇する方法」から始まって面食らうが、会社を生き残らせるためには起こり得る出来事で、そういう困難に立ち向かうのがCEOだ、という著者の姿勢が見て取れる。

 

 私の経歴の中で早くに学んだ教訓は、大企業でプロジェクト全体が遅れる原因は、必ずひとりの人間に帰着するということだった。 

p75

 

 著者が語る体験談は、なるほどと思わせてくれる内容のものばかり。そんな体験から得られた教訓を、そうなる理由やどうするべきかをわかり易く丁寧に説明している。著者は元インテルCEOで「ハイ・アウトプット・マネージメント」の著者、アンドリュー・S・グローブをリスペクトしているようだが、確かに教科書のように理路整然とした内容は、彼の影響を感じる。

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 人事や企業文化、経営のマネジメント方法、会社が成長するにつれ生じる問題など、経験の少ないCEOには大いに参考となる事柄が沢山語られる。だが正直、読んでいるとCEOなんてなりたくないなと思うようになってしまった。CEOは、日々いくつもの決断をし、時々は大きな決断もしなければならないが、その下した決断は、正しかったかどうかさえ分からない場合のほうが多い。過去の決断が正解だったかもわからないのに、それでも次々と目の前の事柄に対して決断を下していかなければいけないなんて、頭がおかしくなりそうだ。

 

 CEOとして成功するには、著者が言うように「苦闘を愛せ」るかどうかにかかっているんだろうなと思った。

 

著者

ベン・ホロウィッツ

 

 

 

登場する作品

Hard Times

ターミネーター2 [DVD]

ビル・ゲイツ未来を語る

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インテル経営の秘密―世界最強企業を創ったマネジメント哲学

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「ショート・アイズ」(映画)

Yertle the Turtle and Other Stories

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ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則

インテル戦略転換

1分間マネジャー〈実践法〉―人を活かし成果を上げる現場学

オズの魔法使い (新潮文庫)

フリーキー・フライデー

フォーチュン・クッキー [DVD]

チャイルド・オブ・ゴッド(字幕版)

 

 

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「高い城の男」 1962

高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)

★★★☆☆

 

あらすじ

 第2次世界大戦が枢軸国の勝利に終わった世界。

 

感想

 戦勝国の人間が、こんな風にもし戦争に負けていたらと想像するのは、余裕のある人間の空想だなと思えるが、もし戦争に負けた国の人間がこれをやったら痛々しいというか、ヤバさをきっと感じてしまうのだろうなと、読みながら思った。この小説の中では、負けたことになっている連合国の中で、勝った設定の小説が流行っている構造になっているのは興味深い。

 

 枢軸国が勝っていたら、著者はこんな風な世界になっていたと思っているのか、と想像しながら読むと面白かった。ドイツや朝鮮半島が二つの国に分かれたように、確かにアメリカが分割されていたかもしれない。日本は技術力でドイツにかなりの遅れを取っていただろうとか、地中海が埋め立てられていただろうとか、なかなか想像力が掻き立てられる。ただ易経が重要な役割を果たしている、というのは無い。

 

 

 日本人やアメリカ人、そしてヨーロッパの人物たちが登場し、前半は彼らがどうなっていくのだろうとワクワクさせられた。しかし、後半に向かうにしたがって、次第に分かりづらいというか、哲学的になってしまって、期待通りではなかった。

 

 無理やり解釈するなら、たとえ戦争に負けたとしても、打ちひしがれて、ただ卑屈になっていてはいけない、ということか。確かにもし枢軸国が勝っていたとしても、75年後のアメリカが日本に対する態度は、今の日本がアメリカに取る態度とはきっと違うだろうな、とは思う。

 

著者

フィリップ・K・ディック

 

高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)

高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)

  • 作者: フィリップ・K・ディック,土井宏明(ポジトロン),浅倉久志
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1984/07/31
  • メディア: 文庫
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高い城の男 - Wikipedia

 

 

登場する作品

易経〈上〉 (岩波文庫)

オペレッタ『軍艦ピナフォア』全曲、オペレッタ『陪審裁判』全曲 グリーン&ヴィクトリア管弦楽団

ギルバート&サリヴァン:ゴンドリエ[DVD]

Miss Lonelyhearts

原典訳 チベットの死者の書 (ちくま学芸文庫)

 

 

関連する作品

ドラマ化作品 

新世界
 

 

 

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「自然が最高の脳をつくる 最新科学でわかった創造性と幸福感の高め方」 2017

NATURE FIX 自然が最高の脳をつくる―最新科学でわかった創造性と幸福感の高め方 

★★★☆☆

 

内容

 緑溢れる自然は人間にとって重要かもしれないと考えた著者が、世界各地で行われている人間と自然に関する研究や取り組みを現地で視察し、科学的な成果を交えながら紹介する。

 

感想

 最初に日本の「日光浴」が紹介されているように、日本人にとっては自然は人間に重要なもの、というのは普通にすんなりと受け入れられるような気がするのだが、欧米ではそうではないのだろうか。どこの国にも自然賛歌のような歌や文章があるような気がするのだが。

 

 著者が話を聞いている科学者たちの中には、自然の効能を認めていない人がいて、そちらのほうが意外に感じた。決定的な科学的な研究成果がないから「科学的」には認めていないだけならまだ理解できるのだが、もし感覚的にもわからないというのならちょっと理解できない。

 

 

 ただ読んでいてよく分かるのは、自然の効能を証明するのは実は結構難しい、ということだ。自然の中で数日過ごして気分がリフレッシュできたから、やっぱり自然は心身にとって良いものだと感じるかもしれないが、それはもしかしたら、単純に嫌な上司や同僚と顔を合わせて仕事をしなくて良いからかもしれないし、野山を歩き回って運動したせいかもしれない。となると分かるのは「ストレスフルな仕事は体に悪い」だったり、「運動は体に良い」でしかなくて「自然が体に良い」ではないかもしれない。

 

 それに単純に「自然」と言っても、空気は澄み、遠くに雄大な山々が見え、近くには小川のせせらぎが聞こえるような爽やかな自然から、植物が腐ったような匂いが漂い、ヤブ蚊が飛び交う澱んだ自然まで色々ある。そんな中では簡単に自然は良いとは言いづらいかもしれない。単純に実験室での外では、再現可能な実験が難しいという問題もある。

 

「ほかの国では、仕事に適した人材を雇い、その人が燃え尽きてしまったら、新たな人材を雇えばいいのかもしれない。でもここでは人材を手放すわけにはいかない。だからこそ、社員には幸福でいてもらわなければならないの」

p189

 

 日本はこの分野の研究ではトップにいるらしいが、エコとしてではなく健康のための緑化という政策を採用された話は聞いたことない。わざわざ言うまでもなくやっているからなのか、そういう先を見越した戦略を立てていないからなのか。人口が少なく労働人口に限りのあるフィンランド人の言葉が何故か眩しく感じてしまう。

 

 戦争でPTSDを負った元女性兵士たちを自然の中の過酷な環境で過ごさせる取り組みなど、世界各地で行われている活動の中には興味深いものもあった。しかし、「自然は人間にとって重要かもしれない」という最初の問いが、「自然は人間にとって重要なようだ」という結論を導き出しただけなので、正直驚きはなく、そうだろうなという事柄の連続で、全く内容としては刺激的ではなかった。 

 

著者

フローレンス・ウィリアムズ

 

 

 

登場する作品

あなたの子どもには自然が足りない

オーシャンズ11 (字幕版)

The Principles of Psychology

The Organized Mind: Thinking Straight in the Age of Information Overload

The Birth of Korean Cool: How One Nation Is Conquering the World Through Pop Culture

「感覚」の博物誌

History of Friedrich II. of Prussia, Called Frederick the Great Volume 9

Happy City: Transforming Our Lives Through Urban Design

人間の由来(上) (講談社学術文庫)

ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア オリジナル・サウンドトラック

A Handbook Of Ophthalmic Science And Practice

眺めのいい部屋 (ちくま文庫)

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The Sense of Sight (Vintage International) (English Edition)

新装版 ムーミン谷の十一月 (講談社文庫)

フィンランド叙事詩 カレワラ〈上〉 (岩波文庫)

Unknown Soldiers (Penguin Modern Classics)

オはオオタカのオ

Hallaig and Other Poems: Selected Poems of Sorley Maclean

アメリカ大都市の死と生

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自然について (エマソン名著選)

Marcher, une philosophie

偶像の黄昏 (河出文庫)

告白 上 (岩波文庫 青 622-8)

歩く (一般書)

The Recluse (English Edition)

Recollections of a Tour Made in Scotland 1803 (Classic Reprint)

*「高慢と偏見」

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ウォークス 歩くことの精神史

カルヴィン&ホッブス

砂の楽園 (シリーズ・ナチュラリストの本棚)

崇高と美の観念の起原 (みすずライブラリー)

自然について (エマソン名著選)

プー横丁にたった家 (岩波少年文庫(009))

エミール〈上〉 (岩波文庫)

Inventing Kindergarten

世界教育戦争

SF/ボディ・スナッチャー [DVD]

 

 

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